初夏の訪問者 紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫 よ 31-10)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167917623

作品紹介・あらすじ

累計70万部突破、読者から圧倒的な支持を受ける人気シリーズ「紅雲町珈琲屋こよみ」、ほろ苦くも胸を打つ、待望の第8弾。

紅雲町でお草が営むコーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」では、近頃町にやってきた親切で物腰がスマートな男のことが話題になっていた。
ある日彼は小蔵屋を訪ね、お草に告げる。
「私は、良一なんです」
お草が婚家に残し、3歳で水の事故で亡くなった息子・良一。男はなんの目的で良一を騙るのか、それとも、あの子が生き返ったのか──?



小蔵屋の近所のもり寿司は、味が落ちたうえ、新興宗教や自己啓発セミナーと組んでの商売を始め、近頃評判が悪い。
そんな折、紅雲町に50歳前後の男が現れる。新規事業の調査のためと言い、短期でマンションに滞在しているが、親切で、清潔な雰囲気に「なんだかお草さんみたいだった」という客もいて、評判になっていた。
その男が、お草のもとを訪ねてきて、自分は息子の良一だと名乗る。
お草が一人で家を出た後、3歳で水の事故で亡くなったはずの息子、良一。
その男によると、じつは良一は助け出されたものの、父と後妻の間に子供が生まれて居場所がなくなり、女中だったキクの子として育てられたという。
そして、その証拠として、お草と別れた夫との間で交わされた手紙や思い出の品を取り出して見せる。
詐欺だと考えて冷たく男をあしらうものの、お草の心は千々に乱れる。
もし、あの子が生きていたのだとしたら? 
真相を確かめるために、お草は米沢にキクを訪ねる――。

嘘は、人生の禍となるが、ときに救いとなることもある。
心に明るい小さな光を灯す、初夏の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 紅雲町珈琲屋、草さんシリーズ。
     
    あらすじ
     紅雲町にやってきた、50代の男性。彼は草の息子、良一だという。離縁した家に残した息子は事故で亡くなったはずだ。しかし、彼は乳母のキクにこっそり引き取らたという。過去に自分が元夫に送った手紙、夫の私物まで持っていた。
     従業員の久美と彼氏の一ノ瀬。一ノ瀬は山男で自由に暮らしたいが、傾きかけている家業を手伝っている。久美に内緒で。

     今回は色々あったなー。息子かどうかで、過去の夫や婚家での嫌な思い出に心を揺さぶられる草。文筆家を目指していたが、兄弟のために筆を折ったバクサン。久美に内緒事が多い、いや前々から色々あった一ノ瀬。今作の登場人物森マンション所有の寿司屋夫妻。
     どの人も気を回しすぎじゃないのー?もっとストレートに尋ねるとかぶつかるとかした方がいいんじゃないのー?と思うところも多々あった。でも、昔からのつながりとか、過去の積み重ねとかでスパッと行かないことも多いのかな。主人公の草さんも年配で、行動もゆっくりだからな。

  • シリーズ8作目。紅雲町に最近やってきた親切でスマートと話題になっている男が、小蔵屋にやってきて、「私は良一なんです」と告げた。お草さんが婚家に残して、三歳で水の事故で亡くなった良一を名乗る男の目的は…?
    まさかの良一の登場に一体どうなるのかと…ちょっとほろ苦い真相が明らかになるけどスッキリです。あと宇佐木弟の勘違いも結果良い方向にいったので良かった(о´∀`о)

  • カチコチって時が行く音、来る音 過去と未来に揺れる音、突然良一を名乗る男性が草さんの前に現れた(良一は3歳の時死んでいる) 草は自分の過去を探ぐるように最上川方面に行く福島県か、山形県の方面と思う良一をめぐって、思いを募らせ、旅をする草さん。

  • こちらはシリーズ自体知らず本屋をぶらぶらしていたら見つけたもの。
    シリーズの中の一冊だけど、この巻だけ読んでも分かるお話。
    初夏の訪問者ということで梅雨の時期に買ったのだけど読み終わったのが冬だった。

    死んだはずの息子が訪ねてくる…ということで幽霊ものかなと思いながら読み進めた。
    読んでいくうち謎が分かりそんな育て方していいの?という気持ちになったが主人公の
    「命とは本当はもっと自由なものかもしれない 宇宙からの預かりものをしているだけのような」
    という考えに自分自身の生い立ちのコンプレックスも癒されていくように思った。

  • *紅雲町でお草が営むコーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」では、近頃町にやってきた親切で物腰がスマートな男のことが話題になっていた。ある日彼は小蔵屋を訪ね、お草に告げる。「私は、良一なんです」。お草が婚家に残し、3歳で水の事故で亡くなった息子・良一。男はなんの目的で良一を騙るのか、それとも、あの子が生き返ったのか──?ほろ苦くも胸を打つ、待望の第8弾*

    今作も様々な日常の小さな事件?が交差しながら進むので、忙しく文字を追っている間に読了。
    亡くなったはずの息子が訪ねてくるなんて、どれだけお草さんの心が乱れたことか…と、途中まではこちらの方が心臓が痛くなるような心持でしたが、最後は爽やかな締め方でホッ…

    以前は一巻くらい飛ばしても大丈夫でしたが、ここ何作かはシリーズらしく前作からの続きで物語が進むので、きちんと順序通りに読んで覚えておかないと、なんだっけな?と面白みが半減している傾向が。バクサンが筆を折った事情なんて遠い昔に斜め読みした記憶しかない…
    あと、第何弾かがもう少しわかりやすいと助かるのにな。シリーズが長く続いているので、ちょっとごちゃごちゃしてきた感があります。自分の中でも整理せねば。

  • お草さんのもとに三歳にして亡くした息子良一を名乗る男が現れる。疑心に揺られながら何度か会い話を聞く。お草さんの切ない過去、その男の生い立ちにため息が出た。人それぞれ人生を経て今があるのだとつくづく思う。そして、お草さんが営う小蔵屋だが試飲のコーヒーとちょっとした小間物や食器類を求めて訪れるお客さんへの心遣いが暖かい。久実さんも健気で一ノ瀬さんとのこと上手くいくといいなと思う。地元情報誌のお草さんのお悔やみ報道には回りはビックリ。心配する人たち、お草さんの人柄が伺える。

  • 草の前に表れた良一を名乗る男。
    誠実そうなこの男は、死んだはずの息子なのか、詐欺師なのか。
    騙す為の嘘、正しい道へと導く為の嘘、相手を思いやる為の嘘。
    嘘、とは言えないハプニングも最後にはありましたが(笑)

    戦争、アート、破綻した夫婦生活、失った息子。
    辛い過去が蘇るが、終盤、キクとの再会が胸を打った。

    「小蔵屋は、和食器とコーヒー豆だけのお店じゃないのよ。だから、愛されるの」
    久実ちゃん、良いこと言う。

    草、久実ちゃん、江子、石井、キク。
    女性達は逞しく、強い。

  • 真相が早く知りたくてジリジリしながら読み終わりました。お草さんがただお人好しってだけの主人公じゃなくて人間味があるところが良いですね。
    それにしても一冊読んでなかったのがあるのに気づいてショック。

  • アル中の人への声掛けが心に残りました。こんな何もかも噂筒抜けの田舎街に住むのはイヤかも…すみません

  • 草の生活がいちいち納得できるのは同年齢だからに決まってるけどこんなふうにはなれないよ!

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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