猫の帰還

  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198609115

作品紹介・あらすじ

1940年春。空軍パイロット、ジェフリーの出征に伴い、妻のフローリーは飼い猫ロード・ゴートを連れて田舎に疎開した。だが田舎の家になじめないロード・ゴートは、不思議な第六感に導かれ、ジェフリーを求めて旅を始めた。転々と居場所が変わる主人を追って、猫は、さまざまな人に出会い、飼われながら旅を続けていく。夫の戦死に絶望する若い未亡人、軍隊こそわが居場所だと誇る軍曹、住み慣れた古い街が空襲で炎上し途方に暮れる老人、黒猫は幸運を運んでくれると固く信じる若い兵士…戦争によって変わってしまった普通の人々の暮らし、その苦しみと、厳しい日々にも挫けない勇気とが、猫の旅を通して鮮やかに浮かび上がる。そしてジェフリーもまた、「戦争という暗いトンネル」の中で、変わってしまっていた。だが、最後にただ一つ変わらなかったものは…?イギリスの戦争文学の第一人者ウェストールが描く、忘れがたい印象を残す物語。イギリス・スマーティー賞受賞作。十代以上。

感想・レビュー・書評

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  • 私には、おもしろかったとは言えない。

    猫のロード・ゴートのとてつもないロード。それも戦時下の。

    空軍パイロットの主人の後を追い、疎開先の気に触る喧騒から逃れるように旅する黒猫ロード・ゴート。
    でもその旅は、あまりにも人々の恐怖の匂いがつきまとっていた。

    …凄まじいストーリーテリング。飼い主のジェフリーと、残された妻フローリーだけでなく、
    猫が各地で出会う、餌とあたたかな屋根を与えてくれる、猫好きなしとたちの物語があった。

    監視所に一人で働くストーカー、兵たちのために、家を貸し、食事の世話をするスマイリー夫人、そしてスミス軍曹。。
    お腹に子をどもをはらんだロード・ゴートが目指した馬屋と、荷馬車屋のオリー。このオリーとの日々は、戦争の悲惨さを本当に物語っていた。村が空襲を受け、焼け野原と化してしまう。荷馬車を引いて、いつしか避難してきた人々を連れて歩いたあの日々、何百人という人々を、村外れの農場に住まわせたオリー爺さん。
    子猫のうち、一番身体の大きい子どもだけを連れて、北へ旅した。夫が戦死し、生きる気力もなかった作家のスーザン。
    スーザンの元に子猫をおいて、また主人の匂いを求めたロード・ゴートは、不発だんに吹き飛ばされ、爆撃機乗りの飛行機で暖をとる。そしてトミーの膝の上で、なんとドイツ軍の空軍を撃ち落とす手伝いまで…

    行く先々て、黒猫は幸運をもたらすと歓迎されるが、ロード・ゴートはただただ、愛する人の膝を探し旅しただけ。。

    猫が去る時には、死の影が必ずあるのです。計り知れないほどの人々の死が。
    それでも、彼女の強さになんとか旅を続けたけれど、
    わたしは本当にこの本がおもしろいとは言えないし、できれば二度とこれを読まずに済む世界にいたい。。

  • 飼い主を探して遠い道のりを旅をする。
    先々でいるんな人と出会っていく。
    幸運の黒猫。

  • 擬人化され過ぎない猫の表現が何といっても良い。人間の思惑とは別にどこまでも自分の欲求で、とどまったり歩き出したりする猫の姿は、これぞ猫!と思える。

  • 本格派旅猫日記。擬人化されない猫の描写から猫への敬愛の念があふれている。

    猫の目を通して世界大戦下の英国の「日常」がオムニバス形式で切り取られていくロードムービー。ウェストールの他の作品同様、とりあげる素材一つ一つは現実の重い手触りがあるので、読み進めるのが時に苦しくなるが、猫は勝手気ままに旅を続けていくところが何とも飄々として見事。そして時代や土地を超越して胸に
    せまってくるほど鮮やかだ。

    もし映像化できたら、本以上に魅力が伝わるのかも・・

  • 猫の視線からww2の暗い時代を眺めている。

  • 原文Blitzcat。Blitzは、ナチスの電撃戦→英国では、ナチスによる英国空爆を指すようである。時代は1940ダンケルク撤退の頃~1941年。猫は空軍に召集された飼い主を捜し求め、イングランド中(最後にはフランス~ポルトガル)を旅し、そこで沢山の別の人間に飼われるが、この人間たちが、それぞれ色々な形で戦争で大切な人・財産を失ったり、困難を強いられている。猫の視線を通して、戦争中の普通のイングランド人の生活が描かれている。暗い時代の話ではあるが、猫が大切なものを失った人間に生きる希望を与えていく描写に心が温まり、何度も読み返したい1冊になった。

  • ヤングアダルトコーナーにあった本だけど、大人向けな気もする…?

    軍曹とスマイリー夫人のつかの間の愛と、老馬車屋・オリーが難民達のモーゼになる話が素敵だった。

  • 第二次世界大戦中、イギリスがドイツに劣勢だった頃の物語であり、放浪の物語という点で『海辺の王国』に並ぶ作品だと思う。こちらが先に書かれている。
    ウェストール初心者には『海辺』をおすすめする。読みやすい。少年が語る物語だから。こちらは猫が主人公とはいえ、安易に語らせたりはしない。より読解力を要する。
    これを小六の推薦図書にしている教科書もあるけど、『海辺の王国』が教師に嫌われるのは、性行為を暗示する描写があるため。
    ゴート卿という戦争の英雄の名をつけられた雌猫は猫らしい賢さと愛情とクールさを併せ持つ最高にかっこいい猫。
    猫にわかりやすさを求めない人にぴったり。

  • 主人を探してさすらう猫が、第二次世界大戦、ダンケルクでの敗戦後、ドイツの侵入に怯えるイギリスでいろいろな人間たちと出会う。
    戦争が、普段の日常生活を変えていくさまを豊かな切り口で描いていく。
    日常生活を送る市民と非日常そのものである戦争が邂逅するすぐれた小説。ただし短篇集なのでちょっと展開が急かな。軍隊が戦争で恐怖や無秩序をもたらすだけでなく、秩序と救済をもたらす場面も出てくるのがリアルな戦時体制という感じ。

  • 実は、この作品が気になってる(長らく読めてませんが)、、、

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    http://www.tokuma.jp/kodomonohon/jbookinfo?isbn=9784198609115

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著者プロフィール

1929~1993.英国を代表する児童文学作家の一人。「かかし」(徳間書店)などでカーネギー賞を2回、「海辺の王国」(徳間書店)でカーネギー賞を受賞。

「2014年 『遠い日の呼び声 ウェストール短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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