- Amazon.co.jp ・本 (628ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198923945
感想・レビュー・書評
-
面白かったか?と問われれば素直に頷けず。小説として楽しめたか?と問われてもこれまた安易にイエスと言えず。ただ、突き抜けたアブノーマルな世界観と文章で一気に読まされてしまったのは確かだ。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ドブネズミ、陰でそう呼ばれていることは知っている。卑しく小狡くみすぼらしい嫌われもの。
鷹場英一が経営する「幸福企画」は依頼人に代わって復讐を成し遂げる、復讐代行屋である。
どんな理由からの逆恨みであろうと、金さえ払えば仕事はこなす。そして依頼人が払える最高額をむしりとる。
そんな鷹場の前に姿を現したのは、自分をドブネズミに貶めた憎い男と、誰よりも愛しい女だった…。
『ノアールの極致!』とのことですが…そこら辺を悠々と超越している感じでした。
ろくでなし、ひとでなし、けだものどもの狂宴!驚くほど悪い方に突き抜けている。
あんまりなシーンが多々あり、誰かにオススメしようとはまず思えない一冊ですが
あんまりなシーンが“あんまり”過ぎると、ちょっと笑えたりするんですよね…。
読了後の感想は「あ~ぁ…(苦笑)」代行屋の仕事のほう、もっと見たかったです。 -
出てくる登場人物がみんな最低。変態ばっかり。そんな最低な人たちが殺し合いをするという、最低の作品。合わない人は間違いなく嫌悪感を覚える。はまる人は、はまっちゃう。
-
登場人物の現実離れした個性、だまし、だまされ、大事なのはお金と自分。まったく魅力的な人がいない。それでもその浅ましさがここまで徹底してくるととにかくおもしろい。
-
えげつないノワール小説を書かせたら上手いですよね.
-
黒新堂が、その真骨頂を如何なく発揮した作品である。とにかく、ヘドが出る!こんな世界は認めない!否、存在してはならないと強く思う。多分、昨今の事件事故を見ながら、いかなる切り口で作品に仕上げたのだろう?まさか、類似体験に基づくものだったりして?
新堂作品との出会いは、白ものだったのだがーー?黒ものに比べると、印象が薄い、では、と手に取った黒ものだったのだが。なぜか、今は、黒ものばかり読み漁っている。白ものは、黒ものの引き立て役か?次は、闇の貴族かな? -
最低のヘンタイ描写がうまい
-
自己の愉しみをそのままビジネスとする復讐代行屋「幸福企画」の経営者、鷹場英一はカネのためならどんな事でも行う。社員は英一を含め八木、中丸、沙耶の4名。幸福企画へやってくる客はみんな「金を払っても復讐したい人間がいる奴ら」ばかりがやってくる。
人の不幸とカネが何より大好きな英一にとって趣味と実益を兼ねたビジネスであったが、赤富銀行の田代から依頼されたハニーピーチのデート嬢の藤木安菜への復讐代行を請け負ったことにより事態がかなり転換する。田代を裏で操っていたのは英一の実の父の源治であった。
英一は源治を幼少の頃から忌み嫌っていた。幼い英一に数限りない暴力を振るい、しかも英一が愛する実の姉の澪にまで手を出す始末であった。
英一は現在は行方不明となった姉の澪を一人の女性として愛し続けていた。その澪の消息を源治は知っていると聞き英一は源治から持ちかけられた怪しい儲け話に乗ることになった。しかし、実はこの儲け話を始めに持ちかけたのは澪であったのだ。澪は現在暴力団組長の宝田の情婦となっていた。澪は偶然知った医大教授の坂峰が大京大学医学部へ裏口入学の斡旋をしていたということを握り、それを逆手に儲けようと企んだ。そして自分が自由の身を手に入れるためにでもあった。
物語は坂峰から脅し取るためのカネを中心に回り始める。
源治、澪、英一の三者は表面上は坂峰のカネを奪い取るとために協力しているように見えるが、彼ら三人は家族とは思えないほど、互いを信用していない。唯一英一だけが澪を信頼していた。いや、信頼しようとしていた。そして場面場面でことごとく裏切られるのだ。
澪の自己愛は徹底している。また、元を正せば全ての現況は澪であり、英一も源治も澪の手の中で結果的に踊らされていた感もある。
宝田の子分で澪に密かに思いを寄せているある本郷に至っては、本来組長の女に横恋慕することはこの世界ではあってはならないことと知り、澪に騙され組長を裏切ってしまう。自分がこの世の中で最も美しいと信じて疑わない澪は全てを思いのままにしなければ気がすまない。
源治に至っては幼い澪と英一に鬼畜ともいえる行為をし続けてきた。そして9年ぶりにあった実の子供に向かっても親と思えぬ行動を繰り返す。この親にしてこの子達ありである。
ストーリーよりもこの変態的とも言える描写や目を覆いたくなるような過激な行為が脳裏に焼きつく小説である。逆に言えばこれらの「気持ち悪さ・気色悪さ」が強調されすぎたことは小説としては失敗なのではないかと感じてしまう。しかし、これはおそらくストーリーを読ませるような小説ではないのだろう。登場人物の狂気の行動を共有するための文字列(呪文)なのだと感じた。しかし、この呪文の効力は恐ろしいほど効果があり、それが新堂冬樹の小説を読ませる原動力になっているのではないかと思う。
クライマックスは外面上だけではなく人間の内面性のグロテスクがあふれ出て、すごくエキサイトできた。ぜひ続編も読んでみたいと思った。