革命前夜 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 400
レビュー : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910310

作品紹介・あらすじ

この国の人間関係は二つしかない。密告しないか、するか──。第18回大藪春彦賞受賞作!革命と音楽が紡ぎだす歴史エンターテイメントバブル期の日本を離れ、ピアノに打ち込むために東ドイツのドレスデンに留学した眞山柊史。留学先の音楽大学には、個性豊かな才能たちが溢れていた。中でも学内の誰もが認める二人の天才が──正確な解釈でどんな難曲でもやすやすと手なづける、イェンツ・シュトライヒ。奔放な演奏で、圧倒的な個性を見せつけるヴェンツェル・ラカトシュ。ヴェンツェルに見込まれ、学内の演奏会で彼の伴奏をすることになった眞山は、気まぐれで激しい気性をもつ彼に引きずり回されながらも、彼の音に魅せられていく。その一方で、自分の音を求めてあがく眞山は、ある日、教会で啓示のようなバッハに出会う。演奏者は、美貌のオルガン奏者・クリスタ。彼女は、国家保安省(シュタージ)の監視対象者だった……。冷戦下の東ドイツで、眞山は音楽に真摯に向き合いながらも、クリスタの存在を通じて、革命に巻き込まれていく。ベルリンの壁崩壊直前の冷戦下の東ドイツを舞台に一人の音楽家の成長を描いた歴史エンターテイメント。解説の朝井リョウ氏も絶賛!この人、〝書けないものない系〟の書き手だ──。圧巻の音楽描写も大きな魅力!本作を彩る音楽は……ラフマニノフ 絵画的練習曲『音の絵』バッハ『平均律クラヴィーア曲集』第1巻 『マタイ受難曲』リスト『前奏曲(レ・プレリュード)』ラインベルガー オルガンソナタ11番第2楽章カンティレーナ ショパン スケルツォ3番 ブロッホ『バール・シェム』より第2番「ニーグン」 フォーレ『エレジー』 ベートーヴェン 『フィデリオ』 ……etc.

感想・レビュー・書評

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  • 図書館の予約で何週間か待ってやっと到着したが、すでに次の予約がたくさん入っているようで「延長不可」とのこと。人気の小説のようだ。

    主人公・眞山柊史は、音楽留学のため東ドイツへ向かうところからこの物語は始まる。彼が日本をたったのはちょうど時代が昭和から平成に変わるその日。そして、留学の先は、第二次世界大戦後、東西に分断されたドイツの東側、つまり西のドイツ連邦共和国に対するドイツ民主共和国(DDR)だ。

    彼の年齢は23歳、平成元年が1989年なので、1966年生まれということになろうか。従って、あの東西分断のためにベルリンの壁が築かれた1961年を知らない世代である。

    彼は留学の地で、ピアニストとして自身の技術の錬磨を目指すが、同じく様々な国から音楽を求めて来ている留学生たちと接する中で、自らの音楽の追求にスランプを感じたり、また当時のDDRならではの事件に巻き込まれていく。

    冒頭から、ラフマニノフやバッハなどの曲目が登場し、常に音楽が背景に物語が進んでいく。それらの曲をBGMに読み進めていけば、よりリアリティを感じながら物語を楽しむことができる。

    音楽留学の世界、至高の音楽を追究する世界は、これまで自分にとっては未知の世界であり、その点にも興味深かったが、そのドラマが分断中の東ドイツ、シュタージに監視され、隣人を心から信じることに規制されるような生活環境下で繰り広げられていく点で、スリリングな展開にどんどん物語の中に引きずり込まれていくようであった。

    現在も分断中の北朝鮮から来たピアニスト、ベトナム戦争という歴史を持つベトナムからきたピアニスト、そしてドイツと同じく敗戦国である日本から来た主人公、分断中の東ドイツで出会う美人オルガニスト、ベルリンの壁崩壊と突破口となるハンガリー出身のヴァイオリニスト等と、国家的な背景も様々で、しかも個性もそれぞれに特徴的なキャスティングだが、音楽といういわゆる共通語を通じてドラマが展開していく。

    ベルリンの壁崩壊の「革命前夜」までの物語。その劇的なエンディングは、その後に展開される新しいドラマを読者に想像させてくれる。

  • すばらしかった。かつてわたしが「神の棘」に出会い、手を引いてもらったように、この作品に手を引いてもらい世界に向き合える若者が増えますようにと願わずにはいられない。本書で書かれたことがたった30年ほど前のことである事実にあらためて嘆息するし、戦いが長く長く続いていたことにも切なさが募る。自由を求める無数の小さな焔は忍耐によって守られ、情熱によってさらに燃え上がった。奇跡は、それを起こさんと行動するひとびとにもたらされるのだ。そして感情の別名でもある。「焔を守れ」。なんと力強いことばであろうか。壁は、崩れた。

  • 冷戦下のドイツ。
    ベルリンの壁に隔てられた西と東、それぞれに誇りを持ち、それぞれに想いを馳せる。

    DDRに音楽留学したピアニストの眞山。
    「音の純化」を求め、この環境でなくては見つからないと考えた彼が出会ったのは、天才肌で奔放なバイオリニスト・ラカトシュというハンガリー人。
    そして、美しきオルガニスト・クリスタ。

    眞山が求めた、彼にはないもの。
    それは「音の純化」の基になる、何にも揺るがされない自分という存在の確立なのかもしれない。
    同じ敗戦国でありながら西側のような成長を遂げつつある日本。
    そうした高揚の中では、見出せなかった眞山の停滞と静謐は、確かにDDRという国によく似合うように思った。

    密告するか、しないか。国家保安省(シュタージ)の監視を受けながら、音楽家達は自身の音を追い続けていく。
    国が生み出す音と、個人が生み出す音の調和……と言うと、伝わるか分からないけれど、その双方がぶつかりながら、「革命前夜」に突き進んでいくという、暗いながらも燈のある感じがイイ!

    誰が眞山達を密告したのかという、ミステリーの謎解きパートも面白いのだけど、ラスト一ページに息を呑まされるから、必見。

    あと、作中に何度も出てくるシュトロイゼルというお菓子食べたい(笑)

  • 須賀さんはその時代そこに住んでいたんじゃないかと思うくらい、東ドイツの雰囲気が伝わってくる。音楽の描写も上手くて、知らない曲でも実際に聴いたかのような満足感がある。
    東ドイツに住む人々はみんな色んなものを抱えて生きているけれど、中でも私は最後全てに別れを告げなければいけなかったイェンツが印象に残った。
    これはフィクションだけれど、実際あんな風に国に縛られて思うように生きられなかったんだと思うとなんとも胸が苦しくなる。自由であることの大切さを改めて感じた。

  • 初めての著者。読後驚きが残った、まだまだ自分の知らない、凄い作家がいるのだと。
    前半部分は、中々先へ進めなかった。読み終えた後もそうだったが、本作は痛いのだ、心にヒリヒリと痛みが残る。
    マヤマや、クリスタ、ラカトッシュ、イェンツ、登場人物達は戦っている、音楽という舞台で、或いは音楽を通して。自由や、幸福、地位を願いながら。
    主義、思想は個々の面でも見れば良いところはある、人間を惹きつけるものがあるからだろう。しかし「自由は代償を要求する。罪には罰がくだる。」、この言葉が重く心に残った。痛みと伴に。
    しかし、再読してみたいと思う、バッハの曲を聴きながら。映画化されたら、是非みて観たい。

  • ★4.5
    その地を訪れたことはないものの、ドレスデンのくすんだ街並、押し寄せる夥しいまでの音、それらを体験したかのような錯覚に見舞われる。そして、音楽を志す者の覚悟と東ドイツの若者が渇望する自由、軸となる音楽と革命が見事なまでに互いを引き立て合う。その反面、淡々と描かれる監視と密告の恐怖に背筋が寒くなるばかり。最後の最後まで目が離せず、遂に迎えたラストに思わず涙。ただ、音楽の造詣が深ければ本書をもっと楽しめたはずなのに!と思うと、自分の無知さが悔やまれてならない。憎たらしいけれど、ヴェンツェルが魅力的。

  • 東西で分断されたドイツ。東ドイツに音楽留学した眞山。冷戦下にあり東は灰色。その中で音楽と向き合う。文化の違い、レベルの高さに戸惑いながらも、自分の音、音を鳴らしていない時の音との対話。演奏シーンの鮮やかさ、迫力は素晴らしい。そんな音楽漬けの毎日が次第に監視だ、スパイだという東の現実を知るようになる。後半に入ると演奏シーンが減り政治色が強くはなるけれど、それでも物語の強さ、音楽のしなやかさ、喜びは消えない。音楽が全てを超越する瞬間。そこには希望がある。音楽はいつでも頭で体で鳴っている。

  • 出てくる楽曲を知らなかったり、そのためにその楽曲を表す描写に入り込めなかったり、主人公のしんねりむっつりした感じにイラついたりして、当初読みづらさを感じたけれど、後半は引き込まれてどんどん読み進めることができた。
    ドイツが東西に分かれていた時代に、東のドレスデンに音楽留学した日本人青年が主人公となっているので、彼の目線を通して、あの時代を追体験しているような感覚で読めた。ベルリンの壁が崩壊したのは私が中学生だった頃で、詳しいことは理解できていなかったけれど、テレビで見た映像や、時代の転換期に居合わせているという妙な高揚感は覚えている。あの映像の前段階の時間や、映像に映っていない場所に何が起こっていたのか、人々がどんな生活を送ってベルリンの壁崩壊に繋がったのか…その閉塞感や熱狂を感じて、心が震えた。
    クライマックスの「フィデリオ」、映像や録音が残っているなら観て・聴いてみたい。

  • いやぁ〜 ガツンとやられました。久々の5つ星!
    初読の作家さんの作品を直感で?あたるのが好きなんですが、これは大当たりでした! 状況やテーマもユニークですし、この「革命」が実に効果的に表現されています。私は初読でしたがもう10年以上書いておられるようで、他の作品もぜひ読んで行こうと思います。

  • 物語に飲み込まれた。

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著者プロフィール

須賀しのぶ(すが・しのぶ)
1972年11月生まれ。埼玉県出身、上智大学文学部史学科卒。
1994年『惑星童話』」でコバルト・ノベル大賞読者大賞を受賞し1995年デビュー。2010年『神の棘』で第13回大藪春彦賞候補。2012年『芙蓉千里』三部作によって第12回センス・オブ・ジェンダー大賞受賞。2015年『革命前夜』第18回大藪春彦賞受賞、第37回吉川英治文学新人賞候補。2017年、『また、桜の国で』で第156回直木賞候補、第4回高校生直木賞受賞。同年、『夏の祈りは』で「本の雑誌が選ぶ2017年度文庫ベストテン」1位、「2017オリジナル文庫大賞」受賞。
第100回高校野球記念大会が開催されるメモリアルイヤーの2018年、『夏空白花』が刊行された。

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