- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198620189
作品紹介・あらすじ
縄文土器から現代のアニメーションまでを含めた日本美術史の全てを網羅。そこに、未来を考える大きなヒントがある。
感想・レビュー・書評
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「日本文化」をまとまって理解したいときに読みたい本。特に茶の湯文化に凝縮されるという日本文化の文法を通して種々の文化表現を見ると、なるほど共通点が見えてくる。ただしこれを発展させて「だから日本文化はこうあるべきだ」と主張すると純粋主義者にもなりかねないので、日本各地域に文化の多様性があることを踏まえて読むのがいいのかもしれない。
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該博な知識を縦横に展開して日本の美を語ってくれる。一年に一回は読みたい本。
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ジブリの鈴木敏夫氏の推薦になっていたので読んでみた。
縄文時代の土器から明治の高橋由一まで、日本の美術について網羅的な考察を読める。また、その背景となった仏教、茶の湯、キリスト教についても簡潔かつ深く言及されていて目から鱗が落ちるようなところがいくつもあった。
読み終わった時、本当にすごい本を読んだなという感慨に包まれる。
最後の加藤氏と高畑勲との対談もすごかった。能のような仮面劇がアニメーションのルーツだという高畑氏の説も大変面白かった。
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加藤周一が語る日本の美術史と評論。図版も美しく勉強になった。でもこの分野、まだ自分に見る目がない、、正直よく判らない、、
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日本文化の特徴は、此岸性・集団主義・部分主義・現在主義・感覚文化という5つに集約されるという。 欣求浄土、厭離穢土を法然が説いたことを例外として、日本は、いまここを重要視する傾向にある。西洋圏では過去・未来・現在という時間の連続性のなかで生きている。これは神の概念が違うからである。死後救われるため、また将来救われるために未来を思う。桂離宮にみられれうように、部分の蓄積が全体をなす。したがって、非対称性の建築物が多い。他方西洋では全体から部分をつくるため対照的である。これは理性の優位というギリシャ哲学の流れのなかで生まれた文化であろう。日本では自然との調和を重んじているのである。まさに柔よく剛を制すの文化でなのである。 ジブリの高畑勲との対談も面白かった。人形浄瑠璃・仮面劇の延長としてのアニメーション・絵巻物とアニメーションの関係についての考察が興味深い。仮面劇は状況劇である。役者そのものの個性を極力排することで、その状況そのものに深く観客が入り込むことができる。また自分自身との同化を可能にするのである。アニメの主人公も多くの場合、状況に巻き込まれることによって主人公が変わるという構造である。これはジャンヌダルクに見られるように、典型的な英雄の構造である。ただの田舎娘が神の啓示によって非凡なものになるのである。潜在的には誰でも英雄たりえるのだ。という共通了解が生まれることになる。これが英雄の物語が多くの人を惹きつける要因のひとつであろう。
絵巻物とアニメーションについて、絵巻物は多くの場面が非連続的である。いまここで起こっていることを表現している。ある一場面だけを切り取ってそれでも成立しているのだ。すべてを広げて眺めることを絵巻物は想定していない。アニメも同様に、全場面を同時にみることはできない。その場その場のできごとの連続がアニメという形式を成立させているからだ。 -
12/6付けのmackinchanさんの『真面目な冗談』の記述を拝見して初めて知りました。12月5日、89歳で身罷ったことを。
私も、現存する知識人の中でも飛びきり・ずば抜けた方だったと思います。
最初に読んだのは小学3年の時『頭の回転をよくする読書術』でしたが、『羊の歌 正・続』はもとより『1946・文学的考察』や『日本文学史序説』に強く惹かれた私は、こともあろうに無謀にも、3年前に平凡社版の24巻の著作集を購入して読み続けていますが、悪戦苦闘しています。その幅広い教養に基づく深い分析力に、まるで歯が立たないことがしょっちゅうあります。
この本は、日本文化を美術史的に分析することによって、すこぶる斬新な視点・発見を展開するというワクワクする本で、未来を展望する深い洞察力が潜んでいます。
疲れた時に読んで癒され、うれしい時に読んで益々気分爽快になり、悲しい時・苦しい時に読んで喝破され励まされるという風に、常に身近に肌身離さずそばに置いている、言ってみれば座右の書、みたいな存在になってきている本です。
それから、この本のビジュアル化されたDVD7枚組のボックスセットも出ています。1987年~88年にかけてNHKで放送されたもので、仏像とか様々な美術品の映像が見られて、こっちも好きで、もう何十回見たか数えられません。
5,6年前に4時間近くの対談で話されているのを見たことがありますが、とても80歳を超えた人とは思えない、エネルギッシュな当意即妙で明快な論断に、びっくり仰天したものでした。
高齢になっても、人はこれほどまでに高い質的な知性を持って生きることができるのだ、ということを、強く実感させてもらいました。
そして何より、ただの著作家でなく、護憲活動をはじめ様々な社会的行動をされてきたこと。そのまま黙って澄ましていれば超優秀な御用学者にもなれたものを、棒に振って反体制・反権力の立場を貫かれたことを忘れてはいけないと思います。
さて、これから、只今生存中の私たちは、何を指標に・誰を規範として、この先、生きてゆけばいいのでしょうか?
最も尖鋭な政治思想や経済理論や文明論、あるいは世界的視野から現在と未来を展望するエートスを構築・獲得するべく闘っている人たちで、私が現在注目して、その軌跡を追い続け・読み続けている人たちは・・
鶴見俊輔
山口昌男
山崎正和
湯浅赳夫
佐伯啓思
いいだもも
岩井克人
花崎皋平
松岡正剛
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あっ、そうだ、とりわけ松岡正剛には、得意の編集術で最新鋭のテーゼをまとめて示してほしいと思います。