ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 (文春文庫 む 5-15)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910563

感想・レビュー・書評

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  • 旅先で。ラオスにいったい何があるというんですか?の章の最後が良かった。旅先で感じた匂いや感触。それらが今後の人生にどう影響していくのか今はわからないが、それは必ず私の中に立地的に存在し続けるだろう。

    2018.10.14

  • 村上春樹の紀行文を読むのは、もしかすると初めてかもしれない。

    その国の情勢変化をサラッと追記している所や、食事の記述にしても、心をくすぐられるのだけど。
    真っ白な建物と青い手すりが鮮やかなレジデンス・ミコノスと村上春樹の写真が、一番印象に残った気もする。(文章じゃないのか、とツッコまれるだろうけど)
    『多崎つくる』を彷彿とさせるのだけど、ここで執筆したのは『ノルウェイの森』であり、フィンランドへは『多崎つくる』を書いた後に行ったらしい。

    文章としてのお気に入りは、表題にもあるラオス編かな。
    ガムランを聴きながら音楽と呪術は繋がっているのだろうと述べていくのだけど、そこまでの音楽の描写がいい。
    シャーマンから「宗教」と「物語」について書かれている部分は、引用してみる。物語を流動するイメージと置いた所を、自分の中にも残しておきたくなった。

    「どれもなかなか面白い話(宗教的説話)なのだが、僕がまず驚くのは、それほど数多くの物語を人々がみんなちゃんと覚えているということだ。言い換えれば、それだけ多くの物語が、人々の意識の中に集合的にストックされているということになる。その事実がまず僕を感動させる。そのようにストックされた物語を前提としてコミュニティーができあがり、人々がしっかり地縁的に結びつけられているということが。」

    「なぜなら宗教というのは、規範や思惟の源泉であるのと同時に、いやそれ以前に、物語の(言い換えれば流動するイメージの)共有行為として自主的に存在したはずのものなのだから。つまりそれが自然に、無条件に人々に共有されるということが、魂のためになにより大事なのだから。」

  • 【村上春樹さんの滞在エッセイ集】

    村上春樹さんが滞在したことのある、アメリカ・ボストン、ギリシャの島、イタリア・トスカーナ、旅先で訪れたアイスランド、フィンランド、ラオス、アメリカの2つのポートランド、そして熊本県でのお話、思索がつづられています。



    先日『#一人称単数』を読ませていただきましたが、その欠片も少し出てきて、発想の宝庫がこの経験の中に散らばっているのだろうなーと思ったりした。



    村上春樹さんの経歴について、あまり知っていないのですが、特に翻訳作家としてご活躍されているので英語の習得はどうなさったのかとふと思い、調べたら特に学校もずっと日本なんですね。

    本書で何度か出てくるアメリカ滞在経験、それは大人になってからで。

    でも映画やジャズを通して、アメリカ好きなんだろう、と思いきや、ヨーロッパにも執筆のために滞在していたり。



    時に独特な着眼点、様々なものへの好奇心が深く探求し思索する言語力と行動力を伴い、村上春樹さんの世界観が広がり続けているのだろうと感じた。



    自分が暮らしてきた価値観や考え方との類似点と相違点を考え、言葉にしていたり、これまでもっていた概念を更新していく。

    例えば、ラオスで根幹から変わったと書かれていた川の観念。固有の物語性を持つ宗教の実体験。



    猫や鳥、羊も出てくる。虫が無理な人にはお勧めのアイスランド、いいですね。



    フィンランドのハメーンリンナ訪問記では、これは#多崎つくる の巡礼のお話の下になっているのかと思いきや、章の最後の追記で、その本を想像で書いてから訪問したとあった。工芸品とかも出てきて、とても雰囲気あったけどな。想像力も豊かなのだろう。



    彼がイタリア・ギリシャに滞在していたのは、1986年、30代後半。#ノルウェイの森 を考えているときだったりしたらしい。



    そして、アメリカに渡ったのは90年代前半。



    四半世紀経って訪れる楽しみも伝わってくる。

    人生長く生きることになる場合、若い時に一度訪れた場所や、出会った人、したことを竿度する、そんな楽しみもあるのかな、と思ったりした。

    だから今、興味のあることに飛び込んでいく価値があるのだろう。

    将来振り返れる今を持つこととか。もう会わないかもしれない人、もう来ないかもしれない場所、たくさんある中で、記憶がよみがえるかどうかも分からないけれど、思い出って面白い。

  • ラオスって調べると、真っ先に出てきたので読んでみた。ルアンパバーンの章はとりわけ思索に耽っていて、面白かった。行くのが楽しみである。とても時間がゆっくり流れてそうだ。
    春樹さん、あんまり手がついてなかったんですが、エッセイだと猫好きのおじさんで親近感…。北欧(特にアイスランド)もアメリカもイタリアも行きたい…!
    春樹さんにも旅行にももっと興味が湧いた一冊でした。

  • 読者と村上春樹の距離感が絶妙に良い。
    エトピリカ:もう知らんけんね
    とこどもをある日突然置いていく話や
    やはり文章を書くのがとても上手なので
    一見なんてことない紀行文集だと思って捨てないで、
    癒されるようにして読むのがとても楽しい
    程よく自分の見聞も広がるような知的ストーリーもある

    旅っていいものです
    疲れることも、がっかりすることもあるけれど、
    そこには必ず、何か、があります

    さた、あなたも腰を上げてどこかに出かけてください

  • ラオス好きなんで読みました。

  • 旅に出たくなった。経済的制約のない旅はとても楽しそうだと羨ましく思ったけど、思い返せばそもそも旅はそういうものだと気づいた。

  • 村上春樹のエッセーは個人的に小説より好き。ユーモアを感じるし、情景が浮かぶ描写が良い。ニューヨーク、アイスランドの話が良かったかな。

  • 村上さんのゆるーい旅記録。
    海外に移住したり、わりとストイックにランニングされてたり、猫好きだったり。意外な一面に勝手に親近感がわく。

    観光スポットをガンガン攻める旅行ではなく、ふらりゆるりと現地の空気に溶け込む旅をしたいなと思った。

    はやく気の赴くままに自由に動けるようになって欲しいと切に願う。

  • 色々な国での旅行記をまとめたもの。特に好きだったのは『懐かしいふたつの島で』(ギリシャ)、『大いなるメコン川の畔で』(ラオス)、『緑の苔と温泉のあるところ』(アイスランド)。ギリシャの話は『遠い太鼓』を読んだ後だとさらに面白い。ラオスの、生活の一部に仏教が根付いている様を自分の目で見てみたい。アイスランドが本好きの国とも芸術の国とも知らなかった。素敵な教育方針のお国だ。行ってみたいなあ。「旅っていいものです。疲れることも、がっかりすることもあるけれど、そこには必ず何かがあります。」いい言葉だ。旅に出たい。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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