- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784299014818
作品紹介・あらすじ
プーチン、習近平、トランプ、ヒトラー、スターリン……権謀術数が蠢く政治の世界で、「悪」と謗られる男たちがなぜ権力を掌握することができたのか。佐藤優が読み解く、独裁者たちの素顔と人間力の神髄!
感想・レビュー・書評
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〈独裁者は単体では生まれない。
ある人物が突如として求心力を持ち暴走を始めるのではない。
組織の中で発生した力を組織内部のさまざまな人間が
都合よく利用していくことで徐々にその力が肥大化し、
いつのまにか当の本人ですら制御しきれない
暴力的な塊としての権力が生まれてしまうのである〉
そう仰る佐藤優さんが昨年5月に出版したこの本で
紹介した独裁者は次の11人。
「ロシアの皇帝」が貫く義理人情…ウラジーミル・プーチン
圧倒的な権力と恐怖支配…習近平
「下品力」を武器に大衆を味方に…ドナルド・トランプ
先代とは異なる狡猾さと剛腕…金正恩
”したたかな独裁者”のリアリズム…バッシャール・アル・アサド
アルバニアに君臨した”史上最強”の独裁者…エンベル・ホッジャ
誰も真似できない「ニヒリズム独裁」…アドルフ・ヒトラー
「神話」を生み出すプラグマティズム…毛沢東
実直な職業革命家の「理想の世界」…ヨシフ・スターリン
新しい国づくりと自滅の末路…カダフィ大佐
「愛」を実践しようとした建国の父…金日成
ホッジャ、アサド、カダフィ大佐のことはあまり知らなかったので特に面白かったのですが、やはり今はプーチンでしょう。
佐藤優さんは約一年前プーチンのことをどう思っていたのか。
こうなることを予測していたのか。
〈ロシアへの愛に魂を捧げたプーチンに怖いものはないのである。時に白も黒と言い切る豪胆は、独裁者の真骨頂であろう〉
〈独裁者の多くは、人の心を掴む術に長けている。一方で、自身の地位を盤石なものとするために、敵と見定めた相手には容赦しないのである〉
私は今まで佐藤優さんの本からプーチンにわりと良いイメージを持っていたのですが、こうして読んでみると、今回のことは佐藤さんにとって想定内だったのかなと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
独裁者とも呼ばれる11人の強権的な政治指導者たちを紹介する。人目を引くことを優先したと思しきタイトルは、内容とはやや乖離している。人選を含めて、前後半で趣きが異なる。
前半の5人はプーチン、習近平、トランプ、金正恩、アサドと、数カ月前に退任したトランプを除けば、いずれも現役である。これらの人物については各国代表者の人となりや個性を読み解きつつ国際情勢を解説する。ここで登場する各国の指導者間の関わりについての記述も多く、著者の見立てによる現代の政治状況の解説を主な目的としているように見える。前半のなかでは、外務省官僚としてロシア外交に従事した著者の体験談も交えたプーチンへの評価がもっとも面白かった。
後半の6人はアルバニアのホッジャ、ヒトラー、毛沢東、スターリン、カダフィ大佐、金日成。いずれも故人であり、前半と違って、そのほとんどがすでに歴史的な存在として扱われる人物である。後半はこれまでとは流れが変わり、現在のコロナ禍のような人心の不安が煽られやすい状況にあって、その危機を利用する政治家が台頭する可能性について随所で警鐘を鳴らすためのメッセージ性が強くなっている。そのために、これらの歴史的人物から、国家的な失敗と教訓を引き出す流れとなっている。その目的もあって、独裁者を生み出す国や組織で発生する忖度のメカニズムについての指摘が重要と思えた。個別には、本書内ではもっとも知名度が低いであろう、エンベル・ホッジャとアルバニアという国についての情報が興味深かった。
各章(人物)に割かれるのは20ページ前後にとどまる。多数の指導者を取り上げるという企画のため、掘り下げという点では物足りなく感じる。著者が懸念するように、今後の日本についても、コロナ禍による経済状況の悪化による分断から不安と不満を抱いた国民が、強権的な指導者に依拠してしまう怖れを感じる。著者が指摘する状況に陥らないためにも、本書の示すようなメッセージが多くの人に伝わることを望む。
以降、各章の短い紹介を追記する。
1.ウラジーミル・プーチン
→徹底してロシアの国益だけを優先する。人情家の一面を併せもつ鉄仮面。
2.習近平
→権益拡大を維持する中国だが、不安材料も多い。後継者不在を憂慮。
3.ドナルド・トランプ
→パフォーマンス力、ビジネスマンとしての交渉力。差別主義により社会的分断が悲劇的に進行。
4.金正恩
→主に対米外交について。プーチンは熟練政治家と評価。日本は外交に失敗。
5.バッシャール・アル・アサド
→小数部族が権力を握る特殊事情。ロシアの後ろ盾を得て政権維持。弱さを自覚した独裁者。
6.エンベル・ホッジャ
→アルバニアとホッジャの歴史。共産主義を徹底した風変りな指導者。
7.アドルフ・ヒトラー
→他の独裁者に類例がない、「ただ生き残れれば良い」というニヒリズムの革命。
8.毛沢東
→中華人民共和国における神話。
9.ヨシフ・スターリン
→組織に内在する暴力性。多くの企業組織も孕むスターリン主義的な理論。
10.カダフィ大佐
→全く新しい理想社会の企図。対外的な軟化をきっかけに転落。
11.金日成
→国民の幸せと経済的発展を希望したが、構造に目を向けず問題を矮小化。 -
プーチンはじめ習近平、トランプなど「独裁者」と呼べる人たちが、どのように台頭してきたかや権力の構造、力の源泉などについて解説しています。
プーチンが情に厚いという意外な側面や、シリアの内情とアサドの学歴など、登場する11人について、知らなかったことがたくさん書かれていました。
この本を読むと、今現在起きている社会の様が、もう少し違う観点から理解できるような気がします。
また民主主義の在り方を、改めて考えることの必要性を感じます。 -
存命中のカリスマ独裁者から歴史上有名な独裁者まで11名の独裁者の人となりが軽やかに読める至極の一冊です。本書は自己啓発書でもあり、人物伝でもあり、はたまた地政学を押さえる上で必要な歴史知識の要点が押さえることができる良書だと私は思います。特に本書でシリアのアサド大統領の章はシリアという国を知る上でとても役立ちました。世界史が好きになる一冊です。
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p61 ある国の文明度を測る唯一の基準は、弱者に対して国がどういう態度を取るかだ 武漢日記 方方
p80 新約聖書はキリスト教徒のみが経典とするが、旧約聖書はキリスト教徒とユダヤ教徒が共に経典とする
p121- シリア 少数のアラウィ派が権力を握る
独裁国家と言っても、アラウィー派が拠点を持っていたシリア北西部の山岳地帯と首都ダマスカス周辺のみを支配
スンナ派などの他の部族の地域は完全に切り捨てている
アラブ社会主義を掲げたシリアとリビアには、かつてソ連という強い後ろ盾があった
p130 イラン 過去のペルシャ帝国のような影響力を中東で回復したい レバノン、シリア、イラン、イラクの4カ国でアメリカやイスラエルに対抗できるシーア派ベルトを構築したい
p141 大した資源のないシリアをめぐって、なぜ各国はころほどまでに影響力拡大の駆け引きを繰り広げるのか?
その答えはシリアの隣国、イラクにある。資源の宝庫であるイラクへの足がかりとしてシリアは重要な意味を持っている
イスラム国は当初はISIL イラク・レバントのイスラム国と名乗っていた レバントとは東部地中海沿岸のレバノンやヨルダン、イスラエルを含めたシリア地域全体のことを指す。シリア地域とイラク、この2つの領域を支配することで、石油の宝庫であるイラクを完全に手中に収めようとしたのである。イランとアメリカがシリアをめぐって影響力をお互いに行使しあっているのも、その先にイラクを見据えているからにほかならない
p155 利己心による上辺だけの教養は、短期的には多少は役立つかもしれないが、すぐに化けの皮が剥がれ、長期的には全く役に立たないこれは今も昔も変わらない普遍的な事実である
p223 社会が自信を消失したとき、社会に不安が蔓延したとき、多様な価値観を包摂する民主主義というシステムを突き崩すような独裁体制が生まれるリスクは極めて高くなる。
p254 イスラム教には聖典のコーランとムハマンド伝承集のハーディスの2つのテキストが大前提となっている コーランには守るべき規律の基本が、そしてハーディスは日常において守るべき行動規範の具体的な内容が書かれている
カダフィはコーランだけをベースにした新しいスタイルで、イスラム教に基づいた社会主義国を作り上げようとした -
●ギリシアの上、アルバニアのエンヴェル・ホッジャ。19401年にアルバニア共産党を創設。1944年にアルバニアの首相に就任。「世界初の無神論国家」を作り上げた。
●プーチンと鈴木宗男との絆。
●習近平、人口ボーナスの終焉。
●トランプの特徴が強い親イスラエル感情。就任演説、わざわざ新約聖書ではなく旧約聖書を引用した。
●シリア、アサド。ロシアがイスラム国一掃のための空爆に踏み切った。アサド政権を庇護下に置くイランを牽制しておきたいと言う思惑。
●リビアの独裁者、カダフィー大佐「中東の狂犬」アラブ諸国では、いまだに神権の意識が続いている。自由選挙を行えば民主的な体制が整うはずだと考えるが、実際は神権を主張するイスラム主義政党に票を入れる。 -
佐藤優先生が20世紀以降の独裁者の基本的な内在的論理を解説した本ですが、今の世界を読むためにも一読の価値があると思う。他方で習近平やプーチンを取り上げていないのはちょっと残念か。
スターリンの章でキリスト教の代わりの宗教としての共産主義、人民に自由を与えるとがめる奴が出てくるので権力が全てを管理するのだ、そのかわりに生活や教育は国家が保障するのだ、権力批判は許さないがタブーに触れなければ食うには困らないよ、という社会を目指し(一定期間成功し)たとあるが、鄧小平以降習近平までの中国によく似ていると思った。あれほど批判したスターリンの轍を踏むのがちょっと面白いね。習近平が毛沢東へ先祖返りしようとしているとはよく言われるが、本書を読んでその感を強くした。
著者の言わんとするのはどうやら今の日本がこのような独裁体制へ転落する危険に晒されているぞということだが、自主警察やらネット世論やらをみているとその恐れはあるようだに思われる。僕からは、この本に限らず本を読め、と言っておく。 -
処世術ではないかと思うけど
独裁と言われる人物のまとめ -
どの独裁者も自国の発展を真剣に考えていた事がわかった。やり方や達成度は違えど、どの独裁者もこれは同じ。自分は独裁者にはなりたくないけどこれだけは見習うべき。
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なかなか面白い。わかりやすい