人間失格?―「罪」を犯した少年と社会をつなぐ (どう考える?ニッポンの教育問題)

著者 :
  • 日本図書センター
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784284304436

作品紹介・あらすじ

少年たちとのつながりの糸。あなたは紡ぎますか?それとも断ち切りますか?

感想・レビュー・書評

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  • なにこれうざい。
    内容を箇条書きにして見ればまともなことを書いているとは思うけれど、子供への目線が単に社会学的な関心のみを向けているようにしか感じられなくて不愉快。
    「新型うつ」をこきおろす精神科医を見るときと同じ気分。

    少年の凶悪化が叫ばれる昨今ですが統計をきちんと見ればそうでもないんですよという、もういろんなところで指摘されまくっている説明から入るので、「子供をきちんと見ましょう」的なものを期待したらそうでもなかった。

    見方が「最近の若いもんは」に近い。
    子供をとっかかりにして社会を論じているだけで、子供を見て書いたものじゃない。
    あと書き方がまどろっこしい。
    このジャンルにうとい人向けの懇切丁寧な説明なんだろうけど、どこでも読めるよくある言葉を延々と繰り返すから飽きる。

    昔の不良はきちんと筋が通っていた、今の子は幼稚でろくにコミュニケーションも取れないから、断れずに群れてはいても集団ではないとか、そういう類の、不良をかっこいいと思っていた世代の価値観をそのままひきずっているかのようだ。
    昔の不良が優等生をさげすんだのと同じように、今の子が同情を引きたがる類の、注意してくれる人がいることを前提とした反抗を好まないのだとは思わないんだろうか。

    子供を育てたいというより、社会をまっとうにしたいのだろうと思う。
    それはそれでかまわないんだけど、口調だけは子供のためっぽいのがイラつく。

  • 一時話題になった少年法改正問題。気にはなっていたが、今までじっくり考える機会がなかった。本書は、少年法論議の基本的な枠組みであろう「国親・保護・矯正・包摂」的発想と「大人=子ども関係のフラット化・自己責任・厳罰」的発想を提示しつつ、世間の大勢は前者から後者へ移りつつあるとしている。そしてその背景に、価値観の多様化(普遍的価値への信頼低下)→個人の価値観のゆらぎ→具体的な身近な他者による承認欲求→自分の属する仲間集団への過度の心理的依存→異なる個人・集団に対する共感・想像力の低下→包摂より排除、というストーリーがある。これが著者の見立てである。その妥当性については、もう少し自分なりによく考える必要があると思うが、少年法論議を入り口に、めざすべき社会像を考える素材には十分になると思う。

  • 読売新聞の広告で見て題名に引かれて購入しました。
    ・・・・が
    かなり興味深い内容でしたね。
    一昔前、神戸の事件や長崎の事件など「少年」が起こした事件が多く報道された時期がありました。その頃から「少年法」の改正が行われ厳罰化が進み、そして社会が少年たちを「今時の若者」から「よくわからない異質なもの」に見るようになってきました。
    皆さんも昔の不良より、今の若者は「よくわからん」気がしませんか?
    ヤンキーマンガの不良は今や絶滅危惧種ですよね
    そんな、少年を社会学の視点から見たのが本書です。
    皆さん、少年犯罪って増えてると思います?
    実は減ってるんです。逆に報道は過激になってますが。
    少年犯罪って凶悪になってると思いますか?
    実は昔とさほど変わってないんです。まるで今の事件は昔より過激のような報道はありますが。
    そうなんですよ。
    ほとんど、報道される表面上しかほとんどの人は見ていないんです。
    それで恐怖を感じ過剰に反応し過激になっていく。
    その結果、少年法が改正され厳罰化の方向へ・・・・・
    でもそれは一面にしか過ぎない。
    少年側から見たら!
    社会側からみたら!
    それを論じるのが本書。
    納得の一冊ですが、「答えはありません。「正しい方向」も示しません。
    ただヒントや考える問題を提起してくれます。
    事件を起こした少年たちがみんな特別なのではありません。そんな少年を排除すれば良い問題ではありません。
    自分の子供が「絶対にそうはならない」と言い切れる人はいない筈です。
    でも人は異質なものを排除したがります。それが明日の自分かも知れないのに・・・・
    それでもあなたは、排除しますか。
    わけのわからない少年たちを排除しますか、それとも・・・・
    震災で「絆」や「つながり」が再認識された今、いい方向へ向かえば良いなと思う今日この頃です

  • 閲覧室  368.7||ドイ

  • 昨今問題視されている少年犯罪と、現代社会について社会学の視点から考察した本書。

    凶悪化しているといわれる少年犯罪は、少年の稚拙さが犯罪を引き起こし、その稚拙さゆえの凶悪化、つまり犯罪の稚拙化である。
    また、少年犯罪の厳罰化は、本来の少年法の目的━人間として未熟で庇護すべき少年を正しく更生させるというものから離れ、少年といえども責任を負うべき一人前の人間という立場で、その責任を追及し、ひいては安全を脅かす加害者を排除しようとする動きである。つまり、少年が犯罪を起こしたのは少年個人の問題であって、私たち社会の問題ではないとするものだ。

    ここに著者は大きな問題を見てとっている。
    自分と相容れないもの、均質なものばかりでまわりを取り囲もうとした結果、一体何が起こっているか。わずかな差異を糾弾し排除し、それが自分の身に降りかからないように小さな世界での人間関係に全てのエネルギーを使い果たし疲労困憊する。今の若者たちの「キャラ演じ」「いじめ」の構図そのものではないか。
    異質な他者との関係性を持とうとすることこそが、異質な視点から自己を相対化でき、閉じ込められた内部だけの人間関係に依存することなく、多様な人間が多様に生きていきやすくなる、共感を越えた社会的連帯が生まれるはずなのではないか。

    今までの少年法は、被害者の視点というものが欠落しており、現在被害者の立場を考慮した方法がいろいろ考えられているという点は十分評価するものの、だからといって安易に厳罰化、加害者の排除を推し進めることが、社会としてなすべきことではないのではないか。
    犯罪を犯した本人が罰せられるべきは当然だが、その原因の一端が今現在の我々社会の中にもあると考えるべきではないのか。だからこそ、厳罰に処するより、再犯防止、矯正教育にもっと力を入れるべきなのではないか。

    私は著者の考え方と全く同意見だ。
    確かに犯罪被害者の救済は是非行ってしかるべきだが、その救済と加害者の更生とが同時に行われるのが一番の理想。
    今、「修復的司法」という制度が試みられつつあるという。これがうまく働くようになることに一縷の望みをかけたい。

  • おもしろかった。
    ただ根拠となっている情報が少し脆弱なのかな、と思うところが何箇所かあった。
    教育制度や犯罪を個別具体的にみていくことで紐解いていく部分は興味深かったです。

  • 社会学者による少年非行に関する論考。おもしろかったです。非行でもなんでも、個人の性質や問題に起因するものと考えてしまう社会はよろしくない。子どもの非行は社会とのつながりのなかで考え、対策を練っていく、つまり社会の目指す方向を示すヒントであるのだということです。過度の医療化は避けなければならないということですね。

  • 少年犯罪が凶悪化というより稚拙化している現実を、価値の多元化が進んだフラットな社会で人間関係のあり方が変わってきていることから説明する。また、社会の側に加害者意識が失われ、少年に対する視線が「保護の対象」から「責任の主体」へ変化したことが厳罰化=排除志向につながっていることを指摘している。

    少年犯罪というのは感情的になりやすいテーマだが、それなりに説得的。何より著者の真面目な人柄が感じられる。圧巻なのが巻末のブックガイド。いろいろな角度から多数の本がこれでもかと紹介されていて、まだ読んでいないのもたくさんあった。こういうタイプの紹介としてはかなり冊数が多いんじゃないかな。それもワクワク以上ゲンナリ未満という感じで程良い(笑)。こういうところから芋づる式に本を読んでいく練習をするのはいいと思う。

  • 基本的にこれまで土井が書いてきたことの繰り返しだが,読みやすい.参考文献が充実.

  • 修復的司法

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著者プロフィール

筑波大学人文社会系教授/社会学

「2018年 『談 no.112 感情強要社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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