13・67 下 (文春文庫 チ 12-3)

  • 文藝春秋
4.14
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915704

感想・レビュー・書評

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  • 読み応えのある良作
    素晴らしい

  • 上巻からどんどん時代を遡っていく。それによって香港を取り巻く環境がどれだけ複雑なのか、警察官の立ち位置がどう変化していったのか、わかってきたところで、最後の章。いやーまいったこれまた上巻から読み返さないとならない。めちゃくちゃ面白かった!

  • 最終第6話から最初の第1話に繋がる意外な仕掛けは見事です。

  • 文句なしの★5つ。
    チャイナ小説は初めて読みましたが、おもしろかった、いや、おもしろすぎました。

    香港を舞台にしたミステリーなのですが、
    最初の「黒と白のあいだの真実」で死亡するクワン刑事が主人公。
    2013年の事件を皮切りに、天眼とも言われる名推理を行う彼が若い警察官だった1967年まで順を追って遡る形式が取られています。

    どれも精度の高いミステリーとして楽しめますが、1967年の事件の最後の4行には驚かされました。
    こんな風に繋げるの!?と。

    イギリスの植民地だった時代まで遡るため、香港の歴史を知ることもでき、とても興味深く読むことができました。

    このおもしろさは、作者の腕だけではなく翻訳の上手さも理由の1つだと思います。
    翻訳されたミステリーってちょっと苦手だったのですが、イメージが覆りました。

    人におすすめしたい一冊です。
    出会えてよかった。

    2018年12冊目

  • 目次
    ・テミスの天秤(1989)
    ・借りた場所に(1977)
    ・借りた時間に(1967)

    この本は、自分で買うなら上下巻一気に、図書館で借りるなら単行本で読むべき本でした。
    最後まで読んだら最初の話を読み返し、いろいろ確かめたくなること必至です。
    上巻は、切れ者と言われたクワンとその愛弟子と言っていい部下のローの関係が細やかに書かれていました。
    何ならローの成長譚と言ってもいいほどに、ローはクワンの背中を見ながら立派な刑事になります。

    が、この下巻は、クワンがなぜ手段を選ばないほど非情に正義を貫くのか、いかにしてクワンという刑事ができたのかが書かれていました。

    『テミスの天秤』では、ローはまだ新人の刑事です。
    後に彼がクワンと再会した時に、人事評価が必ずしも良くないと自己分析していましたが、その理由は当時から彼が持ちえた人としての全うさです。
    クワンはそこを評価したのですね。
    そして作品として書かれていない部分で、クワンが検察官としての筋を通し、一つの事件を解決したことが、上巻を読んでいる読者にはわかる仕掛けになっています。

    『借りた時間に』は、クワンがまだ若く正直で真面目だけが取り柄だったころの話。
    事件は語り手の私とともにクワンが解決しますが、上司に忖度して万全を期さなかったため、幼い姉弟が爆発事故に巻き込まれてしまいます。
    そして私がクワンを糾弾するのです。
    「あなたの愚昧と頑迷のせいで、あのふたりは死んだ」
    「あなたが守りたいのはいったい、警察の看板なのか?それとも市民の安全なのか?」

    後のクワンに繋がる種は、こうしてまかれたのか…結構感動して本を置こうと思ったら最後の最後に明かされた驚愕の事実。
    最後の一行まで楽しめました。

    三作のどれもが良質の本格ミステリであり、そのどれにもクワンとの因縁を持つ人物が出てきます。
    だから、全体として見たらクワンという刑事の半生を描いたドラマのようでもあり、香港という街の激動の時代を描いたものともいえます。

    ”すこぶる技巧的(トリッキー)でいて人間ドラマは濃密な、掛け値なしの傑作だ”(解説より)

    控えめに言っても大満足でした。

  • 『娯楽』★★★☆☆ 6
    【詩情】★★★★★ 15
    【整合】★★★★☆ 12
    『意外』★★★★☆ 8
    「人物」★★★★☆ 4
    「可読」★★☆☆☆ 2
    「作家」★★★★★ 5
    【尖鋭】★★★★☆ 12
    『奥行』★★★★★ 10
    『印象』★★★★☆ 8

    《総合》82 A-

  • 2013年は、雨傘運動の前年
    2003年は、国家安全条例反対デモ
    1997年は、香港返還
    1989年は、天安門事件
    1977年は、文化大革命終結
    1967年は、文化大革命

    香港にとって大きな事件があり、香港警察も変わらざるを得なかったであろう状況ので中で、市民を守るため、体制に背いてでも、犯罪者を追い詰めるため知恵を絞る。名探偵クワンの警察人生と香港の反政府運動の歴史が重ねられる。

    最後に明かされたことは、安易な予想を裏切り、それぞれが激動の香港を知恵と努力で生きたのだと知らされる。

  • このミス海外編2018年版2位、本屋大賞翻訳小説部門2018年2位。連作中編集。日本の売れ筋警察小説っぽい。香港警察の生ける伝説、クワン警視が死ぬときに始まって、駆け出しの刑事の時まで時代をさかのぼりながらの6作が入ってる。論理的に推理とあっと言わせる意外な展開が心地良い。最後のやつは主役の人が前作にも関係してるみたいだけど、読み直すの面倒なのでイマイチわかってません。とても良くできた小説なんだけど、残念なことに、漢字の人名や地名がとても分かりにくく、読み進めるのはとてもしんどかった。ジャッキー・チェンの映画のような派手なカーチェイスとかもあって飽きさせない作りにはなってると思います。

  • 一言、主人公の超絶洞察力はまさに香港の杉下右京。

  • 第一章の安楽椅子探偵モノから一転、最後に香港映画ばりのカースタント、バイクアクションまで飛び出すとは想像し得なかった。終盤に来て、今作の肝は香港警察が社会変革と共に歩んだ歴史であることを再認識させられる。最終章ではクアンが正義の執行者となった理由が判明し、著者は民衆の為に警察が如何なる存在であるべきかを説く。クアンの生き様は香港史と共に『借りた時間に』というサブタイトルに集約されているかのよう。ロジックにどっぷり浸かった濃密な読書時間だったが、出来ればフロアの見取り図や大縮尺の地図を掲載して欲しかった…。

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著者プロフィール

●著者紹介
1975年生まれ。香港中文大学計算機学科卒。台湾推理作家協会の海外会員。2008年、短篇「ジャックと豆の木殺人事件」が台湾推理作家協会賞の最終候補となり、翌年「青髭公の密室」で同賞受賞。2011年『世界を売った男』で第2回島田荘司推理小説賞を受賞。2014年の連作中篇集『13・67』は台北国際ブックフェア大賞など複数の文学賞を受賞し、十数ヵ国で翻訳が進められ国際的な評価を受ける。2017年刊行の邦訳版(文藝春秋)も複数の賞に選ばれ、2020年刊行の邦訳の『網内人』(文藝春秋)とならび各ミステリランキングにランクインした。ほかの邦訳書に自選短篇集『ディオゲネス変奏曲』(早川書房)がある。

「2021年 『島田荘司選 日華ミステリーアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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