追憶のかけら (文春文庫 ぬ 1-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 902
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  • Amazon.co.jp ・本 (659ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167682026

作品紹介・あらすじ

事故で愛妻を喪い、失意の只中にあるうだつの上がらない大学講師の松嶋は、物故作家の未発表手記を入手する。絶望を乗り越え、名を上げるために、物故作家の自殺の真相を究明しようと調査を開始するが、彼の行く手には得体の知れない悪意が横たわっていた。二転三転する物語の結末は?著者渾身の傑作巨篇。

感想・レビュー・書評

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  • 二転三転四転。
    作者のめぐらす罠にまんまとひっかかった。なんとも気持ち良い。こりゃすごい小説です。

    2つの時代が絶妙に交錯していき目が離せなかった。こういう読書時間が1番幸せ。

  • 喧嘩して実家に帰宅中の妻を事故で失った大学の国文学の講師が、失意の中で手に入れたちょっとマイナーな作家の直筆未発表の手記。全文がストーリーの中に引用されて、その手記を軸に、ストーリーが展開される。いろんなどんでん返しが出てくるのだけど、心情的にすんなりとした納得感がなく、今いち入り込めなかった。

  • 一体誰が仕掛けているのか?と思いながら読み進めると…
    過去のストーリーと交錯しながら話が展開。
    そこか!と思っていたらまた違った答えが見えてきたりして本当に二転三転する。

  • 随分ぶあつい文庫だなと思ったけれども読み始めてしまえばいっきに読めてしまった。
    主人公がどうにか幸せになれそうで良かったけど、人の悪意に気持ち悪さを感じられた。
    お金持ちではなくても逆恨みする人っているけどね。

  • 主人公・松嶋は3ヶ月前に妻を交通事故で失くした大学講師。
    夫婦喧嘩の果て、子どもを連れて実家に帰った時の事故のため、義理の両親との仲も上手くいかなくなり、子どもも取り上げられ、失意のまま日々を過ごしている。
    そんな時、短編を数編発表しただけで自殺した作家の手記が手に入る。
    これをもとに論文を書き、世に認められたら娘と暮らせるようになるかもしれない。
    これが、まず一つ目のストーリー。

    手記には戦後、医学校を中退し、叔父の病院を手伝いながら小説を書く語り手・佐脇依彦の身辺が綴られる。
    偶然知り合った復員兵・井口の、死を前にした頼みである人探しをしたことによって、周囲の人々に次々襲いかかる悪意ある出来事。
    誰が、なぜ、佐脇に悪意を向けるのか。
    手記は最後までそれがわからないまま、書き手の自殺で終わっている。

    松嶋は佐脇に何が起きたのかを調べ始めるが、それとともに松嶋自身にも悪意が降りかかってくる。
    誰が、なぜ、松嶋に悪意を向けるのか。
    そしてそれは、手記とどうかかわっているのか。

    複雑に絡まる謎。
    多数の登場人物。
    しかし文章はすこぶる読みやすくわかりやすい。

    手記部分が終わるまでで300ページ超。
    全体で650ページの長編でしたが、面白くてするする読めました。
    ただ、生き証人である長谷川医師に、論文の発表前にどうして一度手記を魅せなかったのか?そこがちょっと浅いよね。
    だって長谷川医師は「見せて欲しい」と言っていたのだから。
    そして見せてさえいれば、これほど大きな事件にはならなかったはずなのだから。

    そう、悪意の主の企みは実に雑なのよ。
    だけど主人公のガードが甘い。
    そんなので学術的に評価される論文ができるのか?ってレベルだと思います。
    でもまあ、面白かった。

  • 半分は手記。そこからの、主人公が騙されすぎてるし、罠が多すぎ。
    続きが気になってページを読む手が止まらなかった。
    最後のまとまりがちょっと弱くて惜しい感じ。

  • 佐脇の手記だけで一冊の小説ができるのではないかというほどのボリュームがあり、2冊分読んだような満足感を得た。
    佐脇の手記と松嶋の周りを合わせると登場人物が多いうえに、そこに嘘と真実が織り交ざっているため、最終的な正しい人物相関図はわかりづらく感じた。また、佐脇に対する悪意の正体が、金持ちによる嫌がらせ、道楽程度のものだったので、少し拍子抜けしてしまった。
    ただ、二転三転する展開は松嶋に感情移入できたためくどくはなく、得体のしれないなにかに振り回されている感覚を味わえた。
    楽しい思い出も悲しい記憶も時が経てば印象が薄れて詳細に思い出せなくなってしまうが、そのとき得た感情は忘れてはいけないと思った。

  • 引き込まれて読み耽った。
    戦後すぐの頃に書かれた手記も 読みにくさはなく、
    二転三転した後の真相に至っては 「えー。」なのだけど
    最後の 咲都子の手紙は涙が出て、良い結末を迎えた事で
    ホッとした。

  • とある作家が残した未発表手記からの引用文が
    物語の大半を占めるという、独特な作品。
    しかし、この手記が面白い。とにかく読ませる。
    東野さん同様、貫井さんは人間のドロドロした部分を描くのが本当に巧い。
    犯人の動機にはやや疑問符がつくものの、リーダビリティは相変わらず
    凄いものがある。

  • 僕が読んだのは文庫本ですが分厚かったです。2冊本を読んだかのようなお徳感がありました。たくさんの伏線が小出しに効いてきて、「そうだったのか!」「?いや、違う」「えー、そんな!」「!?いやいや違うのか」と何度か悶絶してしまう(笑)
    今年(2010年)イチ、面白い本でした☆

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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