オペラ対訳ライブラリー マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ/レオンカヴァッロ:道化師
- 音楽之友社 (2011年7月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784276355743
作品紹介・あらすじ
イタリア語とオペラに精通した著名な訳者による、新訳・決定版です。イタリア語と日本語が同時に目に入ってくる画期的なブロック構成、オペラを聴きながら内容が理解できる工夫がされています。精読派も満足、語学のテキストとしても最適です。豊富な訳注も入れました。
感想・レビュー・書評
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○「カヴァレリア・ルスティカーナ」といえば、間奏曲だけが有名で、マスカーニという人もよくわからない・・・ということでこの対訳本を読んでみました。このシリーズは原語(イタリア語)と日本語が比較できるように載っているのが大変ありがたいところ。豊富な注は、訳文では伝えきれない、イタリア語の微妙なニュアンス、文法などが書かれていて、精読したい人にもしっかり対応しています。
○この物語自体は、とんでもない愛憎劇ですね。愛を誓った男女は、やがてそれぞれ別々の家庭をもつのですが、ふたたび結ばれようとする。しかしそれは許されない。それこそがカヴァレリア・ルスティカーナ(直訳すると田舎の騎士道)、つまりその土地のルール。ただ、浮気をした男が勝ち目の薄い決闘を覚悟し、さらに死を覚悟して変化するあたり、ぼくにはちょっと分からないところがありましたが、愛とはそういうものでしょうか。
○レオンカヴァッロの「道化師」もまた愛憎劇ですが、こちらはその愛憎を劇中劇を使って描き出すというところが面白いですね。劇団の団長カーニオは、その劇団の女優でもある妻の不義に激怒します。浮気相手の名前を妻に吐かせようとしますが、妻は浮気相手を愛しているので名前を吐こうとしない。そんな滅茶苦茶な状態で劇中劇が始まるのですが、妻は激昂したカーニオに刺され、死に際になって彼の名前を読んで助けを求める。そして、その助けと同時に現れた浮気相手もカーニオによって切りつけられて殺されて、「喜劇は終わりました!」と、幕が引く。
○この話は、どちらもヴェリズモ・オペラの傑作であり、マスカーニもレオンカヴァッロも人生を描き出そうとしたと言えるでしょう。つまり、当時の人たちにとってはこういう「人生」はあり得ない話ではなかったか、ごくありふれたものだったのでしょうね。人物の関係や物語自体が分かりやすいので、オペラはよく分からんというぼくのような人も楽しめるのではないかと思います。「えっ?こんなひどい話でいいのか」と思うかもしれません。
○余談ですが、最後のシーンは、カーニオが「喜劇は終わりました!」のほうが劇的だと思いますね。劇中劇の聴衆が、女優(妻)を刺殺したカーニオを取り押さえようと迫るなかで、カーニオがこのセリフをいった方が、劇的な気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示