ウィキペディアで何が起こっているのか 変わり始めるソーシャルメディア信仰
- オーム社 (2008年9月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784274067310
作品紹介・あらすじ
ウィキペディアを編集しているのは誰なのか?管理しているのは誰なのか?ウィキペディア日本語版、その運営は謎に包まれている。本書では、ウィキペディアにまつわる疑問を明らかにし、さらにはソーシャルメディアが抱える問題に切り込んでいく。
感想・レビュー・書評
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ウィキペディア信仰に対する警鐘の本です。一見、立派な百科事典ですが、仕組み・管理体制はかなり脆弱です。
あらためて、ウィキペディア内の各種論争を見てみました。本書執筆時点(08年7月ごろ)で、Wikipedia日本語版の管理者は50-60名で、人数が少なく、脆弱で危ないと警鐘していました。ところが、今日現在(3月23日時点)、37名まで減っています。
映画スターウォーズエピソードI〜IIIを彷彿させます。悪意のある書き込みをする人は、書き込みブロックされてもクローンを量産し、攻撃してくる。対する平和を愛し民主主義を守るジェダイ騎士団。今現在、悪のクローン軍団に押され気味です。
ジェダイ騎士団として参戦したいところなのですが、ウィキペディア管理者というのは、相当骨の折れる仕事です。とてもじゃないですが、できません。現管理者の人たちの奮戦を祈るばかりです。
目次を全部引用すると長いので、抜粋します。
01/ウィキペディアとは
ウィキペディアの何が画期的だったのか
ウィキペディアの運営母体
ウィキペディアのユーザー
ウィキペディア管理者とは
ウィキペディアの法律、方針文書
ウィキペディアの対外窓口
02/ウィキペディアで起きた事件
日本語版の方針とガイドライン
ウィキペディアでできる編集操作
行動についてのトラブル事例
楽天証券・西和彦・女性モデル・声優ページ、ジミーウェールズ・初音ミク・ちゅるやさん・引用禁止措置・静岡新聞
IPユーザの匿名性は存在しない
ソニー vs. マイクロソフト編集合戦・省庁・長妻代議士・イオンド大学
問題視されるアカウントユーザ
03/ウィキペディアの管理は問題山積み
治外法権ウィキペディア
ウィキペディアと2ちゃんねる
ウィキペディア管理者の誕生
特別な存在ではない管理者
ウィキペディアは本当に中立を維持できるのか
その書き込みの責任は誰にあるのか
独裁者を嫌う思想
ソーシャルメディアに内在する欠点と次なる脅威
情報は一度は公開される
その後のウィキペディア
04/それぞれが考えるウィキペディア日本語版
管理者Tomos氏、Ks aka 98氏が語るウィキペディア日本語版の姿
アンチウィキペディアの立場から、吉本敏洋氏に聞く
山口貴士弁護士が見るウィキペディア日本語版
05/変わり始めるソーシャルメディア信仰
そもそもソーシャルメディアとは
ユーザーは企業にコントロールされなくなった
企業と対立するソーシャルメディア
ソーシャルメディア対マスコミ
ソーシャルメディアが信仰に
ソーシャルメディアが悪用され始める
公平性とは何か
公平性への解決策、ウィキペディアの方法と限界
ネット実名への議論
変わり始める、ソーシャルメディアと企業の関係
今、ソーシャルメディアに必要なこと詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2008年時点での日本語版ウィキペディアの実情、ウィキペディアで起きた事件。
ある意味まだ、混沌とした状況。 -
ウィキペディアは確かに便利です。ネットを通じた新たな知の世界です。
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「誰でも気軽に参加できる百科事典」
ウィキペディアの実態を詳細にまとめた一冊。
ウィキペディアによる
企業・行政の不公正な書き込みの実態、
2ちゃんねるさながらのユーザーの書き込み、
ウィキペディア記事を裁判の証拠資料とした事例の記述など、
ウィキペディアに関する数々の事例が紹介されており、
現在のウィキペディアの課題を浮かび上がらせている。
ただし、この著書は
「記述内容の信頼性に問題」
「プライバシーを保護できないシステム」などと
ウィキペディアの現状・課題を
ただ語って終わるのではなく、
権力やメディアに関する話に踏み込んで
論が展開されており、
メディア論の著書としても
非常に良質なものになっているように感じた。
(特に、表面的にはインターネットと対立する
企業・マスメディアが
社会情勢の変化に合わせて融和していくとした
著者の分析は秀逸だと思う)
もちろん、この本は学術書ではないので、
学問的な妥当性については疑問の余地があるが、
適度な読みやすさと内容の深さの両方を兼ね備えているので、
ネットの問題、メディアの問題に興味がある人は
一度呼んでみることをお勧めしたい。