- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167901264
作品紹介・あらすじ
原発はヤクザにとって「最大のシノギ」暴力団専門ライターが作業員として福島第一原発に潜入したルポ。そして用地買収や作業員派遣で原発に食い込むヤクザの実態を暴く。
感想・レビュー・書評
-
暴力団取材を専門とするジャーナリストによる、事故直後の福島第一原発を取材したルポ。
被曝よりも熱中症の心配が大きくなる現場の過酷さと危険さ。細かく定められているはずの線量管理も実態はいい加減で、東海村臨界事故ではウランをバケツで運んでいたという話を思い出す。絶対安全という建前と現実のギャップに入り込む、暴力団を含むアングラな人々。地域や会社への忠誠心から作業に携わる人々。飼い主を失って取り残され、瘦せ衰えたペット。
「暴力団が原発をシノギに出来るのは、原発村が暴力団を含む地域共同体を丸呑みすることによって完成しているからだ。原発は村民同士が助け合い、かばい合い、見て見ぬふりという暗黙のルールによって矛盾を解消するシステムの上に成り立っている。(p246)」
体を張ったルポとして読み応えがあるけれども、現実の話だから面白がるどころではない。原発入りに高揚していた著者が、のちに自身の被曝の程度について専門家から説明され、ようやく恐怖を覚える場面が終章にある。読者もあらためてぞっとする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
当時テレビのみの情報だけで大変なことが起きてることは実感できても中の人達の壮絶さは具体的には想像しづらい。
THE DAYS(福島原発事故のNetflixドラマ)を見た。地上波では出来ないことをやってくれたなと思ったけどこの本はさらに踏み込み下請けや暴力団、日雇いの末端の人間達の状況が描かれてる。か(ドラマでは全く取り上げられていない)
ネット記事などでなんとなくは分かっていたけど実際に体を張って潜入した人からの言葉は臨場感があって更に踏み込んで知ることができて良かった。目に見えない放射能の怖さと現場の過酷な状況。それでも原発があることでの雇用や経済的な力は恩恵もあり地元の人たちも複雑な感情を抱えてる。 -
古い本だけど、原発がこわい事は、よくわかった。日本は、本当に再稼働するのか。福島の再検証が必要なのでは。
-
辛い現実
-
福島原発の潜入など、なかなか現実にはしりえないところも多いにある。
-
取材と称し、やくざの懐深くに入りこんで実際に見聞きした経験をもとにしており、独特のリアリティと臨場感あり。取材を続ける中で、反社であるやくざに惹かれるようになりつつも、なんとかバランスを取ろうとしており、単なるやくざ礼賛・反権力!に陥らないところも好感が持てる。取材の動機は「好奇心」だと言い切るスタンスも新鮮だが、好奇心もここまでくるとやや病的な感あり。
-
ヤクザ記事を専門とするルポライター・鈴木智彦さん
ヤクザと原発について調べるために自ら原発作業員となって福島原発のF1に潜入して書いたルポ。
「ヤクザもんは社会のヨゴレ、原発は放射性廃棄物を永遠に吐き続ける。似たもの同士なんだよ。俺たちは。」
原発の作業員を集める仕事、建設現場での土木仕事、原発誘致に反対する人々への圧力、原発をつくって村の存続を願う人をまとめる仕事、原発事故の土地での墓の移転、農地移転、電力会社、建設会社、下受け、孫請け…様々なところにヤクザの仕事がある
つまり原発は「大きなシノギ」になる
2011年3月12日に福島第一原子力発電所が水素爆発を起こした。東北の大震災で起こった「想定外の」大きな津波が原子力発電所を襲ったからだ。
F1と呼ばれる原発事故後の現場に入る人にしかわからない作業の杜撰さ、なんだかんだ言って全く謝罪の気持ちのない上から目線の電力会社、情報弱者の現場の人夫たち、見えないからこそ恐ろしい放射能の恐怖
それらは現場を見ないと書けない。
放射能で汚染された水を浄化する施設に流すために汚染水のすぐ横で働く作業員
原発バブルでにぎわうソープ街
造血幹細胞の保存を支持した谷口プロジェクト
そしてそれを無駄と言い切った国や東電
「ヤクザが原発をシノギにできるのは暴力団を含む原発村が地域全体を丸のみすることによって完成しているから」と鈴木さんが書いていることがすごく納得がいく
田舎に原発が多い
そのカラクリもよくわかった
すごいルポだった!
まさに鈴木さんでなければ書けなかったルポだと思う。 -
そこそこに面白かったがいまひとつルポとして真実に肉薄できていないように感じた。
-
震災による、原発事故。連日ニュース等で目にしていたが、この本を読むまでは本当のところまでりかいしていなかった。どこか他人事に思っていことは否めない。
大組織にはよくありがちな隠蔽。そして、それを正義ではないと思っていても、家族、生活のために解雇を恐れそれを指摘できない、そんな気持ちも分かる。