- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167912161
感想・レビュー・書評
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磯田道史氏の著作は初体験。
第1章に記載ある、ノーベル経済学賞受賞者ダグラス・ノースの『経路依存』の考え方がまず面白かった。曰く、「経済制度は、前の制度の道筋にとらわれながらしか発展できない」という考え方で、経済のみならず社会全般に当て嵌まるよう。武士の時代千年の後、未だ明治維新後150年ちょっと。
ローカルの話をする際には、県よりも藩の区分の方がしっくりくるし、現代人も歴史の延長線上で生きている、ということなのだろう。
雑誌連載が初出らしく、カバー範囲が多岐に渡って飽きの来ない内容。
出色は、戦後大きく評価を落としたものの、明治維新の精神的基盤に寄与した「頼山陽」に関する文章。世界観、歴史観、というのは、ある個人に大きく影響され得る、という点も新鮮だった。
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歴史で学ばないけど面白く興味惹かれるネタばかり。
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『日本史の探偵手帳』読了。
江戸時代の教育システムはリアリズム重視で、その中から維新や日露戦争を牽引した有為な人物が生まれた。
しかし…第二次世界大戦を指揮したのは明治以降に生まれた、いわゆる学校秀才ばかり。その結果、日本を破滅へと導いた。
教育一つで国はどうにでもなってしまう。
今の我が国の教育システムは、あまり芳しくはなさそうだ…。 -
磯田道史ファンです!
2019.1.10発行 -
磯田氏が歴史学者の視点から読み漁った膨大な古文書から、現代の日本社会に通じる事例を列挙しているのが面白い。
例えば⋯
◎ 江戸時代、武士は税金を払っていたのか。
◎ 明治維新を支えた武士の人材育成術
◎ 豊臣秀吉の処世の極意
◎ 武家女性が殿御を寝室に迎える時の武士道論とは
まあ兎に角、磯田氏が古文書から学んだ分野は呆れる程に広い。
がしかし、氏が古文書から得た情報は、現代の社会に生きる我々にも為になる情報として大いに役立つのである。 -
磯田さんの熱意が伝わる。
小ネタが楽しい。 -
「中世武士と近世の武士の違い」では猪山家が面白い。細かく数字を分析しているところと能力の高め方は教訓になる。安定するとそこが評価されるが非常時には家柄だけじゃ没落するという日本史のスパンも納得がいく。
「歴史を動かす英才教育」では豊臣秀吉の子育ての失敗(わしが帰るまで女中を縛って置けとか)と乃木希典の読書(○、△、×をつけて批評する精読)が参考になった。
「古文書を旅する」ではアイドルとかイケメン大名鳥居とか整形の話が出て普遍性のある読み物。
「歴史を読む」でお勧めの本を紹介。「日本史」の織田信長が自分と同じ生年月日で同じ時刻に産まれた人物を探させて質問したというエピソードは面白い。考えて実行することが同時代の人に比べても出色であることが分かる。 -
2年6月3日読了
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磯田氏が2003年から2015年までに文芸春秋などの雑誌に書いたももの21編をまとめたもの。
内容別に
「中世の武士と近世の武士の違い」
「歴史を動かす英才教育」
「古文書を旅する」
「歴史を読む」に分かれている。
中世の武士は家臣団といっても寄せ集め、主人が不利とみるや逃げ出すが、織田信長あたりから戦の最後まで主人に付き添っている形になった。また現代のものの考え方のルーツも鎌倉とかまでは遡らず、江戸時代で、それは織田・豊臣・徳川の美濃・尾張・三河の濃尾平野で作られた、と考えていいいという。
教育が成果を出すには3代かかる。
なぜ太平洋戦争で軍部は独走したが、それは教育システムのせいだという。江戸も中期になると家柄にとらわれず優秀な者もとりたてようと藩校などが作られた。維新の英雄は教育に力を入れた藩から出ており江戸時代からの生き残りで下級武士が多かった。次の世代、日露戦争あたりの乃木将軍や大山巌などは第一世代をみつつ新しい組織になじんだ。次の第3世代、東条英機あたりになると維新は知らず、出世するのは筆記試験に強い秀才が集まり、人材の多様性が無くなり、専門知には長けているが総合知が無かったから、という。
そして現代、重要視されるべきは技術知だろうという。
最後の「語り下ろし日本史「必読の百冊」」では、原始から現在まで古今の著作100冊を引き合いにざっと、日本史を通観していて、これがとても分かりやすい。
氏が当たった史料の多さには恐れ入る。それでこそプロなのだなあ。ただ文が、ですます調と、だ調が混じっているので読んでて調子が狂う。