科挙、官吏制度のある中国の一国家を舞台に、記憶力の高い女官茉莉花が、その才を皇帝に見出され、成長し成功していく物語、というところでしょうか。
タイトルから受ける印象よりも、実力で結果を出していく作品になっていく気がします。
◆もはや白馬の王子様を待つシンデレラはいない
女の子の物語の源流には、「シンデレラ」があると思っています。
本作もその系譜なのかな、というのが第一印象です。
実際、皇帝という高貴な身分(しかもイケメン)に見出されていく展開のようです。
とはいえ、本作は「官吏」になる物語。
中国の科挙は非常に難しい実力試験制度であり、それを通って官吏となるなら、ちゃんと実力を伴った上で引き上げられていくのでしょう。
白馬の王子様を待つ物語は、「少女革命ウテナ」や「キルラキル」でとどめを刺されたと、私は考えています。
誰かに引き上げられるにしても、そこへ行き着くまでの実力を持ち、その実力を得るまでの才能と必死の努力を前提条件としている。
ただ幸福が訪れるのを座して待つシンデレラは、もう現代物語にはいないんだなぁと感じました。
◆ギフテッド
茉莉花は一度見た物を忘れないという、驚異的な記憶力を持っています。
覚え方が映像記憶かどうか等詳細はわかりませんが、所謂ギフテッドの域のもののように見えます。
「普通の女の子が主人公」とかそういうものでなく、まごうこと無き天才が主人公の物語ですね。
現状、茉莉花はその力を十全に活かし切れてはいないものの、かといってギフテッドゆえの周囲との問題も、さほど見受けられません。
まぁ日本の初等教育のように、国語も算数も、あるいは体育や美術等もやって、さらにみんな仲良く横並びに、みたいな風潮もなさそうな社会なので、ギフテッドの摩擦は物語に乗ってこないかもですね。
茉莉花自身の「周囲に期待させ過ぎないようにしたい」という内面の問題が、それにあたるのかな。
「官吏になって皇帝を支える」というのは、「普通」の生き方を超えたところにあるものなので、「普通」との摩擦は物語にそぐわないのかもですね。
◆恋愛描写
現状茉莉花から皇帝への恋愛感情は無いようですが、それはそれとして、「見た目の良い異性にグイグイ来て欲しい」という読者側の欲求は、男女共にあるんだなぁ、という印象でした。
(恋愛感情の有無はともかく)グイグイ来るパターン、男女どちらのコンテンツにも一定数ありますよねw
主人公は相手のこと恋愛的にそこまで意識してないし、なんならグイグイ来られて困っちゃうな~、という構図、既視感ありありでちょっと笑ってしまいましたw
真面目に頑張るぞと返す主人公に、かえってドギマギしてしまう相手。
浪漫なんでしょうね。