俳優のノート: 凄烈な役作りの記録 (文春文庫 や 30-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656799

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  •  山崎努氏が、国立劇場のこけら落としで「リア王」のリヤ役を演じた時の、日記的なノートである。稽古に入る前、稽古中、本番中のさまざまな出来事や思索が書き込まれている。芝居作りの内幕ものとしても読めるけど、そんなに軽いものではない。僕自身軽い気持ちで読み始めたけれど、途中で赤ペンと付箋を持ってきて、印象に残るところやじっくり考えたいところにマークをしながら読んでいった。1冊の文庫本が真っ赤になってしまった。読んでいるうちにため息が出てきて、終いには涙が出てきた。驚くべき本であった。

     僕はたまたま、演劇というものに関わってきている。学校の先生で、顧問であるって形だから、本当の意味で真っ向から取り組んでいるとは言い難い。そんなふうに思っていた。じゃあ、演劇に真っ向から取り組むって言うのはどういうことなんだろうか。漠然と、一生懸命やることなんて思う。この本を読んで、たとえば「演技」に真っ向から取り組むというのがどういうことなのか、初めてわかったような気がする。今までずっと演劇に関わってきて、自分でも舞台に出たりもして、ある程度わかっていたつもりのことが、すべて表面をなぞっただけのものだったって言うことがわかる。俳優というのは、これほどまでに深い思索に支えられた営みなのかと思う。

     この本を読むのはそう簡単ではない。最小限、シェイクスピアの「リア王」は読んでいなければならないと思う。出来れば、単に読んだと言うだけではなく、「慣れ親しむ」感じになっていた方がいい。筆者のさまざまな発見が、どれほどすばらしいものであるか、そうでなければよくわからないかもしれない。一時期「リア王」フリークだった自分は、「生卵」の演技のくだり、恋するリーガンのくだりで、叫びだした異様な衝動に駈られたのである。筆者だけではなく、本に出てくるすべての役者さんが、生き生きと真剣である。

     読者を選ぶ本かもしれないけど、がんばって読む価値がある。一冊の本を読んで、こんなに豊かな経験をしたのは初めてであった。演劇というものに関わってきて本当によかったと心から思った。

  • 著者の舞台を強く拝見したいと思う。
    エッセイとしても楽しめる。

  • ものすごく勉強になる本でした。

  • 例えば、
    一回の授業技量検定を受けるまでの道程で
    この文量の日記を書くか。

    否。


    それだけですごいと思った。

    長い時間をかけて、作り上げていく課程に驚きました。

    体重コントロールは簡単だと断言するところに俳優の専門性を感じました。


    世界が少しだけ、また広がりました。

  • 俳優・山崎努氏の日常が日記調でつづられている。一人の俳優の仕事ぶりが、丹念に書かれている。

  • ぽんさんより。

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