イエス・キリストは実在したのか? (文春文庫 ア 12-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910778

作品紹介・あらすじ

イエスは平和と愛を説いた救世主ではなく、武力行使も辞さない革命家だった――。全時代を通じたベストセラー「聖書」からいかなる史実が落とされ、何が創作されたのか?イスラーム教徒による実証研究で全米を騒然とさせた衝撃の書。『イエス伝』を著した評論家・若松英輔氏による解説も収録。〈本書の著者、レザー・アスランはキリスト教徒を通過したキリストからではなく、イエスの口から神の教えを聞こうとしたのではなかったか。そのためには厚く塗られた教会的信仰という覆いを取らねばならない。彼がイエスの口から何を聞いたのか、読者は、この本の随所でそれをかいま見ることになる。〉(「解説」より)

感想・レビュー・書評

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  • 邦題が『イエスは実在したのか?』ではなく、『イエス・キリストは実在したのか?』であるのは一つの肝である。実のところ、歴史学的にも考古学的にも、イエスが実在の人物であることはほぼ定説となっている。本書は、新約聖書および同時代の史料を徹底的に読み込み、新約聖書の矛盾を洗い出すことで、歴史上の人物であるナザレのイエスの素顔に迫るものだ。宗教的には聖典をそのまま受け入れることが正しい姿勢だろう。しかし、ムスリムでもある著者アスランは、歴史家としてイエスと向き合う。宗教と歴史、2つの視点で見ると、同じものを見ているにも関わらず、異なる視界が広がる。その様はエキサイティングで、スリリングである。
    本書はまた、ユダヤ教の一派に過ぎなかったイエスの教団が、どのようにして世界宗教の足がかりを築いたのかも明らかにする。イエスの時代のパレスチナには、自らメシアを名乗る者が続出していたという。彼ら「偽メシア」と、救世主イエスの違いは何だったのか。多くの解説書では、その答えをイエスが唱えた「愛」の思想に求める。しかし、ナザレのイエスとイエス・キリストを明確に区別する著者アスランは、そこに答えを見いださない。何故?誰が?本書を読んで確かめてほしい。

  • 聖書において、救世主(キリスト)イエスとして描かれている人物を歴史的な知見から改めて見てみる本作。
    そこで描かれているナザレのイエスは、地上における「神の国」の樹立を目指して、弟子たち軍団を集めながらガリラヤ全土を歩き回り、社会の大変革を企図していてた熱烈な革命家であり、エルサレムの神殿の司祭階級の権威に楯突く魅力ある伝道者でありローマの占領に反抗して敗北した急進的なユダヤ人ナショナリストである。
    こんな熱意の溢れる彼だからこそ、弟子たちは彼を信じ、彼の跡を継いだり彼の権威の上に行こうとしたりせずに、救世主として描いたのだろう。
    最終章らへんのパウロの暗躍などは読んでいてとっても納得できるところがあり面白かった。

  • 途中でやめてたのいちおうめくった。いろいろ知らんこともあり。特にパウロと他の使途との関係はあれだ。まあキリスト教とかどうでもいいというか、学生のときにこんなもんなんでまじめに勉強しなきゃならんと思ったのだろうか、みたいな。

  • 「一人の人物が四つの異なった『履歴書』を持っているとしたら、あなたは、その人物を信頼することが出来るでしょうか」(『仏教とキリスト教 イエスは釈迦である』堀堅士)。できません(キッパリ)。聖書はその慈愛と暴力でもって読む者の精神を二つに切り裂く。このためクリスチャンには二重人格的な傾向が見られる。例えば十字軍と救世軍など。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/12/blog-post_8.html

  • 救世主(=キリスト)としてのイエスの存在と、実際に2000年前に生きていた人間としてのイエス(ナザレのイエス)についての論考。イエスというと、磔刑に処せられた悲劇の教祖、愛と慈愛に満ちた人々を導く尊師、数々の宗教画や彫刻で表現された無垢で無謬の存在のイメージ。当然だが、元となった人物はいるわけで、数々の経典や歴史書など読み合わせる中でその人物像を描いた一冊となっている。この本で明らかにされる人間イエスは、同じユダヤの民でありながらローマの支配に従属している高位聖職者に反発し、神殿に乱入したり、不当に商売を独占している商人のお店をぶち壊したり、真っ当だが過激なスローガンで体制批判する若きカリスマリーダーである。結果的に批判の対象になった聖職者からの告発で治安維持にあたっていたローマ軍に捕らえられ、当時の慣例に従って粛々と磔にされる。どうも、劇的に描いている聖書の場面とは異なるようである。その後、イエスの弟が後継者と目されるのだが、エルサレムで活動を続けたことが裏目に出て、イエスの死後約40年でエルサレムはローマ軍に壊滅させられ、この一派は消滅する。一方、イエスの弟一派と反目しながら、遠くローマで布教を行なっていた一派は、ローマに取り入れられるよう教義を修正しながら生きながらえ、その後300年ほどを経て国教となる。自身の権威を高めるためにイエスの神性を殊更強調したのが現代のイメージにつながっている。この本の説が全面的に正しいわけでもないだろうけど、こういう面もあるのだと参考になりました。

  • 風呂読書。イエスのころから1世紀〜2世紀のユダヤ人とローマ帝国がどういう関係だったか、みたいなの。どれくらい正しいのかしらんけどおもしろいな。

  • なかなかスリリングな考察。だけど、もともと聖書に馴染みがないうえ、膨大な注釈を丹念に読む根気もなかったため理解不十分で終わりました。

  • 「キリスト」としてのイエスではなく、歴史上の人物としての「ナザレのイエス」の人物像に迫っています。
    律法学者や哲学者ではなく、占領するローマ帝国や祭司階級に対抗する熱血革命家だったようで、意外な印象を受けました。
    イエスを取り巻く、弟ヤコブやパウロ等の歴史的事実にも言及されていて、「キリスト教」の成り立ちについても理解できました。
    敬虔なキリスト者からは反発がありそうですが、摩訶不思議なキリスト教の教義がなぜこうなっているのか、少し分かった気がしました。

  • エルサレムの過激な宗教革命家としてのキリストを歴史学的見地からのノンフィクション。
    キリスト教徒から、キレられんじゃないのか?とこちらが、心配してしまうぐらいに過激な題名で、思わず即買い。

    キリスト教が世界三大宗教として確立するまでの聖書・歴史書の分析や、論理的な説明が、本当にいい。
    イスラム教徒である歴史学者が、著述しているからなのか。

    イエスだけでなく、ヤコブ、パウロなど、教徒でない日本人の私にとって、最高の入門書であった。

    ところで、キリスト教国としてのアメリカが、テロリストとしてのオサマ・ビンラディンを、殉教者にならないよう、暗殺し、遺体を残さなかったのは、正しかったのであろう。

  • 【米国で一大センセーションを呼んだ衝撃の書】イエスは平和と愛を唱えた救世主ではなく、剣をとることも辞さない革命家だった――。イスラーム教徒が描いた「イエス」の実像とは。

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