一刀斎夢録 下 (文春文庫 あ 39-13)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167646127

感想・レビュー・書評

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  • 鳥羽伏見の戦い、徳川慶喜の大坂城脱出、吉村寛一郎の戦死、沖田総司、土方歳三、近藤勇ら仲間たちとの永訣・・・維新後、警視庁に奉職した斎藤一は「抜刀隊」として西南戦争に赴く。その地で、土方の遺影を託され、蝦夷箱館を脱出した少年・市村鉄之助との運命の出会い。新選組隊士として、唯一の教え子であった鉄之助は、西郷軍薩摩の一兵卒として斎藤一と相見える壮絶なる体験談は、新選組三部作を飾る慟哭の完結編。

  • まさに夢録。アラビアの千夜一夜物語の如き時代を生き延びた男の紡ぐ御伽噺。
    斎藤一という確定存在が語る回顧録であるから話の内容は精査のしようがなく、ゆえに誇張表現含めて"語る"でなく"騙る"である可能性も払拭はできない、だからこそ全てを聴き終えるまでやめるわけにもいかず、何より聴きたくて仕方ないと中尉自身が感じているという構図。
    ここまで魅力を秘めた老剣客もそうそういないのでは。

  • 凄く面白いというより、興味津々で読破。
    「勝てば官軍負ければ賊軍」とはよく言ったも。明治維新が歴史上良かったかと言うと疑問も確かにある。私達も同じで勝組とか負組とかお金を儲ければ勝ちという印象が強いけど、本当はもっと違うと思考で考えなければいけない。
    しかしながら。この本で昔はあったが、今の私に無い思考が明確にわかったので反省したので頑張ります。
    あっ、好き嫌いは別れる本です。興味があれば読んで、私は良かったかな。
    もう一回読めばもっともっと考えてしまうかと。しかし、最後は辛くてウルっときた。

  • 記憶しておきたい言葉
    力を蓄え、技を身につけるために最も肝要なるものとは何じゃ。そう訊ぬれば百人が百人、努力精進にほかならぬと答えるであろう。しかし、わしはそうとは思わぬ。
    努力精進よりも肝要なるものがある。それは、渇えじゃ。いつかかくありたしと願いながらも、努力精進すらままならぬ貧乏人はひたすら飢え渇するほかはあるまい。その拠るところも捉むものもない飢渇こそが、やがて実力となり技となる。
    持たざる者ほど、持っておるのだ。
    水も肥も与えられずに、それでも咲かんと欲する花は、雨を力とし、風すらも肥とする。そうしてついに咲いた花は美しい。

    人殺しの剣すらも、舞うがごとく見ゆるほどにの。
    わしは鉄之助を不憫に思うて、剣を教えたわけではない。これは筋がよいと気付いたとたん、手水や肥をくれてやるのではなく、雨となり風となろうと思うた。
    そして、鉄之助は咲いたのじゃ。

  • 久米部が好き。

  • 剣の奥義は一に先手、二に手数、三に逃げ足の早さ。
    道場では必ずしも先手が有利ではあるまい。
    相手が打ち込んでくるところを、払って胴抜き。
    しかしこれらの技が有効であるのは竹刀が軽く、切れも刺さりもせんからだ。
    鋼の真剣なら面を打ち込まれたらその重みはまず払えぬ。ゆえに先に刀を抜いて斬りつけた方が勝ちじゃ。

    土方というは、善きにつけ悪しきにつけじっくりと観察し、おのれの処世に活かす賢さがあった。

    努力精進よりも肝要なものがある。それは渇えじゃ。持たざる者ほど、もっておるのだ。
    水も肥えも与えられずに、それでも咲かんと欲する花は、雨を力とし、風すらも肥とする。そしてついに咲いた花は美しい。

  • 傑作である。
    三部作の中でも1番引き込まれた。

    新撰組について全く知識のないままに読み進めたが、
    本当に凄まじい。
    時代がそうさせたのか、浅田次郎の筆力ゆえか、
    新撰組の隊士それぞれの魅力がすごい。
    もう少し昔の地名と地理についての知識があれば、
    もっと面白く読めたのではないかと思う。


    ほんの数世代前のこの国の出来事。
    遠い昔のように学校で教わり、数ページの教科書で終わってしまう、幕末から近代。
    そこにとんでもない苦労があったことを記録する素晴らしい本であった。

  • 難解な漢字や表現が多いのに、それが気にならないくらい面白い。壬生義士伝から読み直そう。

  • 鬼の斎藤一の長い話だが、結局最後の市村鉄之介とのくだりで読み手を納得させる。何故斎藤一は人を斬るのか?何故斎藤一は生き長らえたのか?が一番伝えたかったのは、市村鉄之介とのことだったんだと思った。読んでいる間、斎藤一の狂気に怯えていたが、読み終えてスッキリ感がある。がんばって最後まで読んでよかったと思う。

  • 鬼の斎藤一。

    新選組時代からの話は結局最後の話へと繋がっていくと思うと、この話は斎藤一と市村鉄之助の話だったんだなぁ、と。
    読み始める時はこんな切なく悲しい話になるとは思わなかった。と同時に、新選組については今まで京都の絶頂期ばかり読みたがっていたが、その後のそれぞれの隊士の話にこそ生き様、ドラマがあるのだろうと思った。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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