ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 (文春文庫 む 5-15)
- 文藝春秋 (2018年4月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167910563
感想・レビュー・書評
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旅先で。ラオスにいったい何があるというんですか?の章の最後が良かった。旅先で感じた匂いや感触。それらが今後の人生にどう影響していくのか今はわからないが、それは必ず私の中に立地的に存在し続けるだろう。
2018.10.14詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
村上春樹の紀行文を読むのは、もしかすると初めてかもしれない。
その国の情勢変化をサラッと追記している所や、食事の記述にしても、心をくすぐられるのだけど。
真っ白な建物と青い手すりが鮮やかなレジデンス・ミコノスと村上春樹の写真が、一番印象に残った気もする。(文章じゃないのか、とツッコまれるだろうけど)
『多崎つくる』を彷彿とさせるのだけど、ここで執筆したのは『ノルウェイの森』であり、フィンランドへは『多崎つくる』を書いた後に行ったらしい。
文章としてのお気に入りは、表題にもあるラオス編かな。
ガムランを聴きながら音楽と呪術は繋がっているのだろうと述べていくのだけど、そこまでの音楽の描写がいい。
シャーマンから「宗教」と「物語」について書かれている部分は、引用してみる。物語を流動するイメージと置いた所を、自分の中にも残しておきたくなった。
「どれもなかなか面白い話(宗教的説話)なのだが、僕がまず驚くのは、それほど数多くの物語を人々がみんなちゃんと覚えているということだ。言い換えれば、それだけ多くの物語が、人々の意識の中に集合的にストックされているということになる。その事実がまず僕を感動させる。そのようにストックされた物語を前提としてコミュニティーができあがり、人々がしっかり地縁的に結びつけられているということが。」
「なぜなら宗教というのは、規範や思惟の源泉であるのと同時に、いやそれ以前に、物語の(言い換えれば流動するイメージの)共有行為として自主的に存在したはずのものなのだから。つまりそれが自然に、無条件に人々に共有されるということが、魂のためになにより大事なのだから。」 -
ラオスって調べると、真っ先に出てきたので読んでみた。ルアンパバーンの章はとりわけ思索に耽っていて、面白かった。行くのが楽しみである。とても時間がゆっくり流れてそうだ。
春樹さん、あんまり手がついてなかったんですが、エッセイだと猫好きのおじさんで親近感…。北欧(特にアイスランド)もアメリカもイタリアも行きたい…!
春樹さんにも旅行にももっと興味が湧いた一冊でした。 -
読者と村上春樹の距離感が絶妙に良い。
エトピリカ:もう知らんけんね
とこどもをある日突然置いていく話や
やはり文章を書くのがとても上手なので
一見なんてことない紀行文集だと思って捨てないで、
癒されるようにして読むのがとても楽しい
程よく自分の見聞も広がるような知的ストーリーもある
旅っていいものです
疲れることも、がっかりすることもあるけれど、
そこには必ず、何か、があります
さた、あなたも腰を上げてどこかに出かけてください -
ラオス好きなんで読みました。
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旅に出たくなった。経済的制約のない旅はとても楽しそうだと羨ましく思ったけど、思い返せばそもそも旅はそういうものだと気づいた。
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村上春樹のエッセーは個人的に小説より好き。ユーモアを感じるし、情景が浮かぶ描写が良い。ニューヨーク、アイスランドの話が良かったかな。
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村上さんのゆるーい旅記録。
海外に移住したり、わりとストイックにランニングされてたり、猫好きだったり。意外な一面に勝手に親近感がわく。
観光スポットをガンガン攻める旅行ではなく、ふらりゆるりと現地の空気に溶け込む旅をしたいなと思った。
はやく気の赴くままに自由に動けるようになって欲しいと切に願う。 -
色々な国での旅行記をまとめたもの。特に好きだったのは『懐かしいふたつの島で』(ギリシャ)、『大いなるメコン川の畔で』(ラオス)、『緑の苔と温泉のあるところ』(アイスランド)。ギリシャの話は『遠い太鼓』を読んだ後だとさらに面白い。ラオスの、生活の一部に仏教が根付いている様を自分の目で見てみたい。アイスランドが本好きの国とも芸術の国とも知らなかった。素敵な教育方針のお国だ。行ってみたいなあ。「旅っていいものです。疲れることも、がっかりすることもあるけれど、そこには必ず何かがあります。」いい言葉だ。旅に出たい。