火と汐 (文春文庫 ま 1-136)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167912284

作品紹介・あらすじ

八月十六日、京都〝大文字〟の夜。興奮にざわめく人混みに紛れて、一つの情事が進行していた。しかしその最中、人妻は送り火に見とれる男の前から姿を消した。同じ時刻、油壺と三宅島の間では、人妻の夫が参加するヨットレースがおこなわれていた。女を見失い、呆然と東京に戻った男の耳に飛び込む夫のヨットでのクルーの死亡事故、そして、男の家のすぐ近所で人妻の遺体が発見される。これらの点は結ばれるのか。鉄壁のアリバイ崩しに挑む本格推理「火と汐」。ほかに「証言の森」「種族同盟」(映像化作品「黒の奔流」原作)「山」の計四篇を収録。解説・大矢博子

感想・レビュー・書評

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  • 「黒の奔流」2024、BSテレ東放送
    八月十六日、京都〝大文字〟の夜。興奮にざわめく人混みに紛れて、一つの情事が進行していた。しかしその最中、人妻は送り火に見とれる男の前から姿を消した。
    同じ時刻、油壺と三宅島の間では、人妻の夫が参加するヨットレースがおこなわれていた。女を見失い、呆然と東京に戻った男の耳に飛び込む夫のヨットでのクルーの死亡事故、そして、男の家のすぐ近所で人妻の遺体が発見される。これらの点は結ばれるのか。
    鉄壁のアリバイ崩しに挑む本格推理「火と汐」。
    ほかに「証言の森」
    「種族同盟」(映像化作品「黒の奔流」原作)
    「山」の計四篇を収録。

  • 20240108
    アリバイトリック

  • 「火と汐」
    曽根晋吉(劇作家)
    芝村美弥子(曽根と不倫中に失踪)
    芝村
    上田俉郎(芝村のヨット仲間。レース中に死亡)

    神代刑事 
    東刑事

    「証言の森」
    青座村次(会社員。当事件の容疑者)
    青座和枝(村次の妻、自宅にて殺害される)
    山村政雄(荒井酒店の雇人。事件当日青座家に味噌を届けていた)
    秋野三郎(新聞配達員。事件当日も青座家に新聞を届けていた)

    沢橋豊三(所轄署の刑事。証拠品を青座家で発見したと主張)
    池上源蔵(元刑事。詐欺罪などで青座と同じ留置所にいた)

    「種族同盟」
    私(国選弁護士)
    岡橋由基子(事務所の助手。又不倫相手。)
    太田君(事務員)

    阿仁連平(婦女暴行致死罪の容疑者)



  • 「火と汐」京都の送り火の夜、突然姿を消した人妻。情事の相手の男は1人で東京に戻るが、待っていたものは男の近くで発見された女の死体だった。
    三宅島のヨットレースと京都の送り火が舞台のミステリーです。短編ですが、刑事の執念でのアリバイ崩しに挑むのが面白い。
    「証言の森」証言がニ転三転する中、真相はどうなのか。
    「種族同盟」無罪を勝ち取った国選弁護人のその後を描いた。
    「山」ひなびた温泉宿で出会った男と女の逆転の人生を描く。
    短編集だけど、清張さんしっかり読ませてくれます。読み終えた後の余韻がたまりません。
    8月13日読了。

  •  1967(昭和42)年から翌1968(昭和43)年に書かれた松本清張のミステリ系作品が4編入っている。
     表題作については、「ここまで手の込んだ計画で人を殺すやつなんているか?」という疑問の方が強い。あんまり遠大な計画だと、実施に当たって想定外のアクシデントが発生しやすく、成功率は著しく低くなると思う。
     巻末の「山」の方が良かった。前半は加害者や目撃者の視点を取ってドラマが展開され、殺人事件にまで至ると急に視点が変わり、刑事などの捜査の視点で進めらてゆくというこの手法、松本清張はかなり頻用しているが、この「刑事の視点」というのが、人間性を欠いてなんだか粛々と事務作業をしているかのような味気なさを私は感じ、この後半部が長い場合だとつまらなくなってしまう。が、本作は後半の探偵役がシロウトなので、その弊害が少なかった。
     こうしてみると松本清張はミステリにおいてとても即物的な書き方をする。もともとは文学的な興趣のあるものを書ける人だったのだが、ことエンターテイメントに突き進んでいくと叙述は薄くプロットだけが優先される。その際にプロット自体がスリリングな心的契機を含んでいると、読者の情動的ストリームが維持され、高まっていくことが出来るのだけれども、即物的な描写の連続が単に機械的に見えてしまう場合には、自分は退屈を感じるようだ。
     本書の4編は松本清張のミステリとしては中程度といったところか。

  • 50年以上前の作品であり別の国の話のようでもあるが、日本人の人間性が事件の根底にあり、日本の原型を感じさせる。

  • 「火と汐」不倫で京都旅行中の妻が、ヨットレースに参加中の夫によって絞殺される。そのトリックとは。 「証人の森」会社から帰ってみると妻の死体に遭遇。疑われる第一発見者の夫。そして、警察の自白強要によって殺人者に確定。しかし、戦況が激しくなり真犯人として名乗りをあえげてきたのが、近所の米配達の青年。「種族同盟」国選弁護人が手腕を発揮して無罪となった青年。しかし、その青年を自分の事務所に雇い入れて、事件の真相が明らかになる。「山」会社からの横領を逃れるために出奔したのが長野県の山間にある温泉地。中居女中と親密になり、山中で見つけたのが女性の死体そしてその犯人と思しき男性。東京に中居女中と移り住み、そこでその犯人である男性と偶然にも出会い、親しくなる。

  • 久しぶりに松本清張作品を拝読 時代背景が古いことによってトリックや生活感に違いはあるものの 黒い1点のシミが半紙に落ちてじわっと広がるような感覚はリアルでゾットします 細かな書き込みを追うことで刑事が靴底を減らしながら丹念に証拠をつかみ取る様子 事実確認にすべての時間を費やす弁護士の苦労など読者に体験させる清張の力に感服しました

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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