飼う人 (文春文庫 ゆ 4-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167916268

作品紹介・あらすじ

ウーパールーパー、カエル、蛾、蝶と、ちょっと不思議な生き物を飼う人々が、いつしかその生き物たちに依存するかのごとく、不穏な領域に踏み込んでいく姿を描いた異色連作集。
全米図書賞受賞で話題の作家の最新作。


夫との生活に疲れた中年女は、家にいた毛虫に「トーマス」という名前をつけて飼うようになった。トーマスへの愛着が深まることで、なじんでいると思っていた夫のことが、いままでとは違って見えてくる。夫の本心とは何なのか。夫の好きなものは何か。夫は何に関心があるのか。夫は何も関心を持っていないかもしれない。じゃあ、わたしは夫の何に関心があるのか。何もないかもしれない。わたしは自分に対しても関心を持つことができない。どうしてこんなことになってしまったんだろう。何がいけなかったんだろう?
疲れた。ほんとうに疲れた……。中年女の心情をリアルに描く――「イボタガ」。
ウーパールーパーに「アポロ」という名前をつけたコンビニで働く青年の話――「ウーパールーパー」。
シングルマザーの母親との軋轢にもめげず、健気に生きていこうとする少年の話――「イエアメガエル」。
「トーマスは羽化しませんでした」という謎のメッセージと共に妻に去られた中年男の話――「ツマグロヒョウモン」。

感想・レビュー・書評

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  • 柳美里はなぜ「普通の人の普通の生活」をリアルに書こうと思ったのか(柳 美里) | 現代ビジネス | 講談社
    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/54316

    『飼う人』柳美里 | - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163907703
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167916268

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      河北抄(12/3):柳美里さんの小説『飼う人』にツマグロヒョ… | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
      https://...
      河北抄(12/3):柳美里さんの小説『飼う人』にツマグロヒョ… | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
      https://kahoku.news/articles/20211203khn000035.html
      2021/12/03
  • 読了しました。イボタガやウーパールーパー、イエアメガエルやツマグロヒョウモンなどの風変わりな生物を飼育している人々の話です。
    登場人物は皆リストラされてコンビニ勤務だったり結婚10年にして子供が出来なかったり、母子家庭だったりと生活に何かしら問題を抱えています。静かな世界で登場人物の息遣いだけが聞こえるような、静かで生々しい作品でした。重い話が多く読んだ後も暫く心にへばりついてるような、そんな話が多いです

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/755235

    いきなり漂う不穏な空気、気になって読んでしまいます!
    生き物を通して描かれる人間の本性…リアルです。

    美しくも虚ろな表情をした女性。
    意味深な表紙にも目を惹かれます。

  • 4編の内1話と最終話が対になっている。連作短編とあるが2話3話との繋がりは見つけられずである。 全体的に閉塞感があり、わずかに光が見えそうで見えない。どの主人公も死に近いところにいる気がした。死"が"近いのではなく、何かの拍子であっさり死を選びそうな脆さ。作中で飼われる生き物は一般的に"可愛い"と言われる生き物ではなく(最近はそうでもないか?)、登場人物も世話こそすれ積極的に愛情を注ぎ可愛がっていないようにも見えるが生き物たちの存在が彼らの脆さを支え現世に繋ぎ止めているように思えた。飼われる生き物はイボタガ・イエアメガエル(アロワナ・金魚)・ウーパールーパー・ツマグロヒョウモン。虫と両生類(と魚)。これが犬や猫や兎だったらまた物語は違った雰囲気になっていたのでは。 除染作業員の会話やTVコマーシャル等、物語自体の進行には関係ない描写が多くそれが生々しく逆に主人公らと世界との隔たりを色濃く感じさせた。

    1話目。トーマスはどこに行ってしまったんだろうね。 2話目。自分が愛着を持って働いている会社の業績がどんどん悪くなっていくのもリストラに合うのも会社を裏切るような真似をしてしまうのも読んでて辛かった。 3話目。岡ノ谷氏の解説にあるようなママ→僕→カエルへの依存は読み解けなかった。再読してみよう。 4話目。妻と蝶を重ねているのが切ない。夫側はこう思っていたのか。始めから相性の合わない夫婦だったのだろうな。

  • 「飼う」という行為によって、「人」や「生きる」と繋がっているように感じた。
    ラストの羽化して飛んでいく様が、僅かながらの希望に感じた。

  • 生き物を飼うとしても、一緒に過ごす生活の中で自分では重ね合わせないような感情が詰まった短編集。
    少し見えるような見えないような光や気付きを自分なりに想像して、重くなりそうな気持ちを休ませながら、割と順調に読了。

  • 何だろう、凄い「わかる!」って感じではないんだけど、読み終わっても時々思い出して味わっちゃう感じの短編。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/755235

    いきなり漂う不穏な空気、でも気になって読んでしまう。
    生き物を通して描かれた人間の本性がリアル。

  • 生き物を飼うとその生命力をそばで見ることができる。
    『飼う』理由は人さまざまで、他人に理解できるものばかりではないと思うけど、何かしらの心の葛藤を持っている人には希望を見つけることができる1つの手段となるのかもしれない。
    関係ないけど、何年も飼っているメダカのつがいが先日一緒の日に死んでしまった。
    でも、その数日後の朝。鉢の中には新たに生まれた針子(子メダカ)でいっぱいだった。
    とても穏やかな気持ちで1日過ごすことができた。

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著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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