- Amazon.co.jp ・本 (614ページ)
- / ISBN・EAN: 9784272520992
作品紹介・あらすじ
日本、中国、韓国、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド等の、国際人道法、国際刑事法、日本近現代史などを専門とする第一線の研究者たちが、「勝者の裁き」とされる東京裁判を新たな視点から分析する。
感想・レビュー・書評
-
東2法経図・6F開架:329.6A/Ta84s//K
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
副題にあるとおり、東京裁判で「何を裁き、何を裁かなかったのか」そしてさらに、どういう根拠で東京裁判は行われたかということについての丁寧な考察。東京裁判に参加した各国判事の意見等が照会されており、とても興味深い。
東京裁判は、国際公法に照らして日本が裁かれたのではなく、連合国側による「勝者の裁き」として、ある意味恣意的に運用されたという指摘。日本がアジアでの戦争を始めた時期には、侵略戦争は犯罪であると言う国際法上の合意はなされていない。しかし、戦争で勝ったものが、あたかも国際法上の犯罪があったかのように扱い、戦後の枠組みまで恣意的に作り上げた。
米国戦略に利する、日本軍が起した犯罪「731部隊」の存在については裁判から抹消され、その後の米ソ対立の武器として温存される。また、東京裁判自体が東西冷戦のなかに飲み込まれていった感もある。
ただ、言えることは、現在ウクライナで起きているロシアの強制的なクリミヤ編入。チベットでの中国の横暴。そして、台湾への強引な圧力。これらは明らかに自国領土拡張のための侵略のための戦争であり、東京裁判で確立された侵略のための戦争は犯罪であるという基準に照らして、犯罪であると断罪して良いと思う。
また、さらに言えば、現在それらの犯罪を犯している国は、第二次世界大戦後の戦勝国クラブともいえる国連の安全保障理事会常任理事国であり、それらの国は現在の枠組みでは何やってもやり放題だというのが非常に明確になってきていると思う。
本書では全く顧みられていないが、個人的には、もし平和に対する罪というのが成立するのであれば、少なくとも日本のマスコミ(当時は新聞社)は、東京裁判の経緯を野次馬的に伝えるのではなく、被告席に座るべき立場であったのだと思う。そして、そのとき被告席に座らず生き延びたことが、現在のマスコミ(ジャーナリズムでは無い)の基本的性格を作り上げているのではないかと思う。