死と身体―コミュニケーションの磁場 (シリーズ ケアをひらく)

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  • 医学書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260333665

感想・レビュー・書評

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  • 死者の言葉を代言する人間は信用してはならない、いかに自分の体の動きを細かく割ることができるかという話が印象に残りました。

    (以下引用)
    話をむやみに簡単にしたがる人間は、どの組織でも、たいていは、いらぬ騒ぎを引き起こすトラブルメーカーである。逆に「話を複雑なままにしておく」ことのできる人間を私たちの社会は「清濁併せ呑む度量」とか「融通無碍の人」と呼称して、これを敬するという美風がある。こういう人に、どうしても妥協成らない対立を預けておくと。「では、両論併記で」とか「では、継続審議で」と言って、対立する提案を「同じひとつの袋」に放り込んだままにしておく。不思議なもので、そんなふうにしていると、いつの間にか解決不能と思えた難問が片付いてしまっていたりする。(P.40)

    教師の仕事というのは極論すればひとつしかない。それは生徒の先手を取って先回りすることです。生徒に「この人は何を言っているんだろう?」という疑問を抱かせて「後を追わせる」。ただそれだけのことなんです。(中略)だから教師が生徒に「先回りされたらおしまい」なのです。「内田はこのあとでこういう結論をもっていくんじゃないか。こういう事例を引くんじゃないか」と予測して、そのとおりに僕がしゃべったら、その瞬間に聞く人のテンションはどーんと下がってしまうはずです。(P.46)

    相手のことばが自分に届きましたよということを相手に示すいちばん効果的な方法は、同じことばを繰り返すことです。同じ言葉を繰り返すのは、意味性のレベルではなんの意味もないことに思われるでしょうが、じつは「あなたのメッセージがわたしに伝わりました。コンタクトが成立しました。パスが通りましたよ」ということを示すいちばんいい方法です。(P.84)

    ユダヤ人にこんなことをさせているドイツ人のどこが非倫理的かというと、それは「自分が逆の立場になることを想像できない」ということですね。つまり「ドイツ人であるがゆえに歯ブラシで通りで靴を磨かせられている状況」を想像することができないという想像力の欠如こそが、ここでのドイツ人の非倫理性を条件付けていることになります。(P.158)

    靖国神社にA級戦犯が合祀されていることを「けしからん」という人がいますけれども、そういう「正論」は神社本来の機能に即して考えたら、変ですよね。A級戦犯というのは「日本に災厄をもたらした悪鬼のたぐい」だと考えると、その悪霊たちが未来の日本に祟りをなさないようにあそこで鎮めているのである、というのは筋の通った考えですから。(P.213)

  • 第5章「死者からのメッセージを聴く」“死んでいるけど死んでいない”という感覚、死者とのコミュニケーションという点で興味があって読んだ。“連絡を受けるまでは、受け手の中では死んでいない”というあたり、インタビュー結果と合わせて分析したかったな…

  • 釈徹宗氏のオススメということで手に取った一冊。
    途中難しくなりかけて投げ出しそうになりながらも読み切った。
    他の著作と同様いかにも内田先生らしいお話の数々、
    やはりライブでうかがってみたい。

  • 特に「体感」ということばが読者である私の体感として残った。講演の録音から起こした文章をもとにしたということで、いつもより「塩抜き」がきいてるのかな。読んでいて感触がよかった。他の本やblogで何度も書かれている話題が登場するけれども、あとがきにあるように「同じ話」から引き出される知見が少しずつ変化しているので、今回も楽しめました。最初図書館で借りて読んでいたけれど、2004年初版ということでその後の本に分かれていくエッセンスがつまっている感じが読み進めるにしたがってしてきた。なので欲しくなって買ってしまいました。すでに読んだ「武道的思考」「私の身体は頭がいい」などの武道論を近いうちにまた開きたくなった。

  • 最初は難解! 後半は愉快! 

    樹先生の お化け感! よくわかりました。

    その後、「ステキな金縛り」見に行ったんで、こりゃまた愉快!でしたね。

    あらためて、レヴィナス 読みます!

  • [体の声を聴く]

  • 人は死者とも語り合うことができる。というより、他者とコミュニケーションをとるということは、死者とコミュニケーションをとることができるからだ。みたいな。逆に逆に考える。

  • 図書館所蔵【114.2UC】

  • 内田樹の本ばっかり読んでる。
    最近は本自体あまり読む余力がないけど。
    ここから他の本へとつなげたら良いのに、気力体力が伴わない…

  • 現代版の奥義書。タイトルからして手に取りにくい気もするが内田樹が一貫して主張しているコミュニケーション、身体論の内容が書かれている本です。内田本の中でベスト3に入るくらいの内容の濃い本でした。<キーワード>ラカンの人間は前未来形で過去を回想する、フロイトのトラウマの治癒、武道の時間の先取り、割る(細分化する)こと、コミュニケーション感度、身体は頭がいい、他者との折り合い@レビィナス、交換@レヴィ・ストロース、幽霊、死者

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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