皇帝たちの中国史

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198649937

作品紹介・あらすじ

中国人も知らない歴史の真実!

中国史はなぜわかりにくいのか?
国名も違えば、民族も違う――それなのに「中国5000年」の歴史などという真っ赤な嘘をつくからわからなくなる。
日本では歴史教科書で中国という国の歴史がずっと続いているように教えられるが、中国という国があったわけではない。皇帝たちがそれぞれ異なる国をつくって、その国が交代しただけ。
フランス大革命でブルボン王朝が倒れたが、フランスがフランスであることは変わらない。しかしシナの最初の皇帝である始皇帝のあと、武帝が建てた漢はまったく別の国家と見なければならない。そうなると中華人民共和国はわずか70年の歴史しかないことになる。
本書は、始皇帝、漢の武帝など古代シナの皇帝たちから、元のフビライ・ハーン、明の朱元璋、清の康熙帝など歴代皇帝たちの治乱興亡を中心に、これまでの通説を根底から見直し、日本人には想像もつかない誤解もプロパガンダもたっぷりのシナの歴史の謎を解明する。

第一章 中国(シナ)とは何か──黎明期から秦漢統一帝国
・中国人はどこから来たのか──野蛮人が都市に住んで中国人に成り上がった
・始皇帝がシナをつくった──皇帝は中国最大の資本家
・焚書は文字統一のため──中国語というフィクションは始皇帝に始まる

第二章 世界帝国の真実──後漢から唐の衰退まで
・ハンパでない人口激減を繰り返すシナの歴史
・毛沢東の大躍進で人口の十分の一が死んだが、後漢末の人口は十分の一になった
・「世界帝国」としての唐──中央アジアの国際的な人々がつくった国

第三章 モンゴル帝国の興亡──五代十国から元朝まで
・中華思想は宋から始まった──遼と金を野蛮人として蔑む負け惜しみの思想
・モンゴルはなぜ大帝国になったのか?──民主的選挙と婚姻政策
・パックス・モンゴリカ──中国の省の起源は元にあり 

第四章 秘密結社が建国した明王朝
・シナ二千年の歴史で、漢人皇帝はたった四分の一
・明のプロパガンダに騙されるな──元朝は滅びていないし、韃靼はモンゴル 
・元明交代期に高麗から李氏朝鮮へ──大陸の政治に連動する朝鮮半島 

第五章 最後はやっぱり異民族の清王朝
・清朝は漢人王朝ではない──女真人(のちの満洲人)によるシナ支配
・公用語は満洲語──漢人は帝国の統治・経営に参加できなかった
・超人的な天才だった康煕帝──文武両道のスーパーマン

感想・レビュー・書評

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  • 東洋氏の専門家である宮脇先生による中国史。秦の始皇帝の時代から清王朝に至るまでの歴史を、覇権王朝に焦点を当てて説明している。調査、研究が緻密で、説得力がある。今まで知らなかった記述が多く、とても参考になった。
    「始皇帝の文字統一は大変に画期的」p36
    「現代中国人は、まずアルファベットを習得します」p38
    「近代になるまで、ほとんどの中国人は読み書きができなかったのです。それで、識字率を上げるために、発音記号のような文字やピンインをつくり、やっと普通の人が漢字を使えるようになりました。そして、中国人は今でも漢字よりも先にラテン文字のアルファベットを覚えるのです」p45
    「(日本のかな文字)8~9世紀にかけて発達し、10世紀には、かな使用が、すっかり定着していたのです」p50
    「そもそも中国人はアバウトで、7~8割ぐらい、相手がわかってくれれば十分と思っています。感情の機微など細かなニュアンスを伝えるには漢文は不向きなのです」p54
    「(清への朝貢)朝貢する側も、強制されてイヤイヤ行っていたわけではありません。琉球にしても、得るものがあるから、儲かるから朝貢したのです。琉球自身が作物や工芸品をつくっていたわけではなく、中継貿易で儲けていました」p60
    「大昔には、朝貢する人に国家や国民を代表しているという意識はありません。皇帝が各人と関係を結んだだけです。日本列島の誰かがシナ皇帝にプレゼントを持っていったところで、日本がシナの手下や属国になったわけではなく、個人的な人間関係を構築しただけです」p64
    「上に政策あれば、下に対策あり」p68
    「褒められるということは舐められているという場合もあります。特に敵から「アレはいいやつだ」と褒められたら終わりです。敵には悪口を言われたほうがいい。日本のメディアは外国のだれかが日本を非難・批判したといっては大騒ぎし、ともすると、相手側の要求にしたがえという論調がほとんどですが、とんでもないことです。本来は、非難し返すか「それがどうかしましたか」と無視するものです。たとえこちらが悪くても、それが国際スタンダードです。まして、いわれのない非難には敢然と立ち向かわなければなりません」p108
    「チンギス・ハーンが生きた時代は、まだモンゴル文字がありませんでしたから、当然、モンゴル語による文献はありません。したがって、当時の綴りが残っているのは漢文かペルシア語です」p147
    「(モンゴルの歴史書の翻訳)なぜ日本語からモンゴル語にわざわざ翻訳するのかと思われるでしょう。しかし、モンゴル人の書いたモンゴルの歴史はないのです。現代モンゴル史やモンゴル帝国だけを扱った本はありますが、遊牧民の誕生からモンゴル国までをまとめた通史はありません。それで、日本の書籍がモンゴルで翻訳出版されるに至ったのです」p150
    「(中国の高級幹部(今でも))高級幹部の子は同じ小学校・中学校・高校を卒業します。同窓生の父親が誰かは、全員が知っています。そして、高級幹部の息子と娘が結婚します」p165
    「モンゴル軍が本気で攻めてきた戦いではヨーロッパは全敗です」p174
    「遊牧民は基本的に町に住むことを嫌います。人が大勢いると汚くなるので、都会に魅力を感じません」p185
    「歴史史料は、書いてあるからといって、そのまま信じてはいけません。誰が、いつ、何のためにこれを書いたのか。それを踏まえた上で読まないと、真実はつかめません」p200
    「(中国人に人情は通じない)シナ人は絶対に本心を言いません。日本人が悩むことでは悩まないし、日本人の好きな「人情」の世界はシナ人に当てはめられないのです」p240
    「日本の教科書では北元は1388年に「再三にわたる明の追撃を受けて滅亡した」となって、あたかも全部が明になったかのように誤解を招く表現になっていますが、フビライ朝が絶えただけです。モンゴル高原を中心とする北アジアは、ついに明にはなりませんでした」p252
    「(朝鮮の特徴)朝鮮は国が小さいからか、逃げ場がありません。上下の差が激しい上に、完全に固定化されて夢も希望もありません。また、パイが小さすぎて、ライバルはすべて潰していかないと自分の取り分が少なくなるので、王の一族や儒者集団などの権力者同士の激しい闘争は20世紀まで続きます(今も続いています)」p264
    「明から清に交代したばかりの頃は6000万人だった人口が、アヘン戦争直前には4億人にまで増えていました。平和で豊かな社会だったから、人口が増えたのです」p332

  • 「中国史の皇帝たち―権力と栄光の歴史」

    この本は、中国の歴史の中で君主たちが果たした役割とその影響について詳しく解説しています。君主たちは国家の運命を左右し、時に栄光を築き、時に挫折を経験しました。

    この本では、最初の皇帝である秦の始皇帝から現代までの各時代の皇帝たちに焦点を当てています。秦の始皇帝の統一政策や漢の武帝の征服戦争、唐の太宗の文化繁栄など、各時代の皇帝たちが取った政策や行動が詳細に紹介されています。

    著者は、単に歴史の出来事を羅列するだけでなく、各皇帝の人間性やリーダーシップの特徴にも触れています。たとえば、明の成祖の寛大な統治や清の康熙帝の教養の深さなど、君主たちの個性が国家の運営にどのような影響を与えたのかを示しています。

    本書は鮮やかなイラストや地図を交えながら、読者にわかりやすく情報を伝えています。また、中国の歴史に詳しくない読者にも分かりやすい解説がなされており、初心者でも入りやすい一冊です。

    読み進めるにつれて、中国史の皇帝たちが抱えた困難や成功の秘訣について深く理解することができました。彼らの選択や政策が国家の歴史にどのような影響を与えたのかを知ることで、中国の歴史とその背後にある人間ドラマに興味を持ちました。

    本書は、歴史愛好家や中国文化に興味を持つ人々にとって貴重な一冊となるでしょう。中国史の皇帝たちの興亡と栄光の物語に触れることで、彼らの時代背景や文化的背景を理解し、中国の歴史に対する洞察力を深めることができます。

  • とっても面白かった! 始皇帝の秦から始まり、清の最盛期で終わる。
    他の本では読めないモンゴルの歴史なんかも学べたのもうれしい。

  • 中国の皇帝達や王朝のいろいろな話が載ってあった。中国の歴史をあまり知らないでも楽しめます。

  • 皇帝たちの中国史、とタイトルを打ってあるが、中国の歴史をかいつまんで紹介してある。
    どこかでの講演会を文章に起こし本にしたものなので、話はあまりまとまってないし、ちょこちょこ自身や配偶者の著書の宣伝が入るし(ならそれ読めば良かったと出てくるたびに思う)、挙句自身の政治的思想も入ってくるため、もったいない気がした。(その場にいたら帰ってたかも)
    あと、歴史的評価も込みではあるが、自身(や配偶者)の好き嫌いが存分に反映されていてちょっとしんどい。

    モンゴル史の造形が深いためか、そちらの項目には多くのページが割かれているし、あまり他では言及されなかったりするのでそこは面白かった。

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著者プロフィール

1952年和歌山県生まれ。京都大学文学部卒、大阪大学大学院博士課程修了。博士(学術)。東京外国語大学・常磐大学・国士舘大学・東京大学などの非常勤講師を歴任。最近は、ケーブルテレビやインターネット動画で、モンゴル史、中国史、韓国史、日本近現代史等の講義をしている。
著書に『モンゴルの歴史』(刀水書房)、『最後の遊牧帝国』(講談社)、『世界史のなかの満洲帝国と日本』(以上、ワック)、『真実の中国史』(李白社)、『真実の満洲史』(ビジネス社)など多数。

「2016年 『教科書で教えたい 真実の中国近現代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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