その犬の歩むところ (文春文庫 テ 12-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908775

作品紹介・あらすじ

『神は銃弾』で「このミステリーがすごい!」第1位。『音もなく少女は』で「このミステリーがすごい!」第2位。 名匠ボストン・テランが帰ってきた。 犬を愛するすべての人に贈る感涙の傑作。 傷ついた人々のそばに、いつもその犬がいた。 GIV――ギヴ。それがその犬の名だ。その孤独な犬の首輪に刻まれていた三文字だ。傷だらけで、たったひとり、山道を歩んでいた犬の名だ。彼はどこから来たのか。どこで、なぜ、こんなにも傷だらけになったのか。彼は何を見てきたのか。どこを歩んできたのか。 犯罪が、天災が、戦争が、裏切りがあった。世界が理不尽に投げてよこす悲嘆があり、それと戦い、敗れる者たちを見守ってきた一匹の犬がいた。 この世界の不条理と悲しみに立ち向かった人たちに静かに寄り添っていた気高い犬。『神は銃弾』でみせた荘厳な世界観、『音もなく少女は』でみせた崇高な人間の強さ、そしてボストン・テランにしか生み出せない乾いた詩情をたたえる文体。傷ついたひとたちの悲劇と救済を描く感動の最新作。

感想・レビュー・書評

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  • GIVが助かったから良かったけれど、助かってなければ、本を破り捨てていたかもしれない。それくらい、この本を通じてGIVは、自分にとって愛しい犬になった。

    どこまでもアメリカンな所、どこまでもアメリカンな描写にはついていけなかったけれど、面白かった。

    それにしても、どうして一部の人間は、人間のために犬を犠牲にするのだろう?

  • 戦争や貧困で傷ついたアメリカ人の再生の物語なので、アメリカ人の愛国心や反骨精神は興味深く読めたけど、復活のアイテムに犬を使わないで欲しい。
    最後には犬がヒーローみたいな感じでハッピーエンドにしても、犬はそんなもの求めてないと思う。

    と、辛口で評価しても面白かったことは否めない。ミステリーと言うほどの謎はない。どちらかと言えばロードムービー的。

    作者のボストンテランは覆面作家で性別すら謎だけど、最後に書評の人が「おそらく60代の女性」と推測してて、私は絶対男性だと思ったので、この人の他の本も読んでみようと思った。

  • ‪2018年本屋大賞「翻訳小説部門」第3位、ボストン・テラン「その犬の歩むところ」読了。‬

    ‪911、イラク戦争、カトリーナなどアメリカの惨事を背景に、傷ついた人々がギブという一匹の犬を救い、また自身も救われていくストーリー。‬
    ‪読後、大長編の映画を一本見終えたような感動と虚脱感を味わえた。‬

    ところどころに出てくる装飾体っぽい文章が最初読みにくかったけれど、それが独特の世界観を作り出していた。

  • 原題が「The Story of a Dog and America」という通り、「アメリカ」というところが強調されている。9.11、イラク戦争、ハリケーンカトリーナ、暴力…と現実のアメリカの諸問題が背景。登場人物はみんな何かを失って傷ついているのだけど、それでも善意や夢を失わずに生きようとする。そこに寄りそうのが犬。この物語では「ギヴ」という名前の犬だけど、辛いときに犬に寄り添ってもらう人は世界にたくさんいるだろう。やっぱり犬は人類の友。テーマは重いけど、読後感は良い。

  • 過去の作品とはひと味違う不思議な小説だ。賢くて愛情深くて勇敢な犬「ギブ」が、アメリカの各地で様々な人に出会う。良い飼い主に出会うこともあれば、涙なくしては読めない悲惨な体験もする。話の中盤からは、イラク戦争でのトラウマをひきずるディーンとギブの話になる。正直、ディーンと彼が親しくなる仲間たちとの話に落ち着かないものを感じる。アメリカ的マッチョさを善きものとして、そこに疑いを微塵も感じさせない書き方に居心地が悪くなるのは私だけなのか。ギブがヒーローさながらの活躍するのも、何だかなという気持ちが少しある。でも、犬にまつわる伝説の話で終わるところにはぐっときた。

  • このテキスト数でこれだけの表現力。自分にはドストライク。

  • 初読の作家さん。2018年のこのミスの8位だったのですが、ミステリ要素はあまりなかった。
    ギヴという犬をめぐってのストーリーだが、擬人化されておらず、犬目線でもなく、それがかえってギヴの存在を際立たせていたように思う。。特に犬好きではないけれど犬の存在が人類にとって素晴らしいものだと思えてくる。
    さほど重要でも無い登場人物でも印象に残る描かれ方がされている。
    そして文章がとても美しかった。ところどころ読み返してしまった。これは作家さん個性なのか訳者さんの翻訳が素敵なのか…。別の本を読んでみたいと思う。また新たな出会いに感謝を!

  • 文章がかなり難しい。
    ラストは泣ける。でも、ハッピーエンドで本当に良かった。

  • 完璧なまでに善良で無垢なるものギヴ。どんな困難にも諦めず立ち向かい希望を失わない。
    そんなアメリカンスピリッツの象徴としてのギヴが飼われていたモーテルに宿泊に来た兄弟の兄の悪意により盗まれるところから始まり、カトリーナによる喪失、9.11およびその後のイラク出兵によるゆがみを抱えた人々を癒しながら物語は進んで行く。
    どこまでも真っ直ぐで、ハッピーエンドに向かっていく直球の物語であるにもかかわらず、語られる言葉の神々しさ、善良な熱意により、変な嫌味は全くなく、アメリカなる物語として楽しめた。
    ただ、ミステリ生はほぼ無く、クライマックス直前でのなるほどね止まりのためその筋の話と思って読むと退屈かもしれない。

  • 深い愛情を根底にした、爽やかな物語。
    ギブが引き寄せた人々が見事に絡み合い、紡がれる。犬と人間の不思議な出会いは大きな運命、目に見えない力から放たれた糸のよう。

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著者プロフィール

ニューヨークのサウス・ブロンクス生れ。1999年、『神は銃弾』でデビュー。CWA賞最優秀新人賞を受賞し、本邦でも「このミステリーがすごい!」2002年版海外編で1位に輝く。以降、『死者を侮るなかれ』『凶器の貴公子』『音もなく少女は』などを発表。

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