日本蒙昧前史 (文春文庫 い 94-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167921460

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  • 昭和のある時期、蒙昧さにあふれた時代を物語史的に描かれる。ただその視点は一定ではなく神の視点だったり、当事者、現代から過去への眼差し、過去から現在への眼差しなどさまざまに変化する。句点で繋がれ途切れることなく展開される語りが心地よい。

  • この小説は戦後史を題材としたフィクションであると分かっていながら、本当は"そうであったかもしれない”と信じるほどの迫真があった。渦中の傍で見聞きし体験したかのような臨場感が、読点で繋いだ長い文章の語りで生まれ、さらにその語りの連なりが読んでいて心地いい。磯崎さんの文章が好きだ。
    グリコ・森永事件。角福戦争。ロッキード事件。日本初の五つ子誕生。大阪万博土地収用問題。三島の自決。目玉男事件。横井庄一の帰国。戦後史の連なりを語る当事者たちの声はもちろん作家の創作だが、読み終えるとどれも愛おしい。うんざりする蒙昧から時折見える時代と人間の姿に崇高な気分となった。

  • タイトルの意味が不明だ。内容も不思議な小説だ。数年前、同じ作者の「電車道」という小田急らしき私鉄沿線の開業とそれからの発展に関わる人々を描いた小説を読んだ。さまざまなエピソードが面白く一気に読めた。本作は、その私鉄沿線を戦後日本に置き換えたような趣で、取り上げられる戦後の大事件もうっすらと覚えている。事件ごとに様々な視点で細部が語られるが、そうだったのかという興味からあっという間に読了した。日本社会は「蒙昧」の時代を抜け出したのか気になる。

  • 【「蒙昧」の昭和の空気を描く谷崎潤一郎賞受賞作】大阪万博、ロッキード事件など、戦後を彩る事件をそれぞれの渦中の人物の視点で描く、芥川賞作家の最新長篇にして、文体の真骨頂。

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著者プロフィール

1965年生まれ。商社勤務の傍ら40歳を前に小説を書き始め、2007年に「肝心の子供」で第44回文藝賞受賞。2008年の「眼と太陽」(第139回芥川賞候補)、「世紀の発見」などを経て、2009年、「終の住処」で第141回芥川賞受賞。その他の著書に『赤の他人の瓜二つ』(講談社)がある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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