- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198919542
感想・レビュー・書評
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沖田総司の話
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まず著者がアンチ新選組である事で、ある程度冷めた視点で全体が構成されているのも良い。人は誰でも二面性があって当たり前なのに、歴史の人物には単純な枠決めで型にはめようとする傾向がある。
本書の沖田像は極めて自然で納得の人物像であり、山南の主義主張も大きく反映されている。だからこそ、岩城升屋事件をスルーしてほしくなかった。
話全体としては面白い。私は新選組ファンであるが手放しで近藤土方を褒め称える作品が多い傾向に一石を投じた名作と思っている。 -
いつも明るく冗談ばかりで子供好き。沖田総司の逸話から定番となっている性格付けですが、こちらはそれを沖田の表の顔とし、内面は孤独と悲しみの人という感じです。空しさや諦めなど、沖田総司の性格付けにはあまり見ないものでした。それに伴い、近藤・土方や山南・伊東の書き方も定番とは違っています。
当時の証言を基にしつつ、「しかし~」と続ける解説を読んでいると、「そうかもしれない」と思わせられてしまいました。 -
近藤勇・土方歳三をここまで悪辣に書いた小説を初めて読みました。
また、沖田総司をここまで乾燥した人間として書いた小説も初めて。
新撰組(骨格をつくった近藤や土方)を幕末の志士とする視点からのものしか読んだことがない私には新鮮でした。
沖田は自分が幼い日に慕っていた近藤や土方が、夢に向けて本性をむき出していく。そして沖田にとって知らない人間になっていく。
若い沖田は好きなものを失って無気力になっていき、京都での生活でそれが増長する。
この小説の沖田は生涯、傍観者であり続けることである意味自分を守りつづけていたのかもしれない。
天性の人切りではなく、ふつうに生きる沖田を書こうと試みられた本なのではないかと思います。