傀儡に非ず (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198641245

作品紹介・あらすじ

裏切りと欺きが繰り返される戦乱の世。天下統一を目指し勇将たちが生死をかけてしのぎをけずるなかにあって、荒木村重の存在は異彩を放っていた。その類まれな知略と胆力は、戦国の雄・織田信長をも惹き付けた。信長の膝下でさらに権勢を拡げる村重。しかし突如として謀叛を企てる。なぜ村重は勝ち目のない戦いを選んだのか。そこには意外な真実が――。合戦に次ぐ合戦。その狭間で織りなされる人間模様。上田秀人が描く、怒涛の戦国絵巻。

感想・レビュー・書評

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  • 荒木村重の生涯。摂津の池田氏の家臣であったが、裏切り、寝返りを繰り返す。
    織田信長の軍門に降るが、自らの手を汚さずに、勢力を拡大しようとする織田信長に対し、荒木村重は最後には、妻子を殺し、他人の命を欲しいままにする織田信長に対し、吾はおまえの傀儡に非ずと、織田信長の言いなりになりはせず、抵抗をする。
    生き延びた荒木村重は、最後には、傀儡使いの織田信長が人形に裏切られて死んだ事をみて、武人としての生涯を終えて、文化人として生き抜いていく事になる。

  • 2021.8.30完了
    実にテンポがいい。これは読みやすい。登場人物も必要以上に多くなく分かりやすい。有岡城包囲の最後の場面とか村重が落ち延びたあたりは随分とあっさりして呆気ないけど、淡々とした文章と表現はオレ好みだった。

  • 織田信長って人は色々な評判がありますよね。

  • 大河の官兵衛での村重しか知らなかったので、この村重の裏切りがびっくり。お調子者で上手く立ち振る舞ってたのに急に裏切ったという印象だったのに頭の先から足の先まで戦国武将だった。歴史って…

  • 戦国時代。織田信長に使えた摂津の小大名、池田村重の物語。領土を守るため、織田信長の理不尽な要求に応えて来たが、足利将軍、義満(だっけ?)の暗殺を命令され、叶えられずとうとう、織田信長に一族を殺される。
    なんとも厳しい世界。
    歴史の中では、結構埋もれがちな、小大名(細川とか、六角とか)の物語も面白い。それぞれそれなりの力がありながら、圧倒的な力に負ける。服従するか、反抗するか?間が無いのがつらい。

  • 戦国時代の武将、荒木村重が主人公である歴史小説です。戦国時代には多くの有名な大名いる中で、この本を読むまでは、荒木村重という名前しか知りませんでした。

    時代背景は、織田信長が尾張を統一して、その周りの国も統一して大きくなり始めた頃になります。私達の知っているのは最終的に戦国時代を残ることができた大名ばかりですが、その大名のハザマで、中小の大名はどの大名につくかを真剣に考えています。その中での下剋上なのですね。この本を読んで、下剋上や今まで仕えていた殿様を追放するのも理解できました。

    以下は気になったポイントです。

    ・二千貫とは、米で四千石となり、兵を二百人ほど抱えていることになる(p16)

    ・戦況が悪くなれば、足軽は逃げる。戦のたびに領地からかり出される百姓である。これを領主は咎めなれなかった、それをすると田畑の耕し手を失ってしまい年貢が減る。敵方も反抗しない限り、見過ごされた(p41)

    ・信玄公には天下人に足りないものがある、地の利である。甲斐は京に至るまで、どれだけの大名を切り従えなければならないか(p60)

    ・武士ではなく、百姓が支配する領土、これは戦国大名にとって決して認められるものではなかった。朝倉義景は何度も一向一揆と戦った(p65)

    ・三好長慶の最盛期は、阿波・淡路・摂津・和泉・讃岐・山城・播磨と河内の一部を手中にした、与力する大名の勢力圏として、近江・若狭・伊賀があり、ほぼ畿内すべてを勢力下においた(p74)

    ・兵は一日に5合のコメを食べた、6万人とすると、1日に三万升、1か月で9千石、米以外の味噌・塩・漬物を換算して加えると、一万石を超える(p75)

    ・挟み撃ちにしておきながら信長を打てなかっただけでなく、被害を与えられなかった、浅井・朝倉の武名は落ち、殿を務めた、羽柴・明智・徳川・池田の名をあげた(p119)

    ・泰平を守るために必要なモノは、力ではなく、明日が確実に来るという安心感である(p187)

    ・領地を保護してもらう代わりに、軍役を請け負うのが決まりであった、もし出兵に代償を要求すれば、己の領地が敵に襲われた時の経費は負担しなければならなくなる。いざという時に守ってもらうためには、赤字であろうとも兵をださざるを得ない(p189)

    ・足利義輝は、京を追い出されてから、より熱心に大名との連絡を取った。九州の大友を筑前、豊前の守護に任ずるなど、他には、上杉信玄輝虎を始め、伊達輝宗、毛利輝元など、有力な大名に将軍の名前の一文字を与える偏諱を多発した。貰った大名は当然、足利義輝に恩を感じる(p208)

    ・信長は莫大な富により、本来は農閑期に徴兵する百姓を農作業から分離し、絶えず利用できる兵にした。これにより十分な練度をあげられるようになり、弱い尾張兵を鍛え上げた(p211)

    ・石山本願寺が手強いのは、「死ねば極楽に行ける、この辛い現世から解放される」と僧侶が保証している。武士は命が惜しい。一揆の衆を倒しても手柄にならないというのもあった(p251)

    ・普通の戦いでは、経験の浅い者、場の流れを読めない者から死んでいった、しかし、雑賀衆との戦いでは、勇猛果敢な者から鉄砲で打ち抜かれていった(p267)

    ・軍勢を率いて他国の領土を通行するには、名分とその他の大名の許可が要った。なしで入れば侵略となり戦いが始まる、これを防ぐのが、公儀・幕府の命であり、将軍の求めである。将軍の要請で上洛する軍勢の邪魔をするのは、謀反と同じであった(p331)

    2016年6月19日作成

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著者プロフィール

上田秀人
一九五九年大阪府生まれ。大阪歯科大学卒。九七年小説CLUB新人賞佳作。二〇〇一年作家デビュー。歴史・時代小説を中心に活躍。主な文庫シリーズに「闕所物奉行 裏帳合」(中公文庫)、「禁裏付雅帳」(徳間文庫)、「聡四郎巡検譚」「惣目付臨検仕る」(光文社文庫)、「奥右筆秘帳」(講談社文庫)、「町奉行内与力奮闘記」(幻冬舎時代小説文庫)、「表御番医師診療禄」「高家表裏譚」(角川文庫)、「日雇い浪人生活録」(ハルキ文庫)、「辻番奮闘記」(集英社文庫)、「勘定侍 柳生真剣勝負」(小学館文庫)など。一〇年『孤闘 立花宗茂』(中央公論新社)で第十六回中山義秀文学賞を受賞。二二年「百万石の留守居役」
シリーズ(講談社文庫)で第七回吉川英治文庫賞を受賞。『翻弄 盛親と秀忠』(中公文庫)など著書多数。

「2023年 『夢幻(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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