南アルプス山岳救助隊K-9 風の渓 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198945817

作品紹介・あらすじ

山岳救助犬&救助隊員のバディが活躍する
人気山岳小説〈K-9〉シリーズ最新刊!

人気〈山ガール〉アイドルを狙う影!
南アルプス署山岳救助隊のメンバーは
彼女を魔の手から救えるか!?

北岳を愛する人が、一丸となって、人の命を救うために尽力している。
だから「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの読後感は、いつだって清涼なのだ。
――細谷正充氏(解説より)

富士山登頂を機に山ガールとなった人気アイドルグループのヴォーカル・
安西友梨香が番組の収録で北岳に登ることになった。
南アルプス山岳救助隊員・星野夏実は、友梨香を取り巻いていた登山客のひとりに不審を抱く。
一方、以前救助した少年・悠人が父親のDVから逃げてきた。
夏実たちは両俣小屋の名物管理人・
加賀美淑子に彼を預けたが、そこにも危険が迫り……。山岳救助隊員と相棒(バディ)の救助犬が活躍する人気山岳小説、シリーズ最新刊!!

【南アルプス署山岳救助隊メンバー】
星野夏実 ボーダー・コリー、メイのハンドラー。巡査
神崎静奈 ジャーマン・シェパード、バロンのハンドラー。巡査
進藤諒大 川上犬、リキのハンドラー。〈K-9)チームリーダー。巡査部長

深町敬仁 巡査部長
関 真輝雄 巡査
横森一平 巡査
曾我野 誠 巡査
杉坂知幸 山岳救助隊副隊長。巡査部長
江草恭男 山岳救助隊隊長。警部補

感想・レビュー・書評

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  • 2021年最初の本です。
    風の渓 ― 南アルプス山岳救助隊K-9シリーズの9作目
    2020.11発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。

    南アルプス北岳・白根御池小屋に隣接する警備派出所夏山常駐隊の山岳救助隊員・星野夏美巡査とボーダーコリーのメイの活躍を描いた物語です。

    多額の保険金欲しさに暴力団の義父・中江芳郎に殺されそうになる13才の悠人少年と、サイバー犯罪で警察に追われアイドル安西友梨香と心中を図る35才の桜井和馬の2人が、同時期に北岳で事件に係わって行く物語です。

    悠人少年も桜井和馬も、引きこもりですが、最後は明暗を分けました。
    悠人は、引きこもりの殻を破り、成長し、自立の道を歩み。和馬は、友梨香を殺す寸前に夏美巡査に逮捕されました。

    【読後】
    此度も、北岳の厳しさと美しさが伝わってくる物語です。
    その北岳で山岳救助犬メイのハンドラー夏美が、困難のなか救助を行う姿を見ていますと、感動と、涙が出て来ます。そして、悠人君の成長と自立をまのあたりにして、感動しました。

    南アルプス山岳救助隊K-9シリーズは、第2巻「ハルカの空」を読んで、たまたま予約した今作の第9巻「風の渓」が手元に来てしまったので読む事となりました。
    ハルカの空を読んだ時は、第1巻を読んでいないので、ずいぶん違和感が有りましたが、今作は、最初に白根御池小屋の管理人が松戸颯一郎に変わったのですが、松戸さんのエピソードが無いので、救助隊と何か係わりがあったようですが分かりません。それ以外は、スムーズに物語に入って行くことが出来ました。
    2021.01.01読了

  • 樋口明雄『南アルプス山岳救助隊K-9 風の渓』徳間文庫。

    シリーズ第9弾。文庫書き下ろし。

    南アルプスの自然とは無縁なはずのネグレクトや引き籠り、ネット犯罪という現代社会の病巣を巧くテーマに取り入れ、南アルプス山岳救助隊のメンバーの活躍と山に生きる人びとの暖かさを描いた感動の傑作。

    第一章に描かれた深町の言葉、「この国の人間はどんどん“劣化”が進んでいると思う。」は、まさにその通りだと思う。今の世の中は個人の権利や自由を優先し、義務を果たさない人間が増えた挙げ句、何時の間にか人間の心が荒廃しているようだ。しかし、その中でも真っ当に歩み出そうとする者と道を踏み外してしまう者がいる。

    今回は、南アルプスの北岳を巡る2つの物語が同時進行する。

    以前、登山中に叔母と共に救助された13歳の少年・悠人は、暴力団の父親のDVから逃れるために叔母に連れらて再び南アルプスを訪れる。南アルプス山岳救助隊員の星野夏実と深町は悠人を両俣小屋の加賀美淑子に預けるが、殻に綴じ込もったままの悠人はなかなか心を開かないことに胸を痛める。

    一方、都内に暮らす35歳の桜井和馬は自宅に引き籠りながらハッカーとしてネット犯罪に手を染め、不正に金儲けをしていた。ある日、和馬は芸能事務所のサイトを不正にハッキングし、お気に入りのアイドルグループのリードヴォーカル・安西友梨香がテレビの企画で北岳登山を計画していることを知ると自分も一緒に登山することを計画するが……

    後半の怒濤の展開にはページをめくる手が止まらず!

    このシリーズは徳間文庫にハルキ文庫、新潮文庫にヤマケイ文庫と出版元が次々と変わるので、全く油断が出来ない。さすがにヤマケイ文庫の『レスキュードッグ・ストーリーズ』などは『南アルプス山岳救助隊K-9』のサブタイトルも無く、暫く見逃していた。

    本体価格740円
    ★★★★★

  • <南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズ。

    今回は二つの物語が同時進行していく。

    一つは両親からの虐待ですっかり心を閉ざしている少年・悠人の話。
    唯一彼を気にかけている伯母に連れられて南アルプスにやって来た縁で、一時的に両俣小屋に預けられることになった悠人。一日中ゲームをしているだけだったのだが、釣りをきっかけに小屋の管理人・加賀美叔子始めアルバイトスタッフたちとも心を通わせるようになっていく。
    だが悠人の父親の会社が破産し、ヤクザとつながりのある父親は悠人にとんでもない危害を加えようとしている。

    もう一つはハッカー・桜井和馬の話。
    表向きは引きこもり、だが実はハッキングで多額の金を稼いでいた彼だが、ついにその犯罪がばれてしまう。
    警察に追われ焦るあまりに刑事をナイフで刺してしまった和馬は、憧れのアイドルで今は山ガールとして売り出している安西友梨香が撮影をしている南アルプスへ向かう。

    ここまででページの半分が終了。ずいぶん長い前置きだったが、二つの危機が同時に南アルプスへ集結したところからは樋口さんお得意の怒涛の展開だ。

    今回はシリーズ作品では初めてだと思うが、ツキノワグマが二度も出てくる。
    一度目は両俣小屋の管理人・加賀美叔子を襲い、二度目は物語の終盤で登場。二度目は果敢にボーダーコリーのメイが応戦する。小さなメイではどうにもならないのではと思うが、なんと勇敢なことか。
    当たり前のことだが、このシリーズを読んでいると自然はただ美しいだけではないことを思い知らされる。

    そして深町が大変なことになってハラハラした。まだ夏実との関係も進んでいないのに、まさかここで退場はないだろうと思いつつも心配しながら読み進めた。
    だがそのことがあってかどうなのか、夏実が深町のことを人から『恋人』と言われても否定しないあたり、彼女の中で心境の変化があったのか。それとも実は知らないうちに関係が進んでいたのか。

    もう一つ、静奈が今回も格好良く敵をバッタバッタとなぎ倒していくのも見せ場で良かったが、肩の小屋の管理人・小林も両俣小屋の管理人・加賀美叔子も頼もしかった。
    特に叔子は携帯はもちろん、無線も肩の小屋にしか通じないという山深い場所で女性一人で小屋を切り盛りするというのは大変な覚悟と苦労だろうが、それだけの器量と度胸があって素敵なキャラクターだった。

    今回も気持ちよくテンポよく読ませてもらった。

    ※備忘録としてシリーズ作品を挙げておきます。
    「天空の犬」(2012年)(文庫化2013年)
    「ハルカの空」(2014年)(文庫化2015年)
    「ブロッケンの悪魔」(2016年)(文庫化2017年)
    「火竜の山」(2017年)(文庫では「炎の岳」に改題2018年)
    「レスキュードッグ・ストーリーズ」(文庫化も2018年)
    「白い標的」(2017年)(文庫化2018年)
    「クリムゾンの失踪」(文庫2018年)
    「逃亡山脈」(文庫2019年)
    「風の渓」(本書 文庫2020年)
    「異形の山」(文庫2021年)

    もし間違いあれば教えてください。

  • <南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズの6冊目。
    この前に読んだ「異形の山」の感想の最後に『夏実と静奈が表彰される大活躍をした事件はどの巻かな?』と書いたけど、この巻でした。

    山ガールとして人気のアイドルを追いかけて北岳にやって来たネットハッカーと、DVの父親と子育て放棄の母親から引き剥がされて両俣小屋に預けられた少年。今回は夏の終わりの北岳で二つの話が並行して描かれる。
    それぞれ引きこもりの生活を送っていた二人は話が終わる時には大きく道を違えることになるが、そこには、作中『この国の人間はどんどん“劣化”が進んでいると思う』と語る作者の憤りと、一方でそうした社会の中でも前向きな心を持つ人たちに対する信頼の気持ちが託されているように思える。

    いつも変わらずそれぞれの持ち場で活躍する救助隊メンバーやヘリ乗員に山小屋の人々だが、少年を殺害しようとするやくざ者と対峙する静奈とともに、今回は凶行のハッカーを追う夏実にも見せ場たっぷり。
    メイが熊を追っ払うくらいであまり犬たちの見せ場がないのはちょっと残念。

  • 富士登山で山ガールになったアイドルグループのボーカルが、北岳に登ることになった。
    彼女のファンでひきこもりネットハッカーの35歳が、彼女に会うために北岳を目指す。
    さらに、母親が入院し父親からDVを受けている13歳が、北岳に逃げてくる。
    思惑の違うそれぞれが、北岳でどういう遭遇をするのか。
    引きこもりやDVそれにストーカーなど、現代の問題を織り交ぜながら、南アルプス山岳救助隊の面々が活躍するシリーズ第9弾は、相変わらず頁を繰る手が止まらない。
    今作では、両股小屋管理人をしている加賀美淑子70歳が、魅力的でいい味を出している。
    北岳の美しさ雄大さの描写にたっぷりと浸りながら、静奈の痛快な戦いのシーンに拍手を送り、救助犬の逞しさに讃辞をし、夏美と深町の微笑ましい恋愛にほのぼのする山岳警察小説。
    第9弾を読み終えたばかりだが、早くも第10弾の刊行が待たれる。

  • シリーズ第9弾。
    あとがきにもあるが、前作では舞台が北岳ではなかったので、久しぶりに舞台が北岳に戻って来た!と言う印象。
    山岳救助隊が待機する山小屋のオーナーも代替わりし、これまでバイトだった松戸がオーナーとなったり、シリーズと共に時代の変化も感じる。
    今作では引きこもりの少年を、ひょんなことから預かることになり、その少年の命を狙う義父の手から、必死に少年を守ろうとする夏美たち。
    同時に「山ガール」として知られるアイドルが、撮影の為に北岳に登るが、その取り巻きに怪しい人物を見つける夏美。
    夏美の予感は当たり、美しい北岳を舞台に凄惨な事件が起こる、と言う展開。
    久しぶりに夏美と深町のパートがあり、以前から読んでいるファンには堪らないだろう。夏美が見える色の話も久しぶりに読んだ気がする。
    しかし、凶悪犯が山に紛れて来る展開が最近は多く、本来自然を楽しむための山の良さが失われてしまう感じがするので、星は少な目で。
    いつもより、ページ数も多く読み応えはあったけど、2つも凶悪事件が発生する展開は微妙…
    前半はお馴染みのメンバーもまんべんなく登場し、平和な雰囲気だっただけに、後半の急展開にちょっとついていけなかった。

  • 南アルプス山岳救助隊シリーズ。
    今作は、ほぼ北岳が舞台となっていて、とても楽しく読めました。
    親の愛情を知らずに育ってきた少年の悠人が両俣小屋で過ごす日々が、特に印象に残りました。
    そして相変わらず。山岳救助犬のメイが可愛くてたまらない!
    後記に、山岳救助隊や救助犬は現実には存在しません、と書かれているが、本当に会いに行きたくなる人の気持ちがよくわかります。

  • 天空の犬シリーズ第9弾。
    久しぶりの夏実とメイ、神崎とバロンは健在。
    複数の伏線をうまく北岳に集約させていく展開は、やっぱり面白い。
    そこに絡んでくるのは、これも作者得意の警察とヤクザ...
    読んでから買ってまた読む本棚に追加することにした。

  • 北岳を舞台に二つの事件が同時進行。引きこもりのネットハッカーがアイドルを追いかけて北岳に。更には両親から虐待を受け自分の殻に閉じ籠る13歳の少年に生命保険をかけて命を狙うヤクザ。どちらも間一髪で夏実とメイ、静奈とバロンにより救出される。ハッカーはその異常性による破滅、少年は両俣小屋の淑子による立ち直りの両極端を描く。事件解決の時、淑子に「お母さん」と抱きついた場面に親の愛に飢えていた少年にホロリとした。静奈とヤクザとの対峙、夏実の初手柄など読みどころ満載。ツキノワグマとのにらみ合いも迫力あった。

  • 両親に愛情をかけられていない少年。山での暮らしの中で心を開いていくのが嬉しい。独りよがりな男はその思い込みで事件を起こす。
    山と自然を愛する人たちの物語が心を癒してくれる。
    山にいる気分を味わえる。
    下り道が苦手でなければ山に登ってみたいけれど……

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著者プロフィール

1960年山口県生まれ。明治学院大学卒業。雑誌記者を経て、87年に小説家デビュー。2008年『約束の地』で、第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。2013年刊行には『ミッドナイト・ラン!』で第2回エキナカ大賞を受賞。山岳救助犬の活躍を描く「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの他、『狼は瞑らない』『光の山脈』『酔いどれ犬』『還らざる聖地』、エッセイ『北岳山小屋物語』『田舎暮らし毒本』などの著作がある。有害鳥獣対策犬ハンドラー資格取得。山梨県自然監視員。

「2022年 『南アルプス山岳救助隊K-9 それぞれの山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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