- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167585013
感想・レビュー・書評
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ほんと申し訳ないですけれども、中島らもさんの小説は竜頭蛇尾のことが時々ありますが…この本は最後まで美しくてまとまっていると思います。雰囲気に浸りたくて、キャラクターに会いたくて、文章を、言葉を味わいたくて、何年か経つと読みたくなってしまう。
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パワーワード
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中島らも好きだ……になる
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写植屋がかっこよくてかっこよくて泣きました
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中島らもの【永遠も半ばを過ぎて】を読んだ。
率直にとても楽しい作品だった。
中島らもの経歴を軽く紹介したいと思う。大阪芸術大学放送学科を卒業後、印刷会社、広告代理店を経て
独立し小説家、コピーライター、エッセイストの肩書きを持つ。劇団「リリパット・アーミー」を主宰。
1992年【今夜、すべてのバーで】で吉川英治文学新人賞を受賞している。
この【永遠も半ばを過ぎて】は、写植オペレーターの波多野善二と三流詐欺師の相川真、そして大手出版
社の編集者である宇井三咲の三人がそれぞれの主観から語り繋がっていくコメディともミステリーともい
える作品だ。
僕がこの作品に引き込まれた理由の一つとして挙げられるのが波多野が生業とする「写植オペレーター」
の話があったからだと思う。
写植とは印刷業界の言葉である。今でこそ、印刷業界は主にマッキントッシュを主として版下(印刷物の
原稿)を組むデジタル化が進んでいるが、一昔前は写植と言い、何百種類とある鉄の文字盤を文章通りに
組み合わせ活版印刷とよばれる方法で印刷していた。今は写植のデジタル化に伴い、印刷機の性能も進歩
して、活版印刷(木でも金属でもその素材の突出した部分にインキを乗せ、紙に転写する印刷方法)では
なくオフセット印刷(水と油の原理を利用したアルミ版を使う印刷)が主流である。波多野が使う「電算
写植機」とはデジタル化の走りでいわゆるワープロの事だと思ってもらえるといいと思う。
この用にこの小説は印刷業界の話であって、印刷会社に勤めていた僕にとっては勉強になり、とても
興味が沸く題材なのだ。
メインとなる騒動は波多野の写植機から始まる。いつものようにスーパーのチラシの文字を打ち込んでい
た波多野は、眠れない為に飲んだ睡眠薬の量を間違え、写植を打ちながら意識が朦朧としてしまう。ふと
気がつくとプリントアウトされた原稿には依頼された仕事ではなく、見覚えもない小説の一説。その原稿
を巡り、詐欺師の相川(波多野の同級生)と編集者の宇井が絡み始め、事態はとんでもない方向へ。
3人がそれぞれの事情を抱え、それが交差し交わっていく様は読んでいてワクワクした。
はたしてこの謎の小説はどうなるのか?それはみなさんが読んでのお楽しみという事で。
中島らも自身が印刷会社や広告代理店に勤務した経験があることでこの小説はリアリティが溢れている。
納期を間に合わすために徹夜で作業、無茶な仕事を取ってきて工場の職人さんからクレームの嵐、思わず
「ある、ある」と苦笑いしてしまった。
内容も読みやすい文章も魅力的ですいすいと読んでしまった。僕はこの小説のようなエンディングが好き
だ。思わずニヤケてしまうような最後。
中島らも。もう彼の新作を読む事は永遠にできないが、彼の残した作品をこれからも愛読してみようと思
える作品だった。 -
クスリボリボリしたりベロベロになったりは
お馴染みの、らもさん。
ねちっこくないロマンティックな暖かみも
笑いも忘れない。 -
まずこの本の雰囲気がなんか好き。昔読んだ村上龍をちょっと思い出した。結局何が言いたいのがよく分からない本なんだけど、なぜだかスッキリする本。
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会話のやりとりにキレがある。タイトルも素敵。面白さの中に哀愁が漂い、中島らもにしか描けない世界観が溢れていた。
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独特な雰囲気のコメディ小説