どうすれば日本人の賃金は上がるのか (日経プレミアシリーズ)

著者 :
  • 日経BP 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296115341

作品紹介・あらすじ

日本が他の先進諸国と比べて「賃金の安い国」になったと言われて久しい。 
  
毎日勤勉に働いているにもかからず賃金が上がらなくなってしまったのは、「日本の社会の仕組みに問題があるから」に他ならない。

では、どうすれば現状を打開できるのか?
賃金を上げるために、政府、企業、個人に一体何ができるのか? 

本書では、著者の独自のデータ分析から、日本経済を停滞させている本当の原因を突き止め、日本の賃金を長期的停滞状態から脱却させるために何が必要かを考える。

感想・レビュー・書評

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  • 大企業の方が給与が高くなるのは、労働分配率が高いからではなく、労働分配率は、中小企業の方が高い。では、中小零細企業の給与が低いのは、一人当たりの付加価値、つまり生産性が低いからだ。それと、賃金格差の原因として考えられるものの1つには、資本装備率の差がある。資本装備率とは従業員一人当たりの有形固定資産。労働装備率とも呼ぶが、機械やロボットを導入して、自動化すれば、人間労働者一人当たりの生産額は増加する。機械やロボットを増やす事は、固定資産を増やして、資本装備率を高めることだ。

    この辺のロジックが分かりにくい気がした。資本装備率は結果であって、ロボットを増やしても人が減ったり、生産量が増えないと、生産性は上がらないのでは。要は、効率よく稼いでいるか、という事だろうが、固定資産を闇雲に増やしても意味がない。

    大企業を中心に、今から漸く賃金は上がると私は思っているが、この時の「どうすれば?」の引き金は、結局、〈人の手配、政治要請、組合要請、利益の還元〉という所に行き着く。つまり、経営側が賃上げしないと困るような環境かつ、賃上げできる余裕がないと、賃上げの現象は作動しない。

    最大のトリガーは人手不足であり、そのために、賃上げを織り込んだ値上げをして、賃上げのための利益まで稼ぐ。値上げには、それなりのプロダクトやサービスの競争力が必要だから、そこで差がつき、弱者は賃上げも人の確保も出来ず、淘汰される。そうなると、失業で人が溢れ、この流れにブレーキがかかる。故に、ある程度までは政治主導で、という図式かと思う。競争原理による淘汰は必要だが、急激な変化は避けたいという事か。良い塩梅でのマクロコントロールは難しい。

  • バブル崩壊以降、日本経済は長期的な低迷に陥っている。それは、「失われた30年」と呼ばれたりもしている。その間、国民の所得も伸び悩んでいる、というか、全く伸びていない。むしろ下がっているのだということを示す統計も存在する。それに加えて、2022年になってからは物価が上がっており、可処分所得は更に下がっており、国民の多くが、苦しさを感じている。
    これに対して、政府は春闘での賃上げを経済界に提言したり、それを支援するために賃上げ減税等の検討を行ったりしている。
    筆者によれば、それは無駄なことだ。賃金を上げるためには、その原資となる企業の付加価値を上げる必要があるのだ。付加価値を上げるためには、技術革新を進める、新しいビジネスモデルを確立する、新しい産業を起こすといったことにより、生産性をあげる必要がある。春闘の対象はほぼ大企業に限られ、春闘で賃上げが行われたとしても、国民全体の賃金が上がるわけではないことは、過去のデータが示している。また、賃上げ減税を導入しても、個々の企業は実力以上の賃上げを行うことが出来ないのだ。
    事業活動の付加価値を上げることは、個々の企業の責任である。政府はそれを、賃上げ税制といったような形でバラマキ的に補助するのではなく、「変化を阻害する条件を撤廃する」ことが大事であると筆者は説いている。
    筆者は、色々なところで同様な主張を行っている。主張自体に私は賛成だ。

  • 円安は国力の観点では悪、稼ぐ力を高めずしての分配論には意味が無い、という世正論。

    どうやったら日本の稼ぐ力を高められるのか?という肝心の点では、『ファブレス』位しか処方箋は提示されず、残念。

  • 日本人の賃金を上げるには生産性の向上や産業の創出が必要といった根本論を様々な論拠を元に解説した内容。できればその方法の具体論をもう少し多くろんじて欲しかった。

  • 東2法経図・6F開架:B1/9/483/K

  • 言っていることはしごくごもっともだが、多くは言い古されている内容で特に目新しさはない。もっとも、言い古されていることを実行できていないのが日本の現状につながっているのだろうが。

    また、著者はアップルを引き合いに出し、製造業はファブレス化すべきだと主張しているが、アメリカでもファブレスメーカーは一部だろう。自動車のようにファブレス化に適さない製品もあれば、保守が必要な製品は自分たちで作っていないとメンテナンスもできない。また、ファブレスメーカーの多くは労働コストが安い国や地域に委託しているが、地政学的リスクが伴う。

    ただし、経済成長が必要であること、稼ぐ力を高めるべきだということには完全に同意。最近、成長を追わずにほどほどでという論考が注目されているが、それでは国力がますます落ちるだろう。

  • 「円安」という「麻薬」をやめる。
    デジタル化による生産性向上。

  • このおじさんも、遠藤誉さんと一緒で80代なのに、怪物的に頭がキレる。

    平均所得はパートタイマー(パート自体の平均給与は増えているが、数の増加が顕著)を含めるから、海外と比べて、とても低くなる。日本のパートタイマー比率25%は高すぎる!OECD 16%。

    平均年収700万円の会社に1,000万円プレーヤーが3割いる!
    売上高・付加価値の比率は、小企業の方が高い!

    円安が、古い産業をイノベーションのないまま温存してしまい、今の資源高、海外企業のイノベーションに対抗できなくなっている。

    分配なくして成長なし ではなく、
    成長なくして分配なし!である。
    成長せずに分配できるような打出の小槌はない!安易なバラマキ政策からは脱却すべき!

    既得権の打破、規制緩和で、成長を実現することが、賃金上昇につながる!!

  • 2023/08/16

  • 勿体ぶった割に、ソリューションが、ファブレスやらビッグデータの活用。舌鋒鋭く日銀やアベノミクスを非難する割には結論が弱すぎないか。

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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