宗麟の海 (文春文庫 あ 32-8)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915735

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  • 題名の『宗麟の海』の「宗麟」とは、戦国大名の大友宗麟である。現在の大分県である豊後国を本拠地としていた。そして大分駅の辺りには、「旅の者よ!我が領国を観たか!」とでも言い出しそうな雰囲気を漂わせる大友宗麟の銅像が在った。
    加えて題名の「海」であるが、これは大友宗麟の人生が「海」と共に在ったかもしれないということを示唆しているように思う。
    大友宗麟は心臓に病気が在って、長時間の激しい運動のようなことはし悪いというような若殿として作中世界に登場している。健康上の些かの問題を抱えているが故に、自身の人生、自身の立場や役目、その他様々な事柄に関して思索的で、探求心が強い性格になっているような感でもある。
    大友宗麟は、ポルトガルとの交易や明国(中国大陸)との関係、国内での交易というような海に関連が深い事項と関わるのだが、敵対する勢力との抗争という中でも海を制する、海を利用するということに意を向けて行くこととなる。そういう意味で題名に「海」なのだと思った。
    大友宗麟は自身が文字どおりに軍勢の先頭に立って勇戦するということはしない。(それでも出陣の際は、ポルトガル人に贈られたアラブ種の大きな馬に、白く輝く甲冑姿で跨って現れるということはしている。)大友宗麟は、大友家の旗の下に集まった大軍勢の総帥として、戦いの全般の方針を構想し、構想に基づいて配下の将達に指示を与え、各将が役目を完遂することを助けるべく外交交渉や情報戦を展開させるのである。文字どおりに大友家の最盛期、絶頂期を「演出」ということになる訳だ。
    大友宗麟は、父と未だ幼かった末弟が謀略で殺害されてしまった<二階崩れ>という呼称で知られる混乱を収拾して行った後、豊前、筑前に勢力を持っていた周防、長門の大内家を「近攻遠交」を排除してしまうことに成功する。そして周防、長門を手中にして行く毛利家との抗争に入って行く。
    領国を護ろうとする大友家の戦いをプロデュースする総帥は大友宗麟であるのに対し、その領国を奪って傘下に収めようとする毛利家の戦いをプロデュースする総帥は老獪極まりない毛利元就である。あの手、この手と知恵と戦力を出し合っての抗争の場面は非常に面白い。
    この他、宣教師が「豊後国王の悪妻イザベラ」と伝えている奈多夫人こと弘子との挿話や、晩年に同居する女性ジュリアとの出会いや展開の挿話、「やや残念?」な息子達の挿話等、面白い箇所が本作には満載である。
    あらゆる手段を講じて領国を奪うべく侵入した毛利勢を、あらゆる手段を講じて跳ね返した大友宗麟であったが、そういう大きな仕事を成し遂げた他方で「全ての国を従がえる王となっても心が満たされるのか?」というようなことを想っているという辺り…興味深い。
    或いは本作は「大友宗麟?」という問いに答える作品として、永く読み継がれて行くように思える。そういうことも思うのだが、それ以上に、単純に本作は面白かった!!

  • これはGoogleマップか地図を片手に読むのが良いです。
    九州の地理に全然詳しくないので、〇〇港が九州地方サイドか中国地方サイドか分かりません。ですが分かったほうが断然、話が頭に入るので、地図が必要です。

    大友宗麟のピュアな一面が良かった。

  • 信長に先んじて海外貿易を行い、硝石、鉛を輸入、鉄砲隊を整備。強大な軍事力と知略で九州六ケ国を制覇。理想の王国を作ろうと夢に向かって駆け抜けた大友宗麟を描く。直木賞作家が新たな構想で挑む歴史小説!(e-honより)

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著者プロフィール

作家。1955年福岡県生まれ。久留米工業高等専門学校卒。東京の図書館司書を経て本格的な執筆活動に入る。1990年、『血の日本史』(新潮社)で単行本デビュー。『彷徨える帝』『関ヶ原連判状』『下天を謀る』(いずれも新潮社)、『信長燃ゆ』(日本経済新聞社)、『レオン氏郷』(PHP研究所)、『おんなの城』(文藝春秋)等、歴史小説の大作を次々に発表。2015年から徳川家康の一代記となる長編『家康』を連載開始。2005年に『天馬、翔ける』(新潮社)で中山義秀文学賞、2013年に『等伯』(日本経済新聞社)で直木賞を受賞。

「2023年 『司馬遼太郎『覇王の家』 2023年8月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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