- Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167914691
作品紹介・あらすじ
舞台は文政13年(1830年)の京都。年若くして活花の名手と評判の高い少年僧・胤舜(いんしゅん)は、ある理由から父母と別れ、大覚寺で修行に励む。 「昔を忘れる花を活けてほしい」「亡くなった弟のような花を」「闇の中で花を活けよ」……次から次へと出される難題に、胤舜は、少年のまっすぐな心で挑んでいく。 歴史、能、和歌にまつわる、あるいは生まれたままの、さまざまな花の姿を追い求め、繊細な感受性を持つ少年僧が、母を想い、父と対決していくうちに成長をとげていく、美しい物語。
感想・レビュー・書評
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京都・大覚寺の胤舜は、感情を上手に表す事ができない少年僧であった。
師であり、未生流二代目である不濁斎広甫は、他者の為にはなを活ける修行を課す。
胤舜は、二年前に母親に去られた過去があった。
しかも、父親は、西ノ丸老中・水野忠邦。生まれたすぐに、父親からは、捨てられた。
父親の愛情を知らず育った胤舜。
「昔を忘れる花」
「弟の一周忌に、心の裡にある弟のような花」
「暗闇に咲く花」
「西行法師の桜」
「母上を守る花」
数々の課題を通じて、自身を取り巻く、世の悲喜交々を感じ受け止め、成長していく姿を描いた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かった
少年僧 胤舜が花を活けることを通して成長していく短編連作ストーリ
10作の短編からなり、それぞれの章で華道のお題が出されます。そこで明らかになる哀しい事実だったり、暖かい想いだったり..そんな経験を通して、胤舜が成長していきます。
さらに、胤舜の生まれにかかわる事件に巻き込まれる中、周りの人にも助けられ、母を想い、父と対決していく姿に心打たれます。
ぶっちゃけドラマ(実写)で見てみたい(笑)
お勧め -
活花の名手と評される大覚寺の少年僧胤舜が、華道の修業を通じて成長していく時代小説。
10篇からなり、それぞれに様々な花が生けられる。
白椿、蝋梅、山桜、山梔、萩、朝顔、酔芙蓉等々。
しかし、請われて活花を行ったがその人の命を救えず、師の広甫に「生きることに、たんと苦しめ。苦しんだことが心の滋養となって、心の花が咲く。自らの心に花を咲かせずして、ひとの心を打つ花は活けられぬ」と、未熟さを諭され、さらに精進する。
静かに活花の話が続くと思いきや、彼が老中水野忠邦の隠し子であることから、一転不穏な動きが蠢き始める。
史実とフィクションが融合されたこの小説は、著者が京都に居を移したその時期に書かれたとのことで、随所に京の四季折々の風景が挿入され、風雅な小説となっている。 -
言葉の美しい本でした。僧であり活け花で人の生き方や人生を表す胤舜の感性が伝わるような作品でした。活け花の深さを知る作品と同時にこの時代の人の心のありようが分かるような気がした。また、母である萩野と父である水野忠邦と難しい時代の家族のあり方のように思うと現代はどれほど自由な時代かを感じた。
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涙が止まらず、電車の中で困りました
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通勤時間を利用しても、読むのに二ヶ月以上かかってしまった。
個人的にこの時代があまり好みでないことと、優しく静かに過ぎる描写でどんどんと読み進められなかった。
ただ、主人公『胤舜』が活ける活花の描写について、表現力が誠実で活花っていいな、と興味を持てた。
あとは、胤舜の様々な状況での活花を通した成長も良かったかな。 -
江戸時代後期の京都を舞台に、古刹・大覚寺の少年僧にして、水野忠邦の落胤である胤舜が、類稀なる才でもって華道の道を究める様を描いた、連作時代小説。
寺での静かな暮らしから少しずつ世間を知り、人情の機微を学び、他人と交流し、誰かの心に添うためにこそ、花を活ける修行を通して、胤舜は成長してゆく。
全編、清しく静寂に満ちた雰囲気で、穏やかな胤舜の佇まいと、花の美しさが相俟って、品位を伴う筆致で描かれている。 -
なんという凛とした物語でしょう。花本来の美しさが目の前に映像として現れるようでした
胤舜だけでなく全ての人に物語があり人生があるのです
表現こそ違えど皆人を思いやる心を持っていることに気付かされました
胤舜がこれから歳を重ねどんな人の想いをどんな風に生けるのかもっと見てみたいと思った -
ひとは、なにをするにもそこに自分を見出せるほどの静かな情熱や想いが必要だと。
それは周りの成長をも促すものだと思いました。
良い本です。