イノセンス創作ノート 人形・建築・身体の旅+対談

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198618308

作品紹介・あらすじ

人間は何故、自分の似姿を造ろうとするのか。養老孟司、四谷シモン、鈴木敏夫3氏との対談も収録。

感想・レビュー・書評

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  •  僕たちの身体は喪失しつつある…と押井守が言ってた。

     そもそも身体の喪失というのは、身体に広がる感覚が退化していってるのではないか?ということです。

     以前哲子の部屋を見ていたときに、大山のぶ代が、最近の人は歩いてて他の人とよくぶつかる。昔はどんなに人が歩いていてもぶつからないのが粋だった…みたいな事を言っていたが、まさにこれは身体の喪失だと思う。今の人は自分の身体をうまく扱えなくなっているんじゃないかということです。(もちろん僕も含めて)

     そのかわり感覚は、無限に広がっている。

     “個体が作り上げたものもまた、その個体同様に遺伝子の表現系である”イノセンスに出てくる言葉ですが、これはそんな事を表しています。感覚は身体をこえて、人間が使う道具にまで広がっているのです。

     そして都市でさえも、それは人間の身体の一つである。そう押井守は言います。

     “皮膚とは延長された脳だ。唯一他人にさわれる脳がここなのだ。そして水は皮膚を遮断するのではない、限りなく延長する。”赤坂真理『ヴァイブレータ』

     身体が限りなく延長される感覚がそこにある一方、自分の身体に対する感覚が薄くなる。

     まさに押井守監督が『イノセンス』『攻殻機動隊』『アヴァロン』で取り上げたSFのサイバーパンクがその代表格ではないでしょうか。インターネットに直接脳(電脳)からつながる事によって自分という存在が無限に広がる感覚を持つ。

     そして押守守監督は身体を喪失することはしかたがないといいます。身体を失ったら失ったなりの生き方があると。

  • 蔵書整理で手放すので、再び出会い読む日もあるか

  • 2020/12/3購入

  •  イノセンスを知るためのエッセンスが書かれている。ロケハンの話が面白い。押井守は映画を作るのに様々なことを考えていることが分かる。
     GRMの話では、甲冑に対する熱い想いが込められていて、アニメの便利なところを通して実写を作りたいというとてつもない話が書かれている。ハリウッドに対抗できる映画を、日本の監督が撮るなんて最高だ。いつか実現してほしい。アメリカを真似する映画ばかりでは品がない。
     イノセンスは、ストーリーはそこまで難しくないが、情報量が多すぎて何を伝えたいのかが分かりにくい作品ではある。この本を読んで、押井守が思う身体や人形や建築のことが分かると、イノセンスも分かるようになるだろう。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 押井の旅ノート……決して本腰を入れて書かれた文章ではない。
    本の構成自体も不格好だし。
    しかし語られていることは、あらためて目を見張ることが多い。
    特に感心したのは。

    ・人形や身体については当然のこととして。
    ・風景を近景、中景、遠景にわけ、それに映画の三要素キャラクター、世界観、物語を振り分ける。
    ・すでに誰もがサイボーグで、建築や都市を身体の延長とみなす。

    宣伝本としての機能も果たし、しっかりした内容もある。

  • やや研究用。

  • 押井さんって…むずかしいこと考えてるんですね…とても面白い考え方だと思うし、哲学書を読むような充実感もあり、はたまた「ハリウッドとの映画的戦争に勝つにはこうするべき」という意見には激しく賛同するところです。しかし、いかんせんこれを映画でやるのは難しすぎる(泪)っていうかエンターティメントにどうやって変換するのか…そういう考え方こそが押井監督の一番憎むものだとは思いますが。映画の一般人の評価が概ね「つまらない」「わからない」というのを考えると、いろんなことに行き詰まりますね…しかし日本人というのは「考える」ということにおいて人類を牽引しているのだはないかと思ってしまったりするわけです。だから戦争に勝てないのか、な?

  • 0801発表資料「アニメーションの演出論」参考文献

  • 「人間を語る言葉を考えると、部分を描写する語彙はやたら豊富であるのに、
    その全体のイメージを語る言葉は恐ろしく少なく、そして概ね類型だったり
    抽象的だったりするのは、これは明らかな根拠なり理由なりがあるに違いあ
    りません。具体的な人間はもちろん部分集合などであるわけがなく、常に総
    体として存在するのに、僕らの文化はそれを直接に語る言葉を持たなかった
    ―つまり必要としなかった、その最大の理由は何でしょうか。
    それは、人間の身体を語ろうとする主体それ自身が先験的存在であり、自覚
    的に存在し得ないからなのです。つまり自分の身体を含む自己認識がきわめ
    て曖昧であり、それゆえに他者を含む世界認識はさらにデタラメだからだ。
    身体というものは誰にとっても、それこそ「幻影の身体」であり、「陰影と
    してのみ存在する身体」であり、語ることが可能なのは常にその細部(ディ
    ティール)だけなのだということになります。」

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著者プロフィール

映画監督、作家。1951年、東京都大田区生まれ。
竜の子プロダクション、スタジオぴえろを経てフリーに。主な監督作品に『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(84)『天使のたまご』(85)『機動警察パトレイバー the Movie』(89)『機動警察パトレイバー2 the Movie』(93)『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95)。『イノセンス』(04)がカンヌ国際映画祭、『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(08)がヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品。実写映画も多数監督し、著書多数。2016年、ウィンザー・マッケイ賞を受賞。

「2024年 『鈴木敏夫×押井守 対談集 されどわれらが日々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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