すみれ屋敷の罪人 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784299001221

感想・レビュー・書評

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  • 著者の作品は初読みですが、読んでいて苦しくなるミステリー作品でした。
    (褒め言葉です)

    戦前の名家「紫峰邸」の敷地内で発見された白骨死体の謎を解くのが本作の大筋で、ある人物から依頼を受け、その身許を探ることになった西ノ森。

    戦前、当主と三人の娘が暮らした紫峰邸には使用人と書生が暮らしていた。

    当主と三人の娘は終戦前に東京大空襲で亡くなっており、西ノ森はかつての使用人を訪ね、かつての暮らしを聞いてまわります。

    数十年の時が経ち、使用人達の証言も少しずつ異なる中、西ノ森がたどり着いた仮説。

    第一部(証言)はこんな感じで進み、そこには新たな展開が待ち受けていました。

    (告白)と題された第二部では、亡くなったはずの長女・葵に隠された秘密が明かされます。

    二転三転しながらも、徐々に明らかとなる真実。

    回想される過去と現在との距離。
    過去の事件がその後の人生にもたらした影響。
    変わってしまった運命。
    長い年月の間、秘密を抱えてきた者の心情。
    やり直すことのできない苦しみ。

    読み終え今、全ての謎が解き明かされ、驚愕と共にスッキリした感よりも、苦しさを覚える作品。



    日本推理作家協会賞(短編部門)受賞後第一作!

    2001年、長らく手付かずだった戦前の名家・旧紫峰邸の敷地内から発見された二つの白骨死体。
    紫峰家は、すみれの花で彩られた美しい館に暮らす一族だった。
    当主の太一郎と、葵・桜・茜の美しい三人の姉妹たち。四人は終戦間近、東京大空襲によって亡くなったはずだったが……。
    白骨死体は、いったい誰の死体なのか?
    その身元について、かつての関係者に話を聞いて回る謎の男が現れる。
    かつての女中や使用人たちの語る、館の主人と三姉妹たちの華やかな生活と日常、そして忍び寄る軍靴の響き。
    突然起きた、不穏な事件。彼らの証言は二転三転し、やがて戦時下に埋もれた意外な真実が明らかになり――。

    『このミステリーがすごい! 』大賞を受賞しデビュー、
    いまもっとも注目される女性コンビ作家、渾身のゴシック・ミステリー。

    内容(「BOOK」データベースより)
    長らく手付かずだった戦前の名家・旧紫峰邸の敷地内から発見された白骨死体。そこで暮らしていた屋敷の主人と三人の姉妹たちは、終戦前に東京大空襲で亡くなったはずだったが…。死体は一体誰のものなのか。かつての女中や使用人たちが語る、一族の華やかな生活、忍び寄る軍靴の響き、突然起きた不穏な事件。二転三転する証言から、やがて戦下に埋もれた真実が明らかになっていく―。

  • 『すみれの丘の、すみれの館。やさしい旦那さまと、美しい三姉妹。面倒見のよいふたりの書生と、気のいい使用人たち。』

    面白かった。
    秘密を隠しておきたい者と何が起こったかを知りたい者、双方の回想の積み重ねで徐々に真相に近づいていく。
    最初はぼんやりとしか見えなかった真相が、何人かの違う視点から回想されるごとに徐々に明らかになっていく。

    登場人物の心情が細かく描かれていて、それぞれがお互いを思う気持ちの強さに圧倒された。
    背景や動機の部分が徐々に語られていき、明らかになった『罪』は切ないような哀しいような、何とも言えない気持ちになった。

  • 2001年、長らく手付かずだった戦前の名家・旧紫峰邸の敷地内から発見された二つの白骨死体。
    紫峰家は、すみれの花で彩られた美しい館に暮らす一族だった。
    当主の太一郎と、葵・桜・茜の美しい三人の姉妹たち。四人は終戦間近、東京大空襲によって亡くなったはずだったが……。
    白骨死体は、いったい誰の死体なのか? その身元について、かつての関係者に話を聞いて回る謎の男が現れる。
    かつての女中や使用人たちの語る、館の主人と三姉妹たちの華やかな生活と日常、そして忍び寄る軍靴の響き。
    突然起きた、不穏な事件。彼らの証言は二転三転し、やがて戦時下に埋もれた意外な真実が明らかになり――。



    今の時代のフーダニットはなかなか難しいものがあるのか?
    フーダニットを読もうとすると、過去の話が多い気が(^-^;

    この作品は、白骨死体が誰なのか?!過去にどんな事実があったのか!?
    紫峰邸の使用人や関係者によって、次第に明らかになっていく。

    お金持ちの一族に、美しい三姉妹。
    ぞくぞくしますねwww
    こういう雰囲気。
    何かが起こるぞ~って期待大(笑)

    いやしかし、この作品は起こるんじゃなくて、起こった話を関係者の証言という形で紡いでいく為、私の好みとは若干異なった(^-^;


    隠された真実に涙、涙、涙という帯の文句だったが・・・・
    1滴も涙が流れない私は、感情というものが欠如してるんだろうか(^-^;

    結末まで読んで、あ~なるほどなぁ~
    もう一ひねり欲しかったなぁ・・・なんて思ってしまった(^-^;

    そんな感想ですみません(^-^;

  • X県譲町の名族・紫峰家が暮らしていた、みごとな洋館。
    その敷地内から、身元不明の白骨体が発見され……。

    ある人物から依頼を受けた西ノ森泉が、生存している使用人から聞き取り調査をしていく、という構成。

    ステンドグラスのあるお屋敷の優雅な暮らしに、美しい娘たち。
    女中だった信子の、キラキラした始まりの回想から、だんだんと裏の顔や、真相が見えてくる。

    戦争前後の豊かさと影という、独特の雰囲気がよかった。

    聞き取りが進むにつれて、見え方が変化して、おもしろかった。

  • 長らく手付かずだった戦前の名家・旧紫峰邸の敷地から発見された、2体の白骨死体。そこで暮らしていた主人と3人の娘たちは、終戦前に東京大空襲で亡くなったはずだった。
    死体はいったい誰のものなのか。
    かつての女中や使用人たちが語る、一族の生活と真実とは?


    すみれの咲き乱れるお屋敷でかつて起こった、事件と一族の運命を関係者たちの証言から紐解いていくミステリ小説です。
    白骨死体はいったい誰のものなのか? 使用人たちからも慕われていた館の主人と姉妹たちの身にいったい何が起こったのか? そこに忍び寄る軍靴の足音……。
    万華鏡のように、読み進めるにつれ表情を変えるミステリでとても楽しいです。
    証言が集まるたび、証言者が変わるたびに説は二転三転していき、隠された真実は悲しくも美しい。

    悲しい事件が起きた屋敷の過去を語るのに、思い出される話は誰のものを聞いてもどこかキラキラしていて、お屋敷で過ごした幸福で綺麗な思い出であふれており、読後感は優しいです。
    悪人らしい悪人がいないのがまた悲しい。
    一体誰が「すみれ屋敷の罪人」だったのか。きっと、誰もが誰かを心から想った罪人だ。

  • 旧紫峰邸で発見された白骨死体。かつての女中や使用人達の証言により徐々にその真相が明らかになっていく。
    証言により、そこでの出来事はガラリと印象が変わって伝わってくる。

  • 舞台は昭和初期
    第二次世界大戦前後のあるお屋敷にまつわるストーリー

    2000年はじめ、現在は誰も住むことがなくなった洋館が文化財保護および観光利用目的で自治体が買取、整備のために重機を入れたところ、2体の白骨遺体が発見された。

    その白骨遺体は、誰のものか。

    謎を解き明かす。

    自己を犠牲にしてまでも守り通す絆

    あまり読まない時代背景のもので個人的には楽しめた

  • なんと表現して良いのか、この世界観。ドラマのダウントンアビーと金田一耕助を融合させたような、じめじめと、明るくはないけど、美しい世界観。謎が深まっていくまでが面白く、一気見でした。

  • 読書は、いつも通勤時間に読んでたけど出勤日が減って読む時間がなく時間がかかってしまってた。

    でも、つづきが気になってたらどんなことをしても読んでたのかな??

    って感じで、なかなか読み進めなかった。

    嘘に嘘を重ね、こんがらがってきたけど
    人を思いやっての嘘が大変なことに…

    やっぱり嘘はいけない…

    で、結局のところ
    ヒナさんは、どーなったの?と気になる終わり方でした。

  • 戦前の名家・旧紫峰邸の敷地内から発見された白骨死体。そこで暮らしていた主人と三姉妹は東京大空襲で亡くなったはず。死体はいったい誰なのか。かつての使用人たちの証言を重ね合わせていく──。

    証言を塗り重ねることで完成する油絵のような真実。ひと塗りするだけで事実の見え方がガラッと変わる演出が上手い。紫峰家の光と影、迫り来る戦争、過酷な運命と謎の事件、祈りのように塗り重ねられる筆の重みが感じられる作品。ミステリでありつつも、紫峰家をめぐるドラマが見どころ。

    謎の依頼人からのメールで真相を探る西ノ森。当事者である主人・太一郎と、葵・桜・茜の三姉妹は空襲で亡くなっている。なぜ西ノ森の依頼人は真実を探るのか。また、女中や使用人の語りに秘められた思いとは?一つの視点からでは見えない真実と罪の輪郭が、歴史の奥行きも感じさせてくれる。

    今起こっている事件ではなく、遥か昔に起きた事件を紐解いていく。証人たちが語る昔話を聞きながら、紫峰邸の在りし日の姿を思い描きながら静かに読むことができた。二転三転する物語の果てに辿り着いたのは、まさに「すみれのお葬式」だったのかと。ほろ苦くもあたたかいラストでよかった。タイトルからドロドロした話かと先入観を持っていたけど、そこからの印象の移り変わりもまた作品の味わいかもしれない。

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著者プロフィール

(ふるた・てん)プロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)と執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)による作家ユニット。少女小説作家として活躍後、「女王はかえらない」で第13回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、同名義でのデビューを果たす。「小説 野性時代」掲載の「偽りの春」で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。同作を収録した短編集『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』を2019年に刊行した。他の著書に『匿名交叉』(文庫化に際して『彼女は戻らない』に改題)『すみれ屋敷の罪人』がある。

「2021年 『朝と夕の犯罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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