南アルプス山岳救助隊K-9 異形の山 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
3.38
  • (2)
  • (6)
  • (18)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 91
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198946616

作品紹介・あらすじ

山岳救助犬&救助隊員、最強バディが活躍する
人気山岳小説シリーズ最新刊!

北岳に雪男出現!?
稜線に消えた白い影を追え!
大藪春彦賞作家の書下し人気山岳シリーズ

北岳・白根御池小屋の厨房が破られ、備蓄食料が荒らされた。
通報を受け、現場に到着した山岳救助隊の進藤と相棒の川上犬リキが
目撃したのは、人間業とは思えぬ破壊の光景。
さらに北岳の冬季ルートである池山吊尾根で山岳カメラマンが
望遠レンズで捉えた稜線には、白い毛に覆われた生物の姿が。
北岳に雪男出現!?
写真がブログに掲載されると世間は大騒ぎに。さらに登山客も襲われ……。

【南アルプス署山岳救助隊メンバー】
星野夏実 ボーダー・コリー、メイのハンドラー。巡査部長
神崎静奈 ジャーマン・シェパード、バロンのハンドラー。巡査部長
進藤諒大 川上犬、リキのハンドラー。〈K-9〉チームリーダー。巡査部長

深町敬仁 巡査部長
関 真輝雄 巡査部長
横森一平 巡査
曾我野 誠 巡査
杉坂知幸 山岳救助隊副隊長。巡査部長
江草恭男 山岳救助隊隊長。警部補

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズ第10作。

    今回はなんと『北岳に雪男出現?』の巻。
    冒頭は大学生が登山中に目撃した流れ星。その後、山小屋の厨房が破られて食料が荒らされた現場から謎の白い毛玉が。そして山岳カメラマンが望遠レンズで捉えたのは白い毛に覆われた、人に似た大型の猿のような姿。この生物は何なのか、宇宙から来たのか?

    荒唐無稽な話かと思ったら、そこは樋口さんのこと現実性ある話にしてくれた。
    謎の生物は登山者のテントを襲ったり、特別天然記念物のライチョウを襲ったり、いつ人的被害が出てもおかしくない状況。
    北岳はついに入山規制がされ、本格的に謎の生物捜索となるのだが、勿論そう簡単にはいかない。

    注目を浴びたいYouTuberにやはり名を挙げたいハンターコンビが北岳に入っている。
    そして進藤たちが山小屋で見つけた謎の外国人も怪しい。

    今回頑張ったのは進藤がコンビを組む川上犬リキ(とヘリのパイロット陣)。小さな体で雪山を駆け臭いを辿り、自分の数十倍はあろうかという謎の生物にも立ち向かう。無理をしないで!とハラハラしたが、本当に勇敢だ。

    テーマとしてはいくつかあるが、その一つ(他はネタバレになるので書けない)広河原山荘管理人・滝沢謙一が考える『命を奪うことの意味』。『食料を得る』だけではなく『生態系の維持という意味において重要な仕事』である狩猟に携わることによってより命をいただくことの重みを考えなければならない。川辺のように単なる『猟欲』で行ってはいけない。

    夏実は終始謎の生物の駆除に反対していたが、単なる感情論ではなかった。どんな人間であれ救助するという彼らのぶれない姿勢が通じる相手かどうか、それは読まれてのお楽しみ。

    静奈のアクシデントシーンが僅かだったのは残念だが、たまにはこういう回も良いだろう。夏実と深町の仲良しシーンがあったし。
    個人的には江草隊長の体調が心配だが何とかリハビリ頑張って復職して欲しい。山岳救助隊みんなのお父さんだから。

    それにしてもこのご時世にあの国が登場するとは。

    ※シリーズ作品一覧
    (★はレビュー登録あり)
    ①「天空の犬」
    ②「ハルカの空」
    ③「ブロッケンの悪魔」
    ④「火竜の山」(文庫化の際「炎の岳」に改題)★
    ⑤「レスキュードッグ・ストーリーズ」★
    ⑥「白い標的」★
    ⑦「クリムゾンの疾走」★
    ⑧「逃亡山脈」★
    ⑨「風の渓」★
    ⑩ 本作 ★

  • 奥深い一冊。

    雪山気分で手にした作品。

    予想外の展開と面白さ。

    日本で二番目に高い山、北岳で謎の白い毛に覆われた生物目撃情報が。
    果たして雪男なのか…というくすぐられで掴みはバッチリ、そして読むにつれて実際にあってもおかしくない、奥深い、よく創られたストーリーだと感じた。

    焦りからの執念。
    そこまで…という人間の愚かさが痛々しく、人間の身勝手さが浮き彫りに。

    何気に日本の諸外国への姿勢へ放つ一言が爽快だった。

    自然界への畏怖の念、人間の自然界での在り方も諭される救助隊と救助犬の世界。

    このまとめ方も読後感もはなまる。

  • お気に入りの南アルプス山岳救助隊シリーズ。

    北岳に現れた異形の生物は、何者なのか。
    宇宙生物か、雪男か?
    ちょっと話が飛び過ぎているのでは…と不安になりながら読み進める。

    ネタバレになるので詳しくは書けないが、猟師やYouTuberなど、登場人物がしょうもない男達で、共感しにくかった。

    でも今作では、救助犬リキが懸命に働く。
    そして山で生きる人間が思う、自然の中の神聖なものが、やはり描かれている。
    樋口さんの作品は、個人的にはそこに一番惹かれているかもしれない。

  • 樋口明雄『南アルプス山岳救助隊K-9 異形の山』徳間文庫。

    山岳救助犬&救助隊員が活躍する山岳小説シリーズの第10弾。文庫書き下ろし。

    まるで、あの大傑作『約束の地』を彷彿させるようなストーリーに大興奮のうちに読み進む。非常に面白い。荒唐無稽な大事件の真相については道義上、余り触れられないのがもどかしいのだが、現実味のある真相であることだけは付け加えておく。読めば解る。

    南アルプスの北岳で謎の火球が目撃された後、北岳にある白根御池小屋が破られ、備蓄食料が荒らされた。通報を受けて現場に到着した山岳救助隊の進藤諒太と相棒の川上犬リキが目撃したのは人間業とは思えぬ破壊の光景だった。現場に残された白い毛玉と人間のような足跡……

    その後、北岳の冬季ルートで山岳カメラマンが望遠レンズで稜線に白い毛に覆われた生物の姿を捉える。さらには登山客のテントが謎の生物に襲撃され、怪我人が出たことから北岳は入山禁止となる。

    謎の白い毛に覆われた生物は雪男なのか、それとも宇宙から来た地球外生命体なのか……

    本体価格750円
    ★★★★★

  • シリーズ10作目。
    冬の北岳で起きた火球の目撃情報。そして尾池小屋では何者かに厨房を荒らされていた。
    他にも登山者のテントが襲われ、けが人も何人か発生し、目撃情報から、「雪男」が犯人らしいと見当をつけた山岳救助隊のメンバーは狩猟会のメンバーと共にパトロールを始める。
    火球や雪男の情報はYouTubeなどで拡散され、世間の話題に…
    一躍人気YouTuberになる為に、冬山の登山経験もほとんどないのに北岳に入る大学生や、自分たちのエゴの為だけに雪男を仕留めようと、勝手に狩猟を始める狩猟会のメンバーなど、冬の北岳の自然をバックに様々な人物の思惑が巡り巡る展開。
    正直、帯の「雪男」にはちょっと引いたし、どんな感じでこの奇怪な事件を展開していくんだろうと思ったが、意外と無理な感じもなく、物語に引き込まれた。
    これまでも、どんどん事件のスケールが大きくなって来たが、今作ではとうとう他国が登場し、どうなることやらと思ったが、今回は山岳救助隊のメンバーの活躍もきちんと描かれるし、何より納富機長の登場回数が多いのは、ファンからすると嬉しい。
    YouTuberの描写については、冬の富士山に登って、ライブ配信中に転落して亡くなった方のことを思い出した。
    YouTubeを見ない人間として、視聴数がどんなに大事なのかは分からないが、人に迷惑をかけるような行為は絶対に許せないし、この作品をYouTuberの人が読むようなことはないと思うが、何かの注意喚起になればと願いたくなるような内容だった。

  • 人の感情が色となって見えるという異能の持ち主星野夏実。クールでいて熱い心の神崎静奈。
    彼女たちが活躍するこの山岳救助隊シリーズの新刊が出ると、見逃すわけにはいかない。読者の頭の中で、彼女たちが生きて立ち働いてしまっているから。
    今作の帯惹句にはなんと「雪男」出現と。
    マンネリになりかねないシリーズの乾坤一擲を狙った作者が、途方もない企画を立てたのかと、危ぶんだ。
    しかし、そんな愚考を吹き飛ばしてくれるその正体。
    謎の生き物を狩ろうと山に入るハンター。その正体を捉えて、注目を浴びたいYouTuber。さらに、遭難しかけていた謎の外国人。
    それぞれの思惑を秘めている彼らに、山岳救助隊のメンバーはどのように立ち向かうのか。
    そして、謎の生き物の正体は。
    今回も、一気読みするしかない一冊。

  • <南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズの5冊目。
    順番に読もうと思っていたが、なかなか中古本屋で見かけないので、この前見つけた文庫最新作のこの本に行ってみる。

    しかし“火球に乗って北岳に落ちてきた雪男”とは、『三流SFホラー映画じゃあるまいし』P.45 といった出だし。
    勿論、三流…ではなく真っ当な展開になるのだが、防衛省が出張ってきた段階でネタバレかな。

    それにしても、不明生物を観光立地のマスコットにしようとする職員も、猟果に拘る猟師も、一発当てんとするYouTuberも碌なやつはいないな。
    そうでなくては話が成り立たないのではあるが、そうした愚かな人間たちを“雪男”が哀れむ体の作りになって、今回は川上犬リキが頑張ったけど、全体としてアクションはあまり盛り上がらず。

    とは言え、まあまあ楽しく読んだけど、終章がちょっと安易。あれだけ政治的要素が懸念される事案なら、YouTubeに投稿される前された後、ひと悶着ふた悶着あるだろうよ。

    夏実と静奈が表彰される大活躍をした事件はどの巻かな?

  • ◆おすすめ度◆
    ・山岳冒険小説度:★★★★
    ・「雪男?」の正体は度:★★★★
    ・YouTuberもビビらせる北岳度:★★★★

    ◆感想◆
    北岳の山小屋が荒らされる事件が発生。山岳救助隊が向かうと、そこは厨房や食料が荒らされ、大きな裸足の足跡が…

    いつもの山岳冒険小説だと思っていたら、出だしから「雪男?」が出現するホラーな展開に。
    純粋な山岳冒険小説じゃなくて、山岳ホラー小説でも自分はオールOKイケイケドンドンなんだけど、本当に著者はホラーにしちゃうのか?なんて思いながら読み進む。
    「雪男?」を仕留めようとする猟師や、「雪男?」を撮影しようとするYouTuberなんかも登場して、ひねった展開に。
    はたして「雪男?」は「雪男!」だったのか?
    はたまた雪男のぬいぐるみをかぶった愉快犯の仕業か?(注:そんな人は登場しません)
    それは読んでのお楽しみ。

    山岳救助隊の活躍するシーンや過酷な雪山登坂シーンなんかももれなく描写されて、樋口明雄の山岳冒険小説にハズレはありません。

  • 記録

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00622105

    山岳救助犬&救助隊員、最強バディが活躍する
    人気山岳小説シリーズ最新刊!

    北岳に雪男出現!?
    稜線に消えた白い影を追え!
    大藪春彦賞作家の書下し人気山岳シリーズ

    北岳・白根御池小屋の厨房が破られ、備蓄食料が荒らされた。
    通報を受け、現場に到着した山岳救助隊の進藤と相棒の川上犬リキが
    目撃したのは、人間業とは思えぬ破壊の光景。
    さらに北岳の冬季ルートである池山吊尾根で山岳カメラマンが
    望遠レンズで捉えた稜線には、白い毛に覆われた生物の姿が。
    北岳に雪男出現!?
    写真がブログに掲載されると世間は大騒ぎに。さらに登山客も襲われ……。
    (出版社HPより)

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年山口県生まれ。明治学院大学卒業。雑誌記者を経て、87年に小説家デビュー。2008年『約束の地』で、第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。2013年刊行には『ミッドナイト・ラン!』で第2回エキナカ大賞を受賞。山岳救助犬の活躍を描く「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの他、『狼は瞑らない』『光の山脈』『酔いどれ犬』『還らざる聖地』、エッセイ『北岳山小屋物語』『田舎暮らし毒本』などの著作がある。有害鳥獣対策犬ハンドラー資格取得。山梨県自然監視員。

「2022年 『南アルプス山岳救助隊K-9 それぞれの山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

樋口明雄の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
横山 秀夫
宮部みゆき
塩田 武士
東野 圭吾
東野 圭吾
宮部みゆき
米澤 穂信
今村 翔吾
馳 星周
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×