人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~欧米のモノマネをしようとして全く違うものになり続けた日本の人事制度
- 日経BP (2021年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296109272
作品紹介・あらすじ
「日本式ジョブ型」に飛びつくのはちょっと待って!
成果主義、コンピテンシー評価、職責・役割給、ジョブグレード・・・。
過去60年の「脱日本型」失敗と同じ轍を踏まないために!
人事担当者はもちろん、全ビジネスパーソン必読の書。
新型コロナウイルスの流行によりリモートワークが普及し、従来の働き方が成り立たなくなった。そこで「ジョブ型」を導入して、成果重視の人事制度に作り替えようーー。
日本企業が狂騒する「ジョブ型祭り」を、雇用ジャーナリズムの第一人者である著者は
「欧米の仕組みを付け焼刃で取り入れる愚策」と切って捨てる。
生半可な理解で人事制度“改革”を行うことに警鐘を鳴らし、「本気で日本型を変えるために、雇用システム、そして人事というものを、隅々まで理解して、根治を目指さなければならない」と説く。本書では事例や統計などファクトをベースに、欧米各国や過去の日本の社会状況、人事実務を解説。
感想・レビュー・書評
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最近、日本では「ジョブ型人事制度」に関しての議論が盛んである。欧米は「ジョブ型人事制度」であり、それに対しての日本型雇用制度は生産性が低くなるので、ぜひ、ジョブ型人事制度に転換すべきである、というような議論である。
筆者は本書で、それに異論を唱えている。
1)そもそも「ジョブ型人事制度」というのは何?という共通の理解・定義がないままに議論が行われていること。
2)人事制度は、人事制度単独で成り立つわけではない。その国の雇用慣行や社会制度等のOSの上に成り立っているアプリのようなものである。「ジョブ型人事制度」はアプリであり、それを成立させているOSが欧米と日本では異なるのだから、アプリの良し悪しだけを議論しても意味がない(アンドロイド上でiPhoneのアプリは動かないが、どちらが良いかという議論ではない)。
というようなことが骨子の異論である(もちろん、書中、もっと制度やOSのもっと具体的な内容に触れた議論がなされている)。
私の理解したところの、ジョブ型人事制度の本質はジョブディスクリプションにあるのではないというのが、筆者の主要な主張の一つである。
欧米、特に欧州では、人事制度は一部のエリート層向けのものと、その他大勢のためのものに分かれる。ジョブ型制度は、その他大勢のためのものであり、基本的にずっとその仕事、ずっとそのポジション、ずっとその報酬、を続けるものである。ポジション(管理職の役職以外の一般職のポジションを含め)に定員が設けられ、仕事の内容が決まり、それに合った人を外部市場から採用し、ずっとその仕事をしてもらう。仕事に対しての報酬水準は市場的に決まっているので、基本的にその報酬額を支払う、というようなものである。
一方で、日本でイメージされているジョブ型人事制度とは、①職種コースを設け②ジョブディスクリプションを準備し③人につける(職務につけるのではなく)ジョブグレードを新設し④成果評価で給与を支払う、という内容のものであり、欧米でのジョブ型人事制度とは内容がかなり異なる。筆者は、「このような制度をとっている国はない」と断じている。
私は人事部門で仕事をしているので、ジョブ型人事制度の議論とは無縁ではない。
私自身は、「(精緻な)ジョブディスクリプションを作成する」ことがジョブ型人事制度の前提である(と言われている)ことに、最も大きな違和感を持っていた。こんなに変化の激しい時代に、特にホワイトカラーに対して、詳細な職務記述書を作成する意味が分からなかったということである。まぁ、普通の人はここでひっかかる訳で、幸いなことに(?)当社では、ジョブ型人事制度に変革すべきという議論は全く起こっていない(人事からも現場からも経営からも)。
人事の業界では、今回のジョブ型人事制度的なムーブメント(筆者は「祭り」と呼んでいる)が、時々起こってきた歴史がある。コンピタンシーしかり、成果主義人事制度しかり。その都度、一部のコンサルタント会社が儲けてきたという以外に、何も起こらなかった。
本書でもそのあたりのことを皮肉をこめて触れている。
本書からの最も大きな教訓はそのあたりのところにある。
「現場の実態をきちんとみて、自分の頭でものを考えよう」ということだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これは読むべき ひとつの仮説
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人事制度における欧州と日本の差分や、ジョブ型、女性雇用など、雇用にまつわる内容を理論やデータ、実務と共に書いてくれている本。
疑問に対して回答している構成であり、雇用周りで気になる事はほぼ網羅されている印象。過去の歴史にも触れてあるため、理解が進みやすいと思う。 -
歴史の部分は読みやすく、入りやすいないようで学びになった。ただ後半は主観が強すぎないか。タイトルほどの内容には感じませんでした
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日本型雇用を知るってキャリアを降りる選択肢を。
著者の別著作の簡易版。
こっちの方が問題にフォーカスしていてわかりやすい。
提案された案は確かにそういう時代になりそう。
WLBってなんだろう。階段を降りるってなんだろというきっかけに。
欧州と米国は明確に区別して考えること。その上で日本型を。
結論、人からポストへができるか。 -
これからの人事の教科書と言ってもよいくらい、時系列的にも領域的にも網羅的に鋭い分析がされていて、とても刺激になった。
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著者つながりで読み始めた本。
前半は別の著書にもあるように、欧米と日本の雇用システムの違いについて概観した内容。
中盤以降は、欧米と日本とそれぞれのいいとこ取りはできないと言うものの、今の日本の仕組みを少しいじりながらどうすればみんなが比較的幸せに生きていけるのかについて、様々な提案をしている。
印象に残ったのは、マミーに陥らないようにすること、また、会社のビジネスのスタイルに応じた、人事制度(年収や育成のあり方)、リーダーの抜擢及び育成のやり方など。
16時に帰る日を作ることにより、後ろが切られている人(例えば育児がある社員)を体感できる、もいう側面はなるほどと思った。
加えて日本の企業にありがちな、緻密に横一線で進めるのやり方には強く批判をしている。確かに前職においても、現職においても、思うところはあるが、うまく立場を利用して、一石を投じるような働き方をしてみたいものだ。 -
今話題のジョブ型雇用というものの問題点などを理解するための入り口で読むと良い本だと感じた。
特に後半のキャリアに関する部分は自社の抱える課題と全く同じで非常に読み応えがあった。一通り読み終えたが、後半部分は再度読み直して、自身の理解を深め、業務に活かしていきたい。 -
上司からのお薦め、元リクとのこと。
二信教の分析が面白く、確かにと思ってしまった