有栖川有栖選 必読!Selection8 結婚って何さ (徳間文庫)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198948054

作品紹介・あらすじ

アウトロー女子×2 一か八かの逃避行
殺人って何さ?
アタシら絶対やってないっ!

<笹沢左保サスペンス100連発>第8弾は、多彩
なバラエティを誇る笹沢作品でも異色中の異色
ユーモアサスペンス「結婚って何さ」。
上司のイチャモンに衝動的に退職してしまった
非正規雇用のヤンチャな事務員コンビ真弓と
三枝子。自棄酒オールを決め込んだその夜、勢
いで謎の男とホテルにシケ込む。が、翌朝男は
密室状況で絞殺されていた……。
どんな逆境も逃げきれば正義! 生きづらさを
抱えた全ての女子に捧げる殺しの遁走曲(フー
ガ)。

トクマの特選!
イラスト 慧子

〈目次〉
Introduction 有栖川有栖
結婚って何さ
Closing 有栖川有栖

感想・レビュー・書評

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  • 上司のパワハラに怒って退職した非正規雇用のヤンチャ事務員コンビ・真弓と三枝子。ヤケ酒に走ったその夜、バーで知り合った男と旅館へ泊まった。だが翌朝、その男が密室状態で絞殺されていて──。

    内鍵がかけられた離れは密室!状況はクロ!でも、自分たちは絶対に殺ってない!犯人扱いされるならと、一か八かの逃避行へ飛び出した女たちを描くユーモアサスペンス。主人公の真弓が魅力的。妥協じゃなくて、苦しんでも納得して生きていたい。真実を知るべく疾走し続ける彼女の姿はロックだ。

    「要するに、適当に生きる、ってのが、あたしは気に喰わないな」
    「正しい者が必ずその扱いを受けるとは限ってないわ。それ程、世の中を信用しちゃあいないもの」
    こんなセリフがどんどん飛び出してくるのがカッコいい。一緒に飛び出した三枝子のことを気遣いながらも、渦中へと飛び込んでいく思い切りの良さも最高。

    追われつつ無実の証明を探していたら、更なる事件へと巻き込まれていく展開がスリリング。密室や事件の仕掛け自体はシンプルと思いきや、それを解いてからが本番。タイトル「結婚って何さ」という難問がぶつかってくる!ミステリと結婚というテーマがマリアージュする終盤には唸るしかない!

    ぼくも結婚とか恋人という関係性にいろいろ考えることが多いけど、このセリフがスパッと断ち切ってくれて気持ちよかった。深い仲じゃないからできることもあるんだなと。
    「夫婦みたいに誤魔化し合ったり、嘘をついたりすることはないんだ。胸にあるものを吐き出して話し合えばいい。君の話に僕が耐えられなかったら、このまま別れりゃいいんだろう」

    まさかのアレが手がかりになってくるミステリは初めてだし、今後もおそらくないだろうなってところもよかった。真弓たちの逃避行のスピード感に煽られて、一日で読んでしまった!ぜひ駆け抜けるように読んでみてほしい一冊。

    p.106
    「大人達の方が割り切ってるな。あたし達には割り切れない。だから苦しむ。苦しむと大人達は無節操だとか非常識だとか非難するのよ」

    p.220
    「反抗だろう。真実を知ろうとしない人間に対する。不安と惰性の世の中に耐えろって言っても無駄だ。見ざる聞かざる言わざるは御免なんだ。何かが欲しい。結果だけが欲しいんじゃない。自分がうち込めるものが欲しいんだ。──ただそれだけさ」

  •  ちょっとしたきっかけで会社を辞め、やけ酒を飲んでいた遠井真弓と疋田三枝子という二人のOLが事件に巻き込まれる。
     バーで出会った男と一緒に高級ホテルに泊まるが、朝になると男が死んでいる。二人の女性は逃走。この殺人は、密室トリック。二人が犯人でないのであれば、どうやって密室内で殺人が起こったのか。
     この密室のトリックは、死体のすり替え。二人の女性と一緒にホテルに行った人物は犯人で、他の場所で殺した死体を、二人が風呂に入っている間に持ち込んだというもの。
     この作品全体のプロットは交換殺人。伴早苗は夫である伴幸太郎を、矢ノ倉文彦は妻である矢ノ倉涼子を、それぞれ殺害したいと考える。この二人は、同級生であったが、つながりはない。交換殺人を計画するが、そのつながりを、郵便局員である森川という男に見つかる。ここに、郵便法58条という条文が出てくる。
     いずれも、著者が郵政省保健局に勤務し、労働組合の執行委員でもあったという経歴が生かされているという。
     正直、郵便法58条うんぬんの知識は別にいらない知識でもあるが、郵便局員が、職務により、つながりのない2人の人物のつながりに気付いてしまうという展開は面白い。その郵便局員が、伴早苗と矢ノ倉文彦の同級生というのは、御都合主義的ではある。
     本格ミステリ的な要素は、その程度。これに、二人のOLの逃走劇というサスペンス的要素を絡めるが、そのうち一人を第1章で事故死させ、途中で、別の男性(水木隆二)を絡める。
     遠井真弓が東京から河口湖に向かう途中で、たまたま伴早苗に出会い、たまたま水木隆二に出会うというのも御都合主義
     郵便局員の尾形という人物は、伴の家政婦がペラペラ内情の話すのも、時代といえば時代だが、御都合主義といえば御都合主義かな。
     結婚って何さというタイトルにつながる遠井真弓のキャラクターはそれなりに魅力的ではある。
     トータルで見ればどうか。本格ミステリとして面白みもあり、テンポもいい。しかし、御都合主義的な要素も多く深みはない。★3かな。

  • 使われる言葉そのものは古いけれど、文章が持つ疾走感は不変のものなんだなと。

  • たしかにタイトルからは予想もできないミステリでした。逃走サスペンスとしても面白かったです。

    時代を感じさせる部分はたしかにありましたが、わたしはそれを古さというよりはTVドラマを観ているような懐かしさを感じました。

  • 女子二人が酔っ払って男性と知り合って三人でホテルというか旅館というかに泊まって泥酔しつつ寝て起きたら男性が殺されていた、と。現場はあからさまな密室。このままでは犯人にされてしまうので逃走。
    オーソドックスな感じではありますが、1960年の作品なんですね。文体がいかにもそれっぽい感じ。これまでに何度もドラマ化もされてるんだそうで、とても人気があったんだろうなとは思いました。けどさすがに今読むとちょっと・・・まさかそのまんま交換殺人が真相とは逆に思わなかった。当時は画期的だったのだろうか?
    そして今回新装版のようで。あらすじもアウトロー女子二人が・・・とか書いてあって表紙もいかにもそれっぽいですが一人は速攻で退場するし、そういうミスリードみたいなのはちょっとずるいな、とw

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著者プロフィール

1930年生まれ。1960年、初長篇『招かれざる客』が第5回江戸川乱歩賞候補次席となり、本格的な小説家デビュー。 1961年『人喰い』で第14回日本探偵作家クラブ賞を受賞。 テレビドラマ化されて大ヒットした『木枯し紋次郎』シリーズの原作者として知られ、推理小説、サスペンス小説、恋愛論などのエッセイ他、歴史書等も著し、380冊近くもの著書がある。2002年、逝去。

「2023年 『有栖川有栖選 必読! Selection11 シェイクスピアの誘拐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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