ラーゲリより愛を込めて (文春文庫 へ 1―5)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167919214

作品紹介・あらすじ

二宮和也主演映画『ラーゲリより愛を込めて』(2022年12月9日公開)、究極の愛を描く感動巨編映画、その見どころを余すところなく伝えるノベライズ版。

原作は講談社ノンフィクション賞・大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞した『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(辺見じゅん・著)。

第二次世界大戦で劣悪な環境のシベリア強制収容所に、捕虜として抑留された山本幡男一等兵。妻やまだ幼い4人の子供とは離れ離れになったまま、消息もつかめない。

栄養失調や過酷な労働作業で命を落とす者、自ら命を断つ者が出るなか、常に帰国する日を待ち、人間としての尊厳、生きる希望を持ち続けた山本。

絶望の状況において、収容所のひとすじの希望の光でありつづけた山本幡男を二宮和也が、夫の帰国を心から信じ11年間待ちつづけた妻モジミを北川景子が演じる。

メガホンをとるのは『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『64₋ロクヨン‐ 前編/後編』の瀬々敬久監督、脚本は『永遠の0』『糸』の林民夫。

涙なくしては読み進めることができない、驚きと感動で心が震わされる、究極の愛の実話。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに号泣しました。

    そして読み終わった今、
    「さよなら」という言葉の重みを
    しみじみと感じています。

  • 幸福とはなんだろう。
    不幸とはなんだろう。

    他者が他者の幸不幸を評するのもおこがましいとは思うが、その人の人生がどちらであるか、と見る時、その人生の締めくくり方を見て、この人は幸せなだったろうな、可哀想な人だったな、と思うことがある。

    けれど、その人生の途中を見れば、その通りとも限らない。

    何よりその人自身がどう感じているか。

    幸不幸は他者が測るものではない。

    それを踏まえて『山本さん』を思えば、どうだろう?

    どう捉えても不幸としか見えないが、本人はそう感じていただろうか?

    人は辛い時、苦しい時、自分のその闇の部分しか見えなくなる。
    どうしたって周りを見る余裕などなくなる。

    この人はどうして、地獄とも呼べる中にいながら『希望』を見失わないでいられたのだろうか。

    もっとたくさんの人に、多くの人に知ってほしい話だと思った。

  • どんな状況でも人は希望を持ち、思いやる気持を忘れずにいられるのか。
    過酷な環境でも、楽しみを見つけ、自分に何が出来るのかと思えるのか。
    もしかしたら人は満足して死に行くためには恵まれた環境の中ではなく与えられた場所でどれだけ自分に嘘をつかずに生きてこれたかによるのかもしれない。
    この本は実話なんですね。
    映画も機会があれば観ようと思います。

  • 195 人間を、「捕虜」という扱いやすく管理しやすいものに変えようという圧倒的な暴力の中で、ずっと人間であり続けた人。

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    感想

    ネタバレあるので映画まだ見てない方は読まない方がいいです!

    一昨年たまたま渋谷の蔦屋書店で見つけて買った本。
    映画『ラーゲリより愛を込めて』のノベライズ本です。

    1回読んで、ボロクソに泣いて、映画も見て、ボロクソに泣いて、去年末に再読。
    映像も好きだけど、ノベライズは文章で登場人物の気持ちが追えるのでより好きです。
    僕は登場人物の中だと相沢さんが一番好きです。松田さんもすごく人間らしくて好きです。

    なんか、感想を書こうとしても野暮な言葉になってしまいそうなので是非読んでください、とだけ。
    心からおすすめできます。
    プライムで映画も観れるのでそちらもぜひ。俳優陣の演技が本当に素晴らしいです。

    1つだけ。今の社会は非常に豊かで日本はすごく平和な国だと思います。
    そのせいか当たり前のハードルがすごく上がってしまっていて、家族の存在とか、平和な社会に対する感謝を抱きづらい環境だなと読んで感じました。
    ただ、その平和は時に脅かされる時があります。
    コロナ、震災、戦争、突如として日常が奪われてしまうことがあります。
    そのことは頭の片隅に置いておいた方がいいのかもしれない、と思いました。
    人間は失うことでしか気づけないものだと思います。
    当たり前の尊さを、見失わないように日々を過ごしていきたいです。難しいけど。

    あと、一度でいいから山本さんにお会いしてみたかったなあと思いました。人生観が変わりそう。
    あと、もし死にたい、と思い悩んでいる子がいたらこの本を渡したいです。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    ↓印象に残ったところ↓

    38 松田 ダモイかと思った。日本海だと思ったものがバイカル湖だったとわかった時から、松田は帰国のことを考えることをやめていた。それだけ落胆が大きかった。
    また無駄に希望を抱いて、叩き落とされることが怖かった。だったら、心を殺して、頭を低くして、一日一日生き延びることを考えた方がいい。そう思っていた。

    69 「美しい歌に、アメリカもロシアもありません」

    112 辛いことや理不尽なことがあると、山本はそれをどう俳句にしようか考えるようになった。そうすると、苦しみや苛立ちが自分からぽんと切り離されたように感じられて、少し楽になった。

    119 モジミは山本から教えてもらった「希望」という言葉が好きだと、顕一たちにも口癖のように言っていたけれど、顕一はこの言葉が嫌いになりつつあった。だらだらと希望を抱き続けるのはつらい。四年はあまりに長かった。
    「僕が母さんを助けるから。そう父さんと約束したから」

    134 …書いたものは新ちゃんの記憶に残ってるだろう。記憶に残っていればそれでいいんだ。頭の中で考えたことは、誰にも奪えないからね。

    146「…希望が必要なんです。生きるためには希望が必要なんだ。それがどんな小さなことでもです」

    176 日本に帰って、幸子と、そして、我が子の名前を呼ぶ日のことだけを考えて生きてきた。しかし、そんな日はもう来ない。子供の名前を呼ぶことも、もうできない。

    199 「生きてるだけじゃ駄目なんだ。ただ生きてるだけじゃ。それは生きていないのと同じなんだ。俺は卑怯者をやめる。山本さんのように生きるんだ」

    226 理不尽だと思った。子供の大事な場面に立ち会うこともできず、結果すら知ることができない。癌になったことは、仕方のないことだ。どうしようもない。しかし、山本には心配してくれる妻がいて、子供がいて、母がいる。それなのに、彼らと一目会うこともできず、遠い地で死んでいこうとしている。
    理不尽だった。
    それもこれも、戦争のせいだ。戦争の理不尽のせいだ。
    人を殺してはいけない。人の自由を奪ってはいけない。人の尊厳を冒してはならない。国籍や人種が違っても、ある程度、共通の認識を持っている「人間の当たり前」が、戦争となると、まるで通用しなくなる。ぐるんと反転しさえする。

    239 「私はね、自殺なんて考えたことありませんよ。こんな楽しい世の中なのに、なんで自分から死ななきゃならんのですか。生きていれば、必ず楽しいことがたくさんあるよ」
    自由を奪われ、厳しい労働を強いられ、過酷な懲罰を受けてなお、そんなことを言うのかと、その時はやはり正気ではないと半ば呆れていた。今思えば、あの言葉を山本はその生涯をかけて体現していた。生きることは楽しいのだと身をもって示していた。

    240 松田は、シベリアの凍土の下に眠る人たちのことを思い、そして、誰よりもダモイを信じ続けた男のことを思う。
    一緒に、この日を迎えたかった。そう心から思った。

    245 「海原の沖辺にともし漁る灯は明かしてともせ大和島見む」
    中略
    実際にこの光景を見たら、山本は何と言ったのだろうと新谷は思う。その隣にいたかった。一緒に、ダモイの日の歌を、口にしたかった。

    279 どういう状況におかれてもなお人間らしく生きるとはどういうことか。父は、それを多くの人々の記憶の中に遺した人でした。その生き方こそが、父が私に遺した未来でした」

  • 映画を観に行きたかったのになかなか行けずに今に至る。
    ノベライズと原作は絶対読むと決めていたから、まずノベライズ読めて良かった。

    山本さんのメンタルがすごい。
    私ならへこたれるはずだから。
    原作も必ずきちんと読みます。

  • 映画のノベライズ本。
    原作の「収容所から来た遺書」と読み比べることをお勧め。
    原作の方に詳しい感想を書いたので、ここでは簡単に。
    ノベライズなので、スラスラ読めるし、映画を観た後に読んだので、先の展開も読めてしまう。
    それでも戦争を知らない世代に、「シベリア抑留」と言う史実があったことを知ってもらうには、いい作品だと思う。
    分かっていても、ラストは泣ける。
    でも、映画はもっと泣ける!
    よくある戦争もののような派手な展開はないものの、映画は中盤からずっと泣きっぱなし。
    シベリアで辛い思いをした人々、生きていることを信じて11年待ち続けた家族の愛が心に沁みる。
    そして、やはり思う。
    何の罪もない人の命を奪う戦争はあってはならない。
    今、この世界にも戦争でバラバラになった家族がいることを忘れてはいけない。
    多分映画自体はウクライナ侵攻前に撮影されたものだと思うが、やはり旧ソ連の話だと思うと、今のロシアの悪行を憎いと思ってしまう。
    日本人全員の帰国まで11年引っ張った旧ソ連。
    ウクライナ侵攻の終わりは、どこにあるのだろう・・・

  •  映画が気になったので、見る前に読んでみようと思い購入。2日にかけて、4時間くらいで一気に読んでしまった。最後の方は、涙なしには読めない。嗚咽しながら読み進めたほど。
     学校で学ぶ戦争の知識以外にも、あらゆるところにそれぞれの戦争があることを思い知らされた。シベリア抑留など、史実として知ってはいたが、こんなにも過酷な状況があったのだとリアルに感じられた。終戦の日以降も、まだまだ戦争が続いていた人々がこんなにもいたことは知らなかったし、実感できなかったので、もっと勉強しないとなと思った。
     主人公の山本幡男さんの、生き方にも感銘を受けた。山本さんは、戦争と言う絶望の中、希望を失わない人。そして、周りをどんどん巻き込んで、ほぐしていく人。ここまで、自分を強く持てる人は凄い。私もこんな人を目指したいと思った。
     この本にも原作があり、事実に基づいたストーリーであることに驚く。同時に、やっぱり人ってこんな素敵なこと起こせる存在なんだなと、勇気づけられる。原作も読んでみたいし、映画も見たい。

    • 土瓶さん
      たこちゃんさん、こんばんは~^^
      映画観てきました。
      凄く良かったです。
      危なく涙するところでした。
      たこちゃんさん、こんばんは~^^
      映画観てきました。
      凄く良かったです。
      危なく涙するところでした。
      2022/12/24
  • 記憶したことは誰にも奪えない。4人の仲間が山本さんの遺書を記憶して家族に届けるって素晴らしい。道義を大切にという父からの遺書は子供たちの一生の財産。またもや記憶という誰にも奪えない記録で引き継がれていく。
    強制労働を強いられ、人間扱いされない中でも絶えず希望を持ち続ける山本さんの姿には生きるということを学ばせてもらった。
    家族が一緒にいられる幸せも本当にありがたいと思う。

  • 妻への手紙の冒頭
    ”妻よ、よくやった。実によくやった”
    から始まるのが本当に素敵。
    他の方たちがこれら一語一句を覚えるにあたって、何度山本さんを想って涙を流したんだろう。
    どっしりと心が晴れる、背を伸ばさずにはいられないお話でした。

  • これが現実とは…
    戦争の虚しさに言葉もない。
    ただ山本の生き方を胸に置こう。

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