新装版 真夜中の相棒 (文春文庫) (文春文庫 ホ 1-7)

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  • / ISBN・EAN: 9784167900878

作品紹介・あらすじ

文春文庫40周年記念・海外ミステリ名作復刊第一弾美青年の殺し屋ジョニーと彼を守る相棒マック。裏社会でひっそり生きる二人を復讐に燃える刑事が追う。美しく悲しいノワールの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 解説を読むまでこの話が「ボーイズラブ」の話だと全く気付かなかった。純粋な愛の物語として目を潤ませていたし、それに対して違和感は無い。

    昔の職場ではLGBTの方々との接触は少なくなく、そしてそれは私の日常だった。性別がどうであれ人に愛され求められるのは幸せな事だ。
    私は、身近で見てきた「LGBT」の彼 彼女等や、
    本書の三人の様に「孤独」を知らないのだろう。

    美しい外見を持つも、孤独を極端に恐れる殺し屋ジョニー。決して彼を利用したくてそばに置いている訳では無いのに結果的にそうなる事に苦悩するマック。ジョニーによって相棒を失い修羅となり孤独に堕ちたサイモン。彼等は「孤独」に抗う為、常に求め 無くし 探し 求めるを繰り返して這いつくばりながら生きていた。
    決してスムーズでは無い彼らの歩みと、決して器用ではない彼らの繋がりが過去の友人達と重なった。

    彼らの、孤独から逃れる為に最後まで「人」に依存した行動を否定する理由が見付からない。依存って悪じゃないんだなぁ。愛の美しさを見た。
    ...ちょっと恥ずかしくなってきた。

    • 本ぶらさん
      NORAさんこんばんは。

      彼らの関係は、私もいわゆるボーイズラブというのとは違う気がしました。
      人というのは、ペットでもなんでも何か...
      NORAさんこんばんは。

      彼らの関係は、私もいわゆるボーイズラブというのとは違う気がしました。
      人というのは、ペットでもなんでも何かを愛さないといられない、あるいは、何かに愛を求めずにはいられない。
      大人になればなるほど、年をとればとるほど、日々重なる疲れからそれを希求してしまう。
      それが、彼らの場合はお互いだった、という気がするんですよねー。
      とか言って、昔読んだ時は私もそこまでは思わなかったりもするんですけど(^^ゞ
      2021/03/02
    • NORAxxさん
      本ぶらさん、こんにちは^ ^
      コメントありがとうございます...♪*゚

      人間の根本なんですね。ー生活の上で必要な「衣食住」ーだとどこぞの三...
      本ぶらさん、こんにちは^ ^
      コメントありがとうございます...♪*゚

      人間の根本なんですね。ー生活の上で必要な「衣食住」ーだとどこぞの三流自己啓発本みたいですが、そこに「愛」を足すと途端に深みが増したような気分になる私は重度のロマンチストの様です...
      しかし上記おふざけ無しで(←)この作品は読む時期で捉え方が変わるだろう不思議な本だと感じました。
      私は初読みでしたがその違いを身をもって体験出来た本ぶらさんが少し羨ましいです( ˘ᵕ‪˘ )⋆。˚✩

      この歳になって年月もくそもありませんが(コトバワルクテゴメンナサイ)また数年後に機会があれば読み直してみたいと思えました^ ^

      素敵なレビューとこちらへのコメント、重ねてありがとうございました...♪*゚
      2021/03/03
    • 本ぶらさん
      こんばんは。
      ブログで知り合った方も、やっぱり「若い時に読んだ時とは印象が変わった。ある程度年を取ったからこそわかる部分がある」みたいなこ...
      こんばんは。
      ブログで知り合った方も、やっぱり「若い時に読んだ時とは印象が変わった。ある程度年を取ったからこそわかる部分がある」みたいなことを言ってましたね。
      2021/03/09
  • ゲイ・ミステリというジャンルがあるらしい。
    三十年前に初めてこの本が出版された時には同性愛を扱った作品はまれで、海外ミステリ史的にはその先鞭をつけた作品だそうだ。
    たしかに男性同士のそれを匂わせる描写はある。
    しかしこの『真夜中の相棒』は曇りなき眼で読んでほしい。
    これは孤独な魂を抱える者たちの話。
    できそこないの父と子の悲しい物語だ。

    淡いブルーのBMWからすべり降りる金髪の若く美しい殺し屋、ジョニー。
    そして運転席で見守る相棒。
    裏社会の顔役パパガロスともう一人を消音機つきの銃で始末した後、きびきびと車へとって返す。

    「僕が何を欲しがっているかわかりますか?」
    ジョニーの殺しの報酬は、ストロベリーアイスクリームのダブルを一つ。それだけで充分なのだ。
    この物語にハッピーエンドはありえない。

    本を開いた最初の作者の献辞には、

     本書を世の”母親”と
     そのすべての信者にささげる。

    とある。
    しかしこの本には母や母性といったものはほとんど出てこない。あるのはあらゆる父と子の関係や男同士の友情、信頼といったものばかりだ。
    いやあるいは、このカッコつきの”母親”とは、父や父性のなかに母性までも見ざるを得ない者たちへ向けられた言葉なのかもしれない。

    犯罪小説、警察小説として素晴らしい出来。
    そして読了後、それを越えた言い知れぬ切ない余韻が残る。
    書店で見かけたら手に取ってほしい。
    帯に書かれた桜庭一樹氏の推薦文に心掴まれるはずだ。

    ★★★★★でも良かった。
    星一つ分の欠落は、自分自身の欠落や孤独を認めたくなかった気持ちの表れかもしれない。

    著者テリー・ホワイトが女性であると知り驚く。
    加えて本作の原題が「Triangle」と聞き、物語を読み終えた今では、ただ嗚呼と溜息を漏らすばかりだ。

  • 堪らなく切なかった。物語は殺し屋2人のエピソードから始まる。ベトナム戦争を通じて近寄った2人。庇護者と被庇護者。片やバディを組んでいた相棒を殺された警官が異常な執念追う犯人。それぞれが自分に都合良く相手を見てるのが歯痒い。BLと言う人もいるけど私には2人の孤独感が哀しかった。

  • 読みやすい。文体もストーリー展開も複雑でないので。前半は犯罪者の視点、後半はそれを追う刑事の2つの視点で描かれている。そしてその双方に詰め込まれているのが、固い絆で結ばれた男同士の何やかんや。
    ミステリージャンルみたいだけど、そういう愛憎劇的な部分が主です。

    ボーイズラブみたいに言われてもいるけど、どうかな。

    ジョニーはマックに「愛してる」って言ってるんだけど、彼が育った環境や諸々の後の行動を見ていたら、彼が本当に愛っていうものを分かって言ったとは思えなかった。
    固い絆で、、と書いたけど、これがくせもの。
    登場人物それぞれのパートナーや仇に対する思いは凄く強いんだけど、みんながみんな自分の見たいものだけを見てる感があり、お互いにすれ違いまくってる。そしてすれ違ったまま最後まで報われないかなしさ。そこが魅力。

  • 『真夜中の相棒』は読んだことがある。
    でも、ずいぶん前のことで内容は忘れてしまった。
    テリー・ホワイトはすごく好きで、残り5冊も読んでいるが、やっぱり内容はおぼえていない。
    何年か前、この『真夜中の相棒』が再発された時、同性愛云々で語られていることに「そんな話だったっけ?」とやけに違和感をおぼえて、あらためて読んでみたいと思っていた。

    でー、読んだ感想はというと、解説で池上冬樹という人が、「30年前に読んだ時よりも印象が深い。こんなにいい小説だったのかとさえ思った」と書いているけど、まさにソレ!w
    読み終わった後、というか、第三部の半ばからの醸し出される悲劇の予感からラスト、さらにエピローグの、
    そのどうしようもなさの哀感が堪らないんだろうなぁー。
    たぶん。

    さらに、後半に行くにつれ、舞台となる場所の太陽の光が増していくところが、その哀感を甘美なものに昇華させるというニクい演出になっているように思った。
    ある意味、この小説の良さは、(第一部、第二部と比べて)短い第三部が全てといっていいんだと思う。
    ただ、その良さは第一部と第二部があるからこそなのだろう。

    以前、この本を読んだ時、ピンとこなかったのは、テリー・ホワイトの一連の小説を読んでから1年後くらいでピンとこなかったからだと思っていた。
    でも、今さら読んでみて、そういうことではない気がした。
    思うに、最初にこれを読んだ時って、たぶん、“寂しい”ということが、まだよくわかっていなかったんだろうなーと。
    男だとわかるかもしれないが、20代くらいの時って、学生時代からの余韻で常に友だちが周りにいるし。また、体力が有り余っていることもあって、“寂しい”という感覚を忘れちゃっているようなところがあるのだ。
    でも、その内、周りにいた友人たちがその友人たちとの関係より優先させる関係を築いていくのと、体力も衰えていくのと相まって、“寂しい”ということを実感するタイミング(リポジショニング?)というものがあるように思うのだ。
    つまり、そのタイミングの前と後では、この小説の印象は微妙に違ってくるのではないのか?

    他人に思いやられることはうれしいことだけど、でも、人というのは思いやられただけでは幸せになれない。
    自分も他人を思いやることで、初めて人生に満足するんだと思うのだ。
    でも、人というのは、自分の身の丈に合った他人しか思いやることが出来ない。
    その身の丈というのがなんとなく見えてきてしまった後だからこそ、マックのどうしようもない寂しさを感じて、それが第三部の半ば以降の読んでいて「あぁ…」というしかない良さにつながっている、そんな気がした。

    ただ、この本を読んで、同性愛云々というのはわからないかなー。
    というより、マックとジョニーの関係を読んでいて同性愛を感じるのだとしたら、同性愛って一体何なの?って思ってしまう。
    自分は同性愛には全く興味はない…、と思うwけど、でも、マックとジョニーのお互いがもたれ合っている関係というのは、男と男の関係として全然理解できる。
    こういう、もたれ合う関係(もたれ合うしかない関係)というのは、男対男の関係で普通にあると思うし(もしかしたら自分にもあったかもしれない)。
    女同士だってたぶんあるような気がするし、それこそ男女の間でもあるように思うんだけどなぁ…。
    (ていうか、男女だとむしろありふれた関係なのかw)

    というのも、やけに同性愛にこだわる解説に、なぁ~んか違和感があるんだよね。
    だって、昔の『真夜中の相棒』の本は今はないから、なんとも言えないけど、でも、それ以降のテリー・ホワイトの本の解説を見ても、同性愛については特に書かれてないんだよね。
    そう考えると、この『真夜中の相棒』が再発されたのは、今の同性愛ブーム(?)を当て込んでのことだったのかなーって、どうしても勘ぐってしまうのだ。
    何を言いたいかというと、他のテリー・ホワイトの小説が再発されないのが、同性愛的内容がないor薄いからなんだとしたら、ちょっと悲しいし、もったいないかなぁーとw


    最後にひとつ。
    表紙は前の方が、この小説の雰囲気に合っているんじゃないのかな?
    だって、ジョニーはスーツなんか着ないんだもん。

  • 1984年に刊行された作品の30年振りとなる復刊だそうだ。84年といえば翻訳物のハードボイルドやエスピオナージ、SFにどっぷり浸かっていた頃だが、なぜか本作の記憶がない。
    これは殺し屋ジョニーと相棒のマックの物語だ。ゲイかと思ってしまうが、2人の関係は性的なものではなく共依存だ。
    ベトナム戦争に従軍していた時に出会い、その時には既に壊れていたジョニーと、彼の庇護者として立ち回ったマック。除隊後も離れ難く、紆余曲折を経て殺し屋となるまでの過程が読ませる。
    もう1組、こちらは刑事のペアが登場するものの、相棒を失ったサイモンが彼らを追うことになる。
    ジャンルとしてはミステリーだが、運命に翻弄された男たちの物語として出色だった。

  • 面白かったです。先日読んだ「女子ミステリー マストリード100」で気になった本です。
    ハードボイルドBLでした。
    ベトナム戦争で心に傷を負ったジェニーと、彼を保護するマックが借金から裏社会で殺し屋を始めます。マックが組織との交渉役、ジェニーが殺し屋。いかにもワイルド系なマックではなく、精神が不安定なジェニーが殺す方、というのもツボでした。
    ある時、ターゲット殺害時にそこにいた男も殺すのですが、それによってその男の相棒だった警察のサイモンに追われる身になります。サイモン、全てを失ってもふたりを追い詰めるのが偏執的でした。
    ジェニーとマックの間にあったものがいわゆる同性愛なのかはわからないですが(「愛しています」の言葉はあるけど)、お互いに相手がたまらなく必要だということは痛いほど伝わってきます。
    そしてサイモン、相棒の敵として追い詰めるものの、マックを亡くしたジェニーの新しい庇護者になる、というのが複雑で良いです。ふたりはこれからずっと一緒にいるのかな。。
    原題はトライアングル。マックとジェニーとサイモンの三角…かな。

    確かにハードボイルドなのですが、愛の物語でもありました。
    全員それぞれの影があり、お互いを強く求める。表現が丁寧で繊細で、綺麗でした。
    この作品と出会えて良かったです。大矢さんありがとうございます。
    これ映画化されてるようですが、マックが初老って…でもフランス映画なので期待します。

  • 『依存』『執着』『偏愛』『殺伐』
    このワードにピンと来た方、あなたにおすすめしたい。読んでいくうちにじわじわと心に滲んでくる切ない想いと焦燥感。幸せになってほしいと願えば願うほど、物語はより深い闇へと落ちていく。最後の頁を捲った時、不思議と涙が零れ落ちた。男たちの哀愁漂う物語。高村薫氏の著書が好きな女性にはぜひ読んで頂きたい一冊。

  • マックに強く依存していないと生きていけない少しポワッとした美青年の殺し屋のジョニーと、ギャンブルばっかして金をすぐにすってしまうがジョニーを守るために一生懸命な相棒のマック。
    そして、相棒をジョニーに殺されその復讐のために二人につきまとう刑事のサイモン。
    この三人が主体となって話が進みます。

    いや、この三人全員ちょっと心に問題があって、最後はすごい切ないやらモヤモヤするやらで…。
    マックが言ってたようにこの話にハッピーエンドはないだろうとは思ってたけどやっぱり辛い。

    マックとサイモンはジョニーに依存し過ぎだし、ジョニーはジョニーで誰かに依存してないと自分で行動できないような人だし。

    最初はサイモンはまともなのかと思ってたら最終的に彼が一番問題だったような…。
    幸せになんてあの生き方じゃなれなかっただろうけど、マックとジョニーには幸せになって欲しかった。

  • ふあああ!この激しく渦巻くやるせない感情をどうしましょう!?
    関係性に萌える腐った魂を持つ紳士淑女の皆様に全力でお薦めして回りたい!
    作者が私のツボをがっつんがっつん衝いてきて息も絶え絶えです。

    何もかも持ってない、孤独な男達。
    彼らは出会い、魂の底で相手を求める。
    互いになくてはならない存在なんだけど、生ぬるい関係でなくいつも問題ばかり。なんでこんなに(読んでる側の)胸が締め付けられるのか。
    相手が愛しい、なんて単純じゃものでなく、相手が自分を必要としてくれるから隣にいてくれるから、というエゴ。そして自分も相手の支えになれているという感覚。相手がいれば自分は孤独じゃない。
    あああっ、そういうシチュエーション大好物だ。

    しかし、二人がどんどん追い詰められ逃避行する展開なのかと思いきや、まさかの三角関係!
    マックはサイモンに、サイモンはマックに嫉妬する。ジョニーを自分だけのものにしたくて。
    マックもサイモンも女を媒介にジョニーを抱いてる。
    それまで無自覚だったのに、3部に至ってマックは己の感情を自覚してしまうしな!
    マックとジョニーには、擬似性行為を意図して描かれたのだろう言動もあるし。
    そもそも初っ端の「僕が何を欲しがっているかわかりますか?」からしてエロいです。
    あとがきにもあるように、”ゲイミステリ”の雰囲気が濃厚で悶える。
    なのに、物理的に結ばれてるわけじゃないのがまたいいのです。

    色々な作品がつくられるくらい、アメリカにとってベトナムの影とは色濃いのだなと改めて。

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