作品紹介・あらすじ
華麗なる復讐は誰のために?
復讐の女神と化した美しき女優と忠実な運転手
死の輪舞が幕を開ける
生涯五本の長篇しか残さなかった小泉喜美子が、溺
愛するコーネル・ウールリッチに捧げた最後のサス
ペンス長篇。「わたしは〝死に至る病〟に取り憑か
れた」──美人女優は忠実な運転手を伴い、三人の
仇敵への復讐に最後の日々を捧げる。封印されてい
た怨念が解き放たれる時、入念に仕掛けられた恐る
べき罠と目眩があなたを襲う。同タイトルの中篇を
特別収録。
イラスト コテリ
〈目次〉
死だけが私の贈り物
死だけが私の贈り物(中篇)
解説 新川帆立
感想・レビュー・書評
絞り込み
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大女優の死をかけた復讐劇。なんともザ・昭和な設定だった。私は、あまり…
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自分が不治の病に掛かっている。そう思い込んだヒロインが殺人を計画する。ターゲットは、自分の思いどおりにならず、別の男性と結婚したことに嫉妬し、その演技を酷評した、かつての師、深瀧則典、夫と不倫相手だった山関勢千子、そして、妾である母を死においやり、寝たきりの植物人間状態となっていた実の父の3人。この3人を、夫の弟分だった運転手の力を借りて殺害。そして、ビルから飛び降り、後頭部を打ち付ける形で自害する。
ヒロインとヒロインを診察した脳外科医との対話をたまたま聞いた山田刑事は、その医師が、ヒロインが不治の病でないことをはっきりと伝えなかったことから、ヒロインが、自分が不治の病であると勘違いし、殺人に至ったこと。その医師こそが、この連続殺人の原因を作ったとして、医師に迫る。
医師は、ヒロインの運転手が、その夫の死の復讐に協力したという。女優であるヒロインとその夫の間には、役者通しであることから軋轢があり、その軋轢から夫は死に至った。その復讐に手を貸していたという。
不治の病となったヒロインが、自分の人生を台無しにした3人に復讐する。運転手であるヒロインの忠実な部下がその復讐に協力する…というストーリーが一転し、ヒロインは不治の病だと思い込んでいただけ。そのような誤解を生じさせたのは、ヒロインの協力者だと思われた運転手。その運転手による復讐劇だったという真相
どんでん返しといえばどんでん返しだが、古典的というか、それしかないという展開。長編版と中編版があり、中編版では、医師による復讐というよりシンプルな形であるが、ヒロインが解剖されることで、実際は不治の病ではないことが分かる。ヒロインが遺書を残していれば、医師の計画が明らかになりかねないという欠点がある。
長編では、運転手を登場させ、やや込み入ったプロットにし、後頭部を打ち付けて自殺したという展開で、後頭部にあるという不治の病の証拠が分からなくなるという構成。複雑さが増している分、ストンと落ちる分かりやすさはないが、構造上の欠陥は減っている。
とはいえ、長編、中編とも、サスペンスと構造の美しさで勝負するタイプの作品。よくできた作品ではあるが、意外性はそれほどでもない。よく言えばシンプルかつソリッド、悪く言うとやや古いタイプのミステリ。好きか嫌いかというとさほど好みではない。★3で。
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小泉喜美子は出来るだけ読もうと決めているので、読んだ。ここ数年復刊が続いているのは嬉しい。しかしこの表紙と口絵でだいぶ引いた。これ必要かな?読者のイメージを限定してしまうし、私に限って言えば、こういうイメージじゃないんだけど。申し訳ないが、興醒めした。『弁護側の証人』のキレには及ばないし、ツッコミどころもないではないが、タイトルも秀逸だし、女性ハードボイルドと言ってもいいクールさが、とてもいい。違う装丁で読みたかった。
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悪くはないけど、絶賛というほどでもない。後半は流し読み。超高級食材を雑に調理したみたいな惜しさを感じた。レトロお洒落な装丁に惹かれて読んだので、お母さんが島田髷で出てきた時はちょっとあれ?って思った。いや、このイラストとデザインはめちゃめちゃ好きだけどね。
著者プロフィール
1934 - 1985。推理作家、翻訳家。1963年に『弁護側の証人』でデビュー後、多くの作品や翻訳を手がけたほか、ミステリーに関するエッセイなども。歌舞伎好きとしても知られ、論考を残している。
「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」
小泉喜美子の作品
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