底惚れ (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
3.50
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本棚登録 : 210
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198653767

作品紹介・あらすじ

斬新な江戸ハードボイルド時代長編!
一作ごとに進化し続ける青山文平の語り口に酔いしれる!

女への思いにかられながら、はぐれ者だった男が、一途に自分を刺した女の行方を求める。女を捜す方便として、四六見世という最底辺の女郎屋を営みながら、女が現れるのを待つという仕儀を薦めてくれたのは、路地番の頭・銀次だった。ビジネス成功譚の側面と、女への思いを貫く純愛を縦線として、物語はうねり、意外な展開をみせる魅力的な時代長篇。

主人公は、村の生活に染まれず、欠け落ちた江戸で、すでに四十を過ぎた。一季奉公のまま、江戸にも染まぬ男たちは当時、大勢居た。根岸にある小藩の屋敷で奉公中、ご老公のお手つき女中・芳の故郷への道連れを命ぜられる。…旅の途中、訳あって芳に刺されるが、一命を取りとりとめる。自分を殺したと思い込んで、行方の知れない芳を探すために、彼女が来る可能性のある江戸の場末・入江町で最低の女郎屋を営む。はぐれ者として生きてきた切見世暮らしの男が7軒の楼主となる。商売は繁盛し、厚綿の布団を貸す損料屋にも手を出し、成功を治めるがーー。
2020年に刊行された短編集『江戸染まぬ』所収の「江戸染まぬ」を長編化。

感想・レビュー・書評

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  • 泣けた。一人称の文章なので、少々しんどいところもあったが、中盤からグイグイ読ませた。最後のところで題名の得心がいった。いい作家にまた出会えました。

  • これは凄い本です。「江戸染まぬ」の結末がとても切なかったのだけど、振り払う後日談でした。こんな続きを書ける作家さんに出会えてよかった。


  • この春に生まれた川海老が泳いでいるのに、ようやく気づいた。 ー修羅場を経てジタバタした後、ふと目に入る小さな当たり前の日常 この瞬間って幸せ

    いつ芳が登場するのかと思いながら読んだ。

  • 悔しいくらいの筋立て。
    食いっぱぐれて江戸に流れた、もしくは田舎を捨てて。
    そんな男が生きる気概もなくただただ、一季雇いの仲間奉公。

    そんな日常の中で、武家の虚しさを絵にしたような、たった21歳御老公が存在する小さな地方の藩の抱屋敷。
    そこで男児を生んだ女中を、田舎に返す命令が。

    女中の「芳」は本気で嫡子で、御老公と愛し合っていた。
    そこから、主人公の「俺」は、さまざまなことを深く考えるのだが。

    題名そのまま、これ以上にないほど惚れるということがどんな思いなのか?
    「俺」が、生きている実感を戻してくれた、芳に返す大恩を支えに人生が変わってゆく。

    内容は読んで欲しい。素晴らしい愛の物語だ。

  • 武家に一年限りの奉公をする、四十すぎた「江戸染まぬ」男が語る、隠居した藩主のお手つきとなった女の宿下りに同行したことからはじまる因縁めいた話。一人称の語りというのは伝統的な日本の近代文学の特徴であるが、それを筆力のある作者が時代小説でやってみせる。もちろん自我との葛藤なんてややこしいものはなく、話の展開にも意外性がある。博識の作者は、舞台や仕組みを読者にそれとなく教えてくれる。読後の気分はとてもよい。

  • いつもの青山文平とは違うような思いが消せず、途中でやめようかと思ったが、読んでよかった。
    底惚れしているのが信だったのは鮮やかなり。

  • 2022I186 913.6/A
    配架場所:C1

  • 勘違い男の純情に、死にかけた男の起死回生に、江戸の岡場所舞台に「よし」探しの幕が上がる。歯切れの良い会話と次々繰り出す商売の面白さ、ホロリとする人情物でもある。

  • 息遣いまで伝わりそうな語り口が魅力的です。一気読みしてしまいます。ラストも良いです。

  • 時代小説なのに、ビジネス小説っぽい。なんかいい感じ。第17回中央公論文芸賞受賞作。
    社会の底辺で暮らしていた男が、恩人の女にお礼を言いたいがために、入江町の岡場所で女郎屋を開く。女郎が来たくなるお店にするため、1人一部屋、一回に1人だけ客をとるシステムで、儲けはあまり考えない。しかし、お店の数を増やしていき、蕎麦屋や小間物屋、菓子屋なども開店する。それでも探し人が見つからないため、損料屋も開く事に。わずか2年で気持ちいい程に成り上がっていく。成功の影には2人の友人の存在が。銀次という路地番と信という元の奉公仲間で、彼らは男にとって家族のような人達だった。それぞれの事情がわかる最後の種明かしはなるほどねーという感じで、よかった!と思える(^^)
    主人公の名前が出てこない事には読み終わるまで全然気づかなかった。
    東京には江戸時代の地名がまんま今の地名になってる場所が多く、東京の人は楽しいかも。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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