舳のない笹舟

著者 :
  • 文芸社
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本棚登録 : 18
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (735ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784286020419

感想・レビュー・書評

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  • 松永久秀の本と聞き購入しました。ページ数も736ページに渡る長編なので、大変期待して読んだのですが。もちろん、ありきたりの歴史小説ではなく最初はとても面白く読めました。恋愛の色が濃いです。そこは良いのですが、三好家にいた辺りまで大変細かく書かれていたのですが、「この男は人のできないことを三つしている。」と信長に言われた部分が、あまりにも端折りすぎていた気がします。あの長いページの中で、9分1程度しか書かれていないですし、非情、狡猾だけの人でないというなら、その重要部分な松永の心理が余りにも詳しく書かれていないと思います。あまりにも前半(?)が濃厚だったので、最後があっさり。人々が悪い噂をしたいた最中、聞き流すだけのような表現だけですし。信長嫌いなら、嫌いなりにもっとそう思わせるだけの文章が欲しかったです。

  • 適当に検索してたら見つけた、松永久秀が主人公の小説です。版元はまたもや自費出版の文芸社(笑)著者は昭和11年生まれで現在アメリカ在住です。<BR>
    取り合えずメーカー側からの説明文を引用すると
    <blockquote>
    信長に迎合せず、大和の信貴山城で壮絶な最期を遂げた戦国の武将松永久秀の生涯を描く!奸雄、梟雄、狡猾など、悪名高き男というこれまでの定説をくつがえし、新たな光をあてた歴史物語。
    </blockquote><BR>
    はて、同じ主張をどっかで見たような…?(笑)はい、<a href="http://d.hatena.ne.jp/sekisei344/20070317">今年の春に読んだ</a>「松永久秀の真実―戦国ドキュメント」の帯に書かれていたのと殆ど同じです。小説か論文かの違いはありますが両方文芸社の自費出版です。何なんでしょ?<b>キレイな松永</b>っていう題材は人を自費出版に走らせる魅力があるんでしょうか?
    アマゾンのレビューが少ないながらも皆絶賛(全員★満点)なので買ってみたのですが、よく見たらレビュアー4人のウチ2人ががアメリカ在住の人なのね(笑)もしかしたら著者の知己なのかもと今更ながらに気が付いた;
    個人的には★3つ、つか<b>三好のファンは読まない方が良い</b>と言わせてもらいます(←すごく内容が推察しやすい感想)。
    <BR>


    内容を一言で纏めると<b>松永久秀聖人伝説</b>です(爆)
    前書きに当たる序段で「現在伝えられている悪人松永久秀像は後世の創作でありでっち上げである」とぶち上げて、野心や謀略、裏切りとは無縁に無欲に生きる久秀の人生を描いています。
    <BR>
    実在の武将を描いた歴史小説は、大まかな歴史はほぼ史実を踏襲しつつ、史実に残っていない時代や、歴史に残る出来事に至るまでの変遷やエピソード、人となりや人間関係でキャラクタの印象を作り上げてリアリティを出すのが一般的なパターンだと思います(逆のパターンの例としては「もしあの時にこうだったならば」と言う歴史ifや、「歴史書ではこうなってるけど事実はこうだ!」的な歴史ミステリー系があげられる)。<BR>
    で、この松永久秀と言う人間は前半生が全くの不明で、30歳位まで何をしていたのかが良く分かってません。その為、どんな身分の生まれで長慶に仕えるまで何をしていたのかは、色んな作家が好き勝手に想像して決めてます。ワタシが知ってるだけでも、「六条河原に放置された捨て子」だったり「大和の有力高家の末裔」だったり「堺の商家に奉公してた丁稚」だったり<b>「ペルシアから伝来した暗殺術の使い手」だったり</b>と、ソリャもう同じ人間を語ってるとは思えないバリエーションの多さです(大爆笑。サスガに暗殺術は伝奇モノですが)<BR>
    この本は総ページ数が735ページもあって、厚さにすると京極の鉄鼠並にあるんですが(段組は一段なので文章量は劣るけど)、その5割5分程を創作した松永の前半生に割いています。と言うかその後長慶に祐筆として仕えた時期やらは5年を2行で済ませたりしているので、凡そ8割方が史実とは違う著者がつくった架空の出来事です。
    ただしこの著者が創作した松永の前半生が無茶苦茶に面白い!息を付く間もない展開で、甚九郎少年(この作品では久秀は甚九郎と言う通称で呼ばれてる)の人生が転変していく流れには引き込まれました。師を仰ぎ、信頼で結ばれた仲間を作り、そして恋に落ちたり時代に巻き込まれたりの波乱万丈の前半生がこの小説で一番面白いトコロでした。
    <BR>
    ストーリーはさておき、先ず気になったのは、<b>キャラクタの人間性が立場に基づいた厳然たるカースト制度に支配されている</b>事です(笑)
    <BR><BR>
    松永久秀<Br>
    ↓<BR>
    文化人(僧・茶人・知識人)<BR>
    ↓<BR>
    女<BR>
    ↓<BR>
    松永の子分&商人<BR>
    ↓<BR>
    (松永を持ち上げる武将・大名)←ヨイショ補正<BR>
    ↓<BR>
    ……………………【壁】……………………………<BR>
    ↓<BR>
    その他の大名・将軍・武将<BR>
    <BR>
    この人格ヒエラルキーが絶対です(笑)具体的にどんなんかってと、
    <BR>
    松永:完璧超人。誰もが見惚れる男前。何でも出来ます。文武両道どころか礼儀も商売も職人技もあっと言う間に最高レベルになります。唯一の欠点は口下手なトコですが(史実の狡猾と言う印象を消そうとしているように思える)、彼の理解者達は<B>何も言わなくても全てを分かってくれるので喋る必要はない</B>から問題ありません(爆)弱い者を助け、時代に必要とされながらも出世欲も野心も持たない仙人のような心を持っています。<BR>
    文化人:松永を理解して何でもしてくれます。彼の意に沿わない事はしません。松永からは尊敬の対象として扱われていますが、彼らの方こそ松永の素晴らしさに心酔しています。<BR>
    女:例外無く松永に惚れます(爆笑)知性にあふれ利他的で、松永を心身共に支えようと尽くします。<BR>
    松永の子分:自ら松永に臣従すると決めた子分達です。松永は彼らに絶対の信用を置いてます。彼らも<B>例え10年20年放って置かれても絶対に松永を裏切らず</B>、一声かかれば今の主君なんぞあっさり見捨てて松永の命令を聞きます。<BR>
    武家階級ヨイショ補正:武家階級だけども松永に一目置いて協力したり評価したりする人です。<B>多分著者が個人的に好きな武将なんだと思います</B>(爆笑)信長とか明智とか六角とかです。史実を無視して、若い時に出会っているエピソードが作られている事もあります。<BR>
    ………………【壁】……………<BR>
    武家階級・公家:このランクのみ<B>小説内で作者から地の文でなじられます</B>(爆)全員例外なく知性が低く、局面を見る視野を持たず、多少なりとも長けているのは謀略と讒言を流す口の回りだけ。誰も彼もが<B>松永を一目見た瞬間に自分の配下に欲しがります</B>(爆笑)。何か問題が起きると自分では対処出来ずに松永に全てを任せっきりにして、解決すると手のひらを返すように疎んじたり妬んだりして松永から幻滅されます。<BR>
    <BR>
    マジで例外はありません。松永に良い感情を持たない文化人は一人も居ません。そして松永が仕えた武家武将の中で、多少なりとも彼の評価に値するような人間性を持った人物もだたの一人もおりませぬ。<BR>
    本当にびっくりだよ。つか<B>長慶の扱いの酷さ</B>に言葉もないですよ。何せ小説内で作者が長慶を説明している文章が「何の取り得も見所もない単なる神経質な下ぶくれっツラ」だぜ!?挙句に<B>戦の技量は木沢長政以下</B>に描かれてて、何も考えずに兵を興してその結果<B>本願寺(←僧扱いなのでヒエラルキーが高い)と謎のオリキャラ女にボロクソに詰られて涙目のボンクラ長慶たん</B>とか普通にありますからね。何だそれ!
    そして、その結果として<B>歴史に残る三好家の戦功はほぼ全て久秀の活躍のお陰だったとされている</B>のです。江口の合戦からもう全部。いやいやないから!それはないから!と言うか何故、松永久秀の悪評を覆す為に他の存在を貶めなければならないのかが分からない。別に上司が出来る人間だったって良いじゃんねー?<BR>
    上記の、松永の悪評を覆す為に云々てのに関連して、もう1つコレはちょっと…と思ったのが、小説内で、文献内でストーリーに合ってる部分だけを引っ張り出して「山科言継記にコレコレこのように書いてあるのが、この事を裏付ける証左である」みたいな書き方をしているトコです。ワタシはこの時代の文献には詳しくないし、遠い地方の町史村史を調べる勤勉さもないですが、それでも文書に沿った部分もあれば明らかに違う部分だってあるの位は分かります。つぅか8割方がオリジナルの物語なんだから、そんな内容に合ってるトコだけの証明を添えられても困ります(爆)
    <B>松永の評価が捏造だとする前提で物語を書いているのならば、都合の良い部分だけ引き出して恣意的な誘導をせずにフェアに作るべきであり、逆にこのようなフィクション要素を多大に取り入れた物語ならば、作中で史実の証明をふりかざさずに娯楽に徹するべきである</B>とワタシは思うのです。キャラ設定も序盤の展開も破天荒なんだから、変なリアリティを出そうとしなくても十分面白くなるし松永のイメージアップも出来ると思います。
    まぁ↑みたく必死に偉そうな言を尽くしてても、結局ワタシが言いたい事は<B>三好はそんなヘボじゃねぇ</B>っつぅ単なる私情でゴザイマス(笑)<BR>

    でも、ここまで文句を言っときながらも評価的には★3つなんですよ(笑)
    長慶たんの件でマイナス査定なんですが、本当に前半部分は面白いです。<B>あまりに面白すぎて一気に読むのが勿体無い</B>ので2日に分けて読んだ程に面白かったです。前半は「ねーよ!」とかツッコミ入れて爆笑しつつ楽しめたので(笑)後半は笑えなくなったけど;
    つかワタシもどちらかと言うと<B>松永久秀性善説</B>をとっているので(爆笑)言いたい事は分かるんですよ…。でもワタシの場合は「松永久秀にそこまでの才覚は無かった」ってのが梟雄否定の理由なので。長慶死後のハチャメチャな晩年で名前が売れているけれど、長慶たんが死ぬまでは全然大人しかったからね(笑)ワタシ的にはネタで有名になった松永が、本来なら三好長慶の手腕であるはずの功績を吸い取って今の評価になっていると思うのです。この小説はその最たるものではないかと(笑)何つぅか<b>お互いに信じる道が違う</b>のが残念でしたって感想です。
    ただし、前半の面白さは本物なので、三好に全然思い入れの無い人ならば最後まで楽しく読めるのではないかと思います。思いのままに書いたフィクションメインの前半に比べて、史実に合わせた後半がパワーダウンしている感も否めないので、次に書かれるならば是非とも<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E6%9C%88%E5%8E%9F%E6%99%B4%E6%98%8E">ペルシア暗殺術部隊の久秀&斉藤道三</a>や<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%92%E5%B1%B1%E5%BE%B9">柳生vs朝鮮妖術団</a>レベルの荒唐無稽な娯楽作を書いていただきたいと願う所存でゴザイマス。つか<b>少林寺拳法で敵をなぎ倒す松永久秀</b>を堂々と出せるんだもん、絶対ソッチで突き進んだ方が面白いって!やってくれ!(爆笑)

  • 様々な歴史書に基づいた、新しい松永久秀観。
    梟雄や狡猾と呼ばれ、
    悪代官のような印象だった松永は、ここにはいない。
    ただ純朴でまっすぐな現代的感性を持った男の、
    時代が故理解されず翻弄された人生を描く。

    これを読み終えた時、
    確かに自分の松永久秀像が大きく変わったことを認めた。
    伏線の張り方もよく、読み応えがあり面白かった。
    ただ、あくまでも性善説に対してのみそう思っただけで、
    ここまで完璧超人だったと信奉しているわけではない。

    悪かったところを挙げるとすれば、松永久秀ヨイショのすごさ。
    他武将が気にならないならば充分面白く読めると思うが、
    なんとまあ皆に欲しがられ重用される才覚よ…
    誰もかれも、有名人がみなこぞって一度で惚れ込み欲しがる。
    しかし本人に特に欲や信念はなく、
    幼少期にあった女性に最後まで心を砕いている。
    少年漫画の主人公みたいなものだと思って読んでいただければ、
    まだ納得できるかもしれません。

    先にレビュー書いた方も仰っているように、
    三好長慶贔屓の方にはオススメできかねます。ご注意あれ。

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