異世界で全裸勇者と呼ばないで(1) (リュウコミックス)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784199507823

作品紹介・あらすじ

装備できるのはタオルだけ、ほとんど【全裸】で異世界冒険⁉

ある日、温泉へ入浴中に女神の呼びかけに応えてしまい、
【全裸】のまま勇者として異世界転移させられてしまった幡上瑠奈。

しかし、女神から与えられた異世界転移の恩恵は【温泉スキル】と高い防御力だけ…
使い方もわからないスキルをなんとか駆使しバスタオルだけは手に入れたが
あまり状況は変わらずほぼ【全裸】のママ…。

そんな困り果てた状況に『裸で冒険なんてできるわけないでしょお!』と
勇者になる事を拒む瑠奈であったが…、魔王復活を企む変態魔女に【呪い】をかけられてしまい、
現代へ帰還できない状況に陥ってしまう⁉

装備はタオル一枚の全裸勇者・瑠奈と女体化勇者・クリス、謎の魔法使いティア、
色々とワケアリな冒険者たちが贈る全裸系異世界冒険コメディが開幕!

コミックス限定描き下ろし漫画『女体化勇者のドキドキな一夜』も収録‼

感想・レビュー・書評

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  • E:バスタオルからはじまって、おわっちゃうかもしれないファンタジー。

    ところでこの断りの文句が必要なのかは自分でも多少疑問ですが、一応先に申し上げておきます。
    本作はさほど長文ではないものの、主人公の置かれた現状を端的に指し示すタイトルの持ち主です。
    とくれば、あたかも原作付きコミカライズを連想させますが、あくまでもオリジナル作品です。

    とは言え「小説家になろう」系統の作品などではすっかりテンプレ化し、お約束となった「異世界召喚ファンタジー」のフォーマットについでとばかりに乗っかった作品であることには変わりはありません。
    もはや自明の理! とばかりに細かい説明を放棄してくる導入はもはや潔し! でしょうか。

    そんなわけで入浴中にいい加減すぎる女神にいきなり拉致されて「勇者として異世界を救ってきてください」とタオル一枚の素っ裸で放り出された、悲しすぎる女の子「幡上瑠奈」が本作の主人公です。
    一応女神からめったなことでは傷ひとつ付かない高防御力と温泉関連なら何でも具現化できるというチートスキルを成り行きで与えられたものの、自分の身は守れても乙女の尊厳を守れるかは微妙なところ。

    なぜならば――イイ趣味をしている魔女に呪いをかけられて、バスタオルしか装備できないほぼ全裸で街中であろうと過ごさないといけないというトンデモな状態異常が常態化してしまったからです。
    ここまでで第一話。ペアになっている現地出身のもうひとりの勇者の顔見せや自分が何をできるかの基本的な確認を含め、コミカルベースで50P強でまとめるテンポの良さには目を見張るものがあると思います。

    なお現地のモンスターは血肉通った生き物というより魔法生物といった風に描かれています。命を奪う痛みなどはカメラから外して、ライトでえっちなコメディの方に焦点を当てているのも特徴です。
    戦闘面にもう少し言及しておくと、矢面に立つもうひとりの勇者「クリス」のサポートとして主人公は強化や回復に当たるほか、ほとんどダメージが通らないのでいざとなったら盾役にもなれるのですね。

    とは言え、作品のウリが戦闘ではないことは自明です。現状ではエッセンスといった風でしょうか。
    一話を読んだ時点で、この世界は命をやり取りする殺伐とした世界じゃないんだろうなあって理解させる作りになっていますし、肌面積が非常に高くても過度なエロ方向には走らないことを保証しています。
    全般的に、肉感を描きつつもなんだかほのぼのしているこの絵柄あってこその作品と思う次第です。

    補足しておくと、タイトルのせいもあってか掲載時にはセンシティブな作品としてなぜか扱われていますが、その辺の線引きについては保険といっていいと思います。
    結構際どいシチュエーションは散見されますが、全年齢向けの範疇に収まるとは思います。タイトルがタイトルなのでアニメ化の際に変更になりそうと思いましたが、いささか気の早すぎる心配でしょうね。

    今後はさておき、話の凹凸もしくは肝が何になるかといえば、防具として心もとないにも程がある「バスタオル」一枚で戦わされ、衆目にさらされる主人公は元よりですが……。
    帯に描いてあるので大丈夫だと思いますが、一応ネタばらしをしておきましょう。

    作者の「森下真央」先生の代表作は、やはりタイトルから内容が周知かもしれない『幼なじみは女の子になぁれ』です。このタイトルを出しただけで察していただけると思いますが、主人公のパートナーである現地出身の勇者「クリス」はいわゆる「TS(女体化)」してしまった元男子です。

    裸を見てしまった主人公相手にこんなこと言い出せるはずはありません。
    同性だからこそな裸一歩手前の付き合いが許容されてしまいました。違う意味で防御力が低すぎる女の子と生活を同じくする羽目になって、いつかは……と思いながらそういう関係性に甘えてしまいます。
    そんな煩悶と葛藤を抱えるストイックで真面目な元男子とはとても魅力的だとは思いませんか?

    役得ではないですよ?
    クリスもクリスでしっかりひどい目に遭ってくれるのでいじられ役が分散することになり、まじめな読者にとっても許されると思います。もちろん、ふたりに呪いをかけた元凶である魔女その人にしても。

    魔王復活を目指しているはずの魔女が主人公たち勇者を趣味丸出しで弄ぶスタンスを取っても、まぁファンサービスになるしな……という哀しくも楽しい事情が見え隠れしますし。
    読者目線に立てば、作品を成り立たせた功労者ってことになるんでしょうね、たぶんじゃなく。

    というわけで同じく魔女の被害者である三人目を仲間に加えようかというところで次巻に続くようです。
    クリスを抜きにすれば生粋の女子ばっかりのパーティーになりそうですが、主人公がほぼ全裸なら男性を仲間に加えるわけにもいきませんし、女子がメインを張るのも納得だったりするのかもしれません。

    ついでに言えば題材が題材なので入浴シーンを無理矢理かつ無理なく挿入でき、赤面する女の子のはにかんだり物憂げだったりする表情を迷いのない線で描いているのが強みかなと思ったりもしました。
    巻末描き下ろしのおまけ漫画4Pは嬉し恥ずかしの同衾展開でしたが、双方が恥じらうのがいいのです。

    以上。今後の展開は未知数ながら、発想としては思いつけても続かせるのが難しいネタを形にしているだけで私の中でかなり評価が高いです。
    全裸あるある、女体化あるある、両者のシチュエーションを組み合わせていくだけで話を綿々とつなげていけそうなポテンシャルはあると思います。後者は早々あってたまるか! ってツッコミは認めますが。

    いずれにせよ本作の一番の評価点は際どいネタを不快に思わせずにするりと飲み込ませるバランス感覚なのだと思います。人によりますが下手すると単なるセクハラに堕してしまうところを上手く避けている。
    ギャグ補正と言うほどぶっ飛んでおらず、羞恥心と常識は働かせつつ、コミカルでゆるい雰囲気で流すのと、ネタがデリケートなことを自覚してあんまり当てこすりがないのが勝因(?)かもしれません。

    それと森下先生が得意とされる「TS」をより輝かせるため、相性のいいメインのネタとして「全裸」をチョイスした風でもありますので、クリスの方にもしっかり画面が回ってきそうで嬉しい限りです。
    これは「TS」ジャンルのファンにとっても見逃せないと思ったりしました。
    両者には羞恥心って共通点があるので、なるほど言われてみれば相性がいいんでしょうね。

    最後に、いわゆる「謎の光」抜きで局部などを隠している姿勢のバリエーションにも注目したいです。
    すこし涙目になっても嫌らしさというより躍動感や健康美に繋がっています。よってこの漫画だからこそ描けるちょっと人の悪い楽しさを存分に堪能できる、作劇に合致した作画であると感じたのでした。

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著者プロフィール

7月9日生まれ。千葉県出身。2013年、講談社イブニング誌上にて「幼なじみは女の子になぁれ」で連載デビュー。その後BookLive NINOにて「ただし俺はヒロインとして」を連載。得意ジャンルはコミカルなTSF(性転換モノ)。好物はクリームソーダ。趣味はYouTube配信。

「2022年 『異世界で全裸勇者と呼ばないで(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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