異人たちの館 (文春文庫 お 26-17)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (614ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907327

感想・レビュー・書評

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  • 終盤からマシンガンのように小出しにひっくり返され、
    スタボロに混乱させられました。快感!

    叙述トリックだとハードルを上げられながらも、
    多くの読者を引き込ませる作者に感服(600頁もあるし騙し続けるのは大変)

    作者の本立て続けに読んだので、流石になんとなく分かったので暫く時間を置こうと思う

  • 1番の驚きは、伏線の多さかなと思いました。

    最初に
    「かあさん たすけて こまつばらじゅん」の
    文字を見つけた警察が
    「書いている途中で枝が折れたんでしょう」と
    言っているんですね。
    書ききってるじゃん?と漠然と思ってましたが、
    確かに途中だったし、

    珍しく、作中に勉という名前の人が3人も
    出てきて、
    名前に何かあると思わせるところとか、
    2人とも「じゅん」ってことにもっと
    注目すべきだったなぁ。

    永い文章の中で数多くの伏線があり、
    しっかりとつながるところは、さすがでした。

  • 「赤い靴 はいてた 女の子 異人さんに つれられて 行っちゃった」
    ーーと始まる。折原一さんが描くとこの歌、ぞっとし、不吉な予感しかない。
    誘拐、監視、尾行、失踪と、迫りくる恐怖あり。
    樹海に消えた息子、その母と妹、行方不明の父親、ライター、取材を受ける関係者。異人とは何なのか?そして最後に笑うのは……?
    実在する事件ももとにしているらしい。

    「倒錯のロンド」以来読んだ折原一さん。
    叙述トリック小説であると知りつつ丁寧に読み進めたつもりが、早くも何がなんだか分からなくなる面白さが好き。分からなくなってもいい。読み直しも多分しない。
    モノローグ、年譜、インタビュー、短編小説など作中作も多く取り入れ、読者を混乱させる手法が見事。

  • 著者の作品は初読みとなりましたが、2018年発掘部門「超発掘本!」、いやいや読み応えありました。

    1993年に発刊された作品の為、昭和を彷彿させる雰囲気がプンプンする中、600Pに及ぶ大作の中には多重文体、現実にあったB級事件、叙述トリックにサスペンス...いやぁ〜これでもか〜って感じで詰め込まれていました。

    本作の特徴は多重文体だと思いますが、それがハンパなく盛り込まれてどんどん本筋の間に差し込まれて(遭難者のモノローグ、島崎潤一がまとめた小松原淳の年譜、淳の関係者へのインタビュー、淳が書いた短編小説…)おり、見事に混乱させられます^^;

    本作の主人公はゴーストライターの島崎潤一。

    富士の樹海で見つかった白骨遺体、近くの洞窟から見つかった小松原淳という若者の免許証、こんな感じで本作の幕は上がります。

    小松原淳は疾走しており、母親は島崎に淳の伝記をまとめるように依頼をし、島崎が淳の生い立ちからどんな人物だったのかを淳が残した物と関係者への取材でまとめていくのが大筋のストーリー。

    淳の幼少期に起こった誘拐事件に父親譲治の疾走、それぞれの事件にかかわる謎の背の高い不審な男の影...

    淳の妹ユキ。

    謎が謎を呼び、過去と現在がクロスする中、物語は思いもよらない結末をむかえる。


    説明
    内容紹介
    富士の樹海で失踪した息子・小松原淳の伝記を書いて欲しい。
    売れない作家・島崎に舞いこんだゴーストライターの仕事。女依頼人の広大な館で、資料の山と格闘するうちに島崎の周囲で不穏な出来事が起こり始める。
    この一家には、まだまだ秘密がありそうだ――。
    五つの文体で書き分けられた著者の初期最高傑作が甦る!
    メディア掲載レビューほか
    折原一のマイベストは、サスペンス小説の歴史の集大成だ

    読み出したら途中でやめられず、最後まで読み通してしまうサスペンス小説は多々あるが、それらの中に、時代が経過しても古びた印象を受けない作品は果たしてどのくらい存在するだろう。折原一が1993年に発表した長篇ミステリー『異人たちの館』が、そんな貴重な1冊であることは確かだ。

    作家志望の島崎潤一は、前年9月に失踪した小松原淳の伝記の執筆を、淳の母・妙子からの依頼で開始した。淳は8歳で児童文学賞を受賞した天才少年だったものの、その後は大成しなかったらしい。島崎は淳の過去を知る人々を取材して廻るが、彼の半生には誘拐未遂・失踪・殺人など、数々の不穏な事件が起きており、そのたびに謎の“異人"の姿が見え隠れしていた。そして島崎自身も何者かにつきまとわれる。

    淳の過去を調査するうちに次々と意外な事実が発覚し、冒頭から漂っていた不気味な雰囲気は次第に濃密なものとなってゆく(BGMのように作中を流れる童謡「赤い靴」も効果的)。作中には取材対象者の証言、淳が執筆した小説、何者かのモノローグなどが入り乱れ、読者を奥深い迷宮へと誘う。極度に技巧的な構成、さまざまな文体の使い分け、登場人物の造型に滲む異常心理、巧妙かつ大胆な伏線など、海外サスペンス小説を愛好してきた著者がそこから学んだ数多くの美点を一作に凝縮したような小説に仕上がっている。その意味で本作は、サスペンス小説の歴史の集大成であるとも言えるだろう。

    著者本人が自作のマイベストと評価している本作は、2016年に刊行された文春文庫版を含め3度も文庫化されている。まさに不朽のサスペンス小説なのだ。(百)

    評者:徹夜本研究会

    (週刊文春 2017.3.30号掲載)

    内容(「BOOK」データベースより)
    8歳で児童文学賞を受賞し天才少年と呼ばれた小松原淳は、なぜ富士の樹海に消えたのか?母親の依頼で淳の伝記を書くことになった作家志望の島崎は、膨大な資料を読み、関係者に取材して淳の人生に迫るが、やがて不気味な“異人”の影が彼の周辺に出没するようになり…。著者畢生の傑作がここに復活!
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    折原/一
    1951(昭和26)年生まれ。早稲田大学卒業後、編集者を経て88年に『五つの棺』(後に改作して『七つの棺』)でデビュー。95年には『沈黙の教室』で第48回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • どこかのサイトで紹介されてたのを見て買った一冊。

    ゴーストライターの話だった。

    タイトルに館とついていたので、綾辻さんの館シリーズみたいな館の中で起こるミステリーだと思っていたが違う内容だった。

    ストーリーの中に小説があったり、年譜があったりモノローグがあったり今まで読んだ事がない作りの小説だった。

    そうゆうのが、始め面倒な小説だなと感じたが、話の中では重要であり、年譜は物語を理解するのにはすごい便利だった。

    モノローグはびっくりした。
    あらら そっちの人の話かと

    あらためて話を振り返ると2人の小説家はどちらも母親の過保護の元に育った人達なんだと思った小説でした。

  • 樹海で行方不明になった小松原淳の伝記を書いて欲しいとゴースライター島崎順一の元に依頼が。伝記のための取材をしていく中で不可解な事件の数々、不審な影。島崎はゴーストライティングの中で何に出会うのか。
    折原一さんの作品は初めてでしたが、読みやすさと伏線回収の数々、そして叙述トリックの爽快さが良かったです。こんなにスラスラ読める作品は東野圭吾作品以外で初めてかも。600ページの大作ですが、あっという間に読破できました。
    モノローグや時系列表などあまり小説で見かけない描写に最初は違和感あったけど、読み返しやすくてページ数の多い作品にありがちな伏線確認しにくいというデメリットをカバーしていた。
    ただラストがちょっとしっくりこなかったのが残念!全体的に良作だったので、★4で!

  • 読み応え抜群(ページ数がすごい)。
    個人的に折原さんの叙述ミステリは大好きなのと、小松原淳がどういう生涯だったのか気になって一気読み。
    ある程度予想つくところもあれば、結構意外だった部分もあったし、作中作もあふれていて面白かった。

  • ブックカバーかけて読書するもので、作品の読みごたえに満足しつつカバー外して改めて表紙見たら、表紙でもなんとなくネタバレしててまた震えた。

  • ミステリー文学の本棚(あべしぃさん)
    https://www.youtube.com/watch?v=8TdU339Rz7o

    どんでん返しがすごいミステリーとして紹介されていたので読んでみた。

    8歳で児童文学賞を受賞し天才少年と言われた、小松原純がある時失踪する。
    島崎潤一は小松原の母から彼の半生をまとめた伝記を書くことを依頼される。
    さっそく小松原純の経歴を調べていくと彼の人物像と共に彼の周りには背の高い異人が関わる不可思議な事件が浮かび上がってくる。

    島崎潤一が調査を進めると取材先に先回りしている正体不明の男女が現れ、背の高い異人の妨害工作に会う。異人の正体とは誰なのか?小松原純はなぜ失踪に至ったのか?


    内容は島崎潤一の調査部分、取材先の口語文、小松原純の書いた作品部分、誰の言葉かわからないモノローグ部分が代わる代わる現れ全体像がなかなか現れない。
    他人視点で語られるのは宮部みゆきさんの「理由」を思い出した。

  • 倒錯のロンドに続いて折原さん2作め。仕掛けを警戒しながら読み進めるも、意外な展開に翻弄されました。折原さんだから、と仕掛けを打っているのはわかるので慎重に読み進めるとこれは誰のこと?章の最後は「…」で終えないで!先が気になる!ともやもや不気味な感じ。後半全てが紐解かれてスッキリ!登場人物が作家だと作中作が出てきたり、構成自体はかなり複雑かつ最後まで読み進めるのは根気がいるので万人にはおすすめできない。まさに折原さんを読むなら2作めにふさわしい作品。とにかく見事に騙されたし、作者のミスリードに思いっきり乗っかって最後に全てがつながる感覚を楽しんでほしい。

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著者プロフィール

埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者を経て1988年に『五つの棺』でデビュー。1995年『沈黙の教室』で日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞。叙述トリックを駆使した本格ミステリーには定評がある。『倒錯のロンド』『倒錯の死角』『倒錯の帰結』など「倒錯」シリーズのほか『叔母殺人事件』『叔父殺人事件』『模倣密室』『被告A』『黙の部屋』『冤罪者』『侵入者 自称小説家』『赤い森』『タイムカプセル』『クラスルーム』『グランドマンション』など著書多数。

「2021年 『倒錯のロンド 完成版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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