草原のサラ

  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (147ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198604301

作品紹介・あらすじ

「ぼくたち、もう一度、パパに会えるのかな」きびしい大自然を背景に家族の絆を描いた、優しい愛の物語。世界中の読者を魅了した「のっぽのサラ」の続編。パパと結婚するために、大草原にやってきたサラ。家族四人で幸せに暮らしていたのもつかの間、大草原は大かんばつにみまわれ、井戸の水もかれてしまいます。住み慣れた土地を捨てて、つぎつぎと出ていく近所の人々。ぎりぎりまでがんばるサラたちも、火事で大切な納屋を失い、とうとう海辺の故郷メイン州へ旅だつことになるのでした。パパをひとり、大草原に残して…。小学校中・高学年〜。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、"Sarah, plain and tall"(邦訳:『のっぽのサラ』)シリーズの
    2冊目である"Skylark"の翻訳書である。

    "Sarah, plain and tall"のシリーズは、
    "Skylark"、"Caleb's Story"、
    "More Perfect than the Moon"、"Grandfather's Dance"と続くが、
    翻訳されているのは、『のっぽのサラ』と『草原のサラ』のみである。

    『のっぽのサラ』で、アンナとケイレブのパパの
    花嫁募集の新聞広告に手紙をくれてやってきたサラが、
    パパと結婚するところから、本書は始まる。

    パパ(ジェイコブ)、サラ、アンナ、ケイレブで
    一緒に記念撮影をするところが微笑ましい。

    こうして幸せな生活がはじまるかに見えた。

    家族は信頼しあって幸せだったのだが、
    不吉な予兆は結婚式の前から既にあった。

    大草原は、ずっと雨が降っていなかったのである。

    まだ幼いケイレブは、まだ雨が降らなかったら困るということを知らない。

    率直にそれをパパに尋ねる。

    パパは、困るけれどもなんとかやっていける、
    いつだってなんとかやってきたと答える。

    サラが、もしここから出て行くことになったらと心配するが、
    パパはまったくそんなことは思っていない。

      「ぜったいに出ていったりしないよ、サラ」

      「わたしたちはここで生まれたんだ。

      この土に、わたしたちの名前が書いてあるんだよ」

    この「土地に名前が書いてある」という言葉は、
    本書のストーリーの核となる言葉の一つである。

    このパパの言葉を聞いたケイレブの行動が微笑ましい。

    「サラは、ここで生まれたんじゃないよ」と言いながらも、
    小枝を拾ってきて、サラの名前を綴ろうとするのだ。

    SARAになっていて、最後のHが落ちているんだけどね。

    (翻訳書では、ここをサウと書いて示した。翻訳の難しいところだ。)

    ケイレブは事実をそのまんま言っているのだが、本質を突いてもいる。

    サラはまだ心からここの土地の者にはなっていないのだ。

    メイン州の家族からの手紙に、
    午後になるとほとんど毎日のように雨が降ると書いてあったのだが、
    それをみんなの前で音読できなかったり、複雑な思いを抱えるサラ。

    雨はまったく降らず、井戸が枯れたり、山火事が起こったりする。

    とうとうこの土地を捨ててよそに行く家族も出てくる。

    ある日、サラはとうとう言ってしまうのだ。

      「わたし、ここの土地、だいっきらい」

      「わたしには、ここを好きになる義務なんか、ないんですからね、
      マシューやジェイコブみたいに。

      ふたりとも、この土地に自分のすべてを捧げたのよ。
      
      なにもかもありったけ! 

      それなのに、この土地はなんにも返してくれないじゃないの」

      「いつかジェイコブがこういったの。

      この土に自分の名前が書いてあるんだって。

      でも、わたしの名前は書いてないわ。ぜったいに!」

    それを聞いたマギーおばさんはこのように言ったのだ。

      「あなたは、草原のヒバリみたいね」

      「ヒバリは、大地のずっと上のほうで自分の歌をうたって、
      ほかの鳥に自分がどこにいるか知らせるの。

      それから、まっしぐらに地面に下りて、巣を作るのよ。

      でも、あなたはまだ地面に下りてきてないんだわ、サラ」

    本書の原題"skylark"はここから来ているのである。

    雨の降らない大草原で、とうとう家族の納屋が山火事で燃えてしまう。

    ジェイコブは、自分ひとりが残り、
    雨が降るまで、サラ、アンナ、ケイレブを、
    サラの実家に置いてもらうことにするのだが・・・。

    この苦難を乗り越え、Skylark(ヒバリ)に象徴される性格のサラは
    地上に降り立つのか。

    これが本書の核となる。

    もうひとつ、私が好きなエピソードは、
    起こった出来事を語り聞かせてもらうのが好きなアンナとケイレブが、
    サラが来るようになったいきさつを尋ねているところだ。

      「サラもそうやて、ここに来たんだものね。

      メイン州からパパと結婚するために、来たんだよね」

      「そうね。そうだったわね」

      「それで、ぼくたちが大好きになったんだよね」

      「そのとおりよ。はじめにみんなの手紙が大好きになって、
      それから、あなたたちが大好きになったの」

      「パパの手紙も好きになったの? パパに会う前から?」

      「そうよ、パパの手紙が大好きになったの」

      「パパの手紙の、行と行のあいだに見えたものが、いちばん気に入ったの」

      「行と行のあいだに、なにが見えたの?」

      「パパの生き方」

      「それが、行と行のあいだに見えたものよ」

    これはきっと「本読み」なら覚えがあるはずだ。

    出会ったことのない、あるいは、
    リアルには存在しない登場人物たちの生き方を
    行間に見て、彼らを愛するのだから。

    翻訳書2冊を読んだことで、
    原書5冊シリーズを多読で読んでいたときには見えなかった彩が見えてきた。

    これは、英語の字幕を必死に読んで見た作品を、日本語字幕で見て、
    もう1回英語字幕に戻してみようとするときと同じ心境かもしれない。

    英語多読を再出発しようという気持ち、
    本に限らず映像などの英語の作品にもっと触れようという気持ち、
    様々なものが呼び起こされたようだ。

  • 文句なし星5つ
    素晴らしい。短い文の中に、見えない行間にも言葉が溢れている。
    訳者あとがきに、サラの物語を「たくさんの言葉よりも雄弁な沈黙と、豊かでいて単純というふたつの矛盾した要素を持った本」と評された文章を読んだとのことがある。そしてそこに、もろくて強い、をプラスしたいとのこと。正に児童書として簡潔な中に物語があり、スリルや深い悲しみ、お別れや再び出会える喜び、と豊かな表現に溢れている。

    今回は大草原の旱魃により近所の仲間、家族がバラバラになってしまう。雨を待ちわびて柵にコップを置く、とても可愛らしい。
    アザラシちゃんが子猫を産んだり、サラには、新しい命が宿っていたり。夢があってとても良い話。

  • のっぽのサラと合わせて一冊でもいいかな。

  • 「のっぽのサラ」の続編。
    パパと結婚したサラ。
    「弟のケイレブはうれしくって、興奮しすぎて、わっと泣き出してしまいました。
    みんなとっても幸せでした」
    という、アンナの日記の記述から始まります。
    幸せな場面から始まるのですが、草原には雨が降らず、水が涸れていきます。
    とうとう、草原を出なければならなくなったサラたちは、サラの故郷へ向かいます。
    厳しい自然を描きつつも、そこでしっかりと築かれた家族の絆や、人の優しさがあふれ出てくる素晴らしい物語でした。

  • 『のっぽのサラ』の続編。乾燥した草原地帯の生活できない過酷さは伝わるものの、前作ほどの魅力はない。この後も続編が出ているが、邦訳されていないのはやはりパワーダウンが否めないからだろう。
    悪くはないが、前作を読んでいないとつまらないのではないか。

  • 読んでいるだけで日照りの乾燥した空気が伝わってきて、のどが乾いてきます。大自然の中で生きるって大変。個人的には『のっぽのサラ』の方が好きでした。

  • まだ、ほんの子どもの頃に読んだ。
    「涙が溢れないように一生懸命目を見開かなくてはならなかったおねえちゃん」の事をよく覚えている。
    どこかもの寂しい、黄金色の草原を思う。
    この本を読むと、いろいろを思い出す。

  • 2005

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