世界で最もSDGsに熱心な実業家 イーロン・マスクの未来地図

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784299015600

作品紹介・あらすじ

世界長者番付1位に躍り出た天才経営者、イーロン・マスクの軌跡を評伝とともに振り返るビジュアルブックです。とくに2015年からこれまでの事業の先進性や成果、SDGsにかかわる取り組みとその狙いについて綴ります。イーロン・マスクはSDGsのS(持続可能性)に力点を置いて学生時代に起業し、現在に至ります。太陽光発電などがその最たる事業になりますが、そういった点についても、わかりやすく触れていきます。

感想・レビュー・書評

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  • ドイツ、スウェーデン、オランダ、イギリス、アメリカ・カリフォルニア州などで、2030年代からガソリン車の販売が禁止される。

    世界の自動車業界は電気自動車(EV)へ舵を切り、リチウムイオン電池を作るギガファクトリーの建設が続々と始まっている。

    そんな折、『イーロン・マスクの未来地図』を読んだ。

    彼が経営するテスラ社の車はすべてEVだ。
    2008年に発売が開始されたのは、6831個のリチウムイオン電池で動く、高級車ロードスター。
    初代は販売終了したが、今後は大衆向けのEVが普及する予定だ。

    テスラ車は「走るコンピュータ」と言われる。
    その理由は、車がネットと常時接続されており、ソフトウェアのアップデートがタイムリーに行われるからだ。アップデートによって、購入時よりもどんどんスペックが高くなるという。

    一方、イーロンはスペースX社でロケットも開発している。
    多額の資金調を達し、数々の打ち上げ失敗にもめげず、失敗を次のステップへの助走にした。

    すでに有人ロケットのクルードラゴンは宇宙飛行士を乗せて国際宇宙ステーションへ飛び立った。
    創業18年の民間企業が有人ロケットを宇宙へ飛ばすという、前代未聞の偉業だ。

    次は、前澤氏が乗る火星行きのスターシップが、いつ発射するかだが、イーロンは着々と準備を進めており、数年後には打ち上げが叶うかもしれない。
    人類の火星着陸という奇跡的瞬間のことを考えて、胸が高まるのは、きっとわたしだけではないはずだ。

    本書では、イーロンの仕事とSDGsとを結びつけて考えることができ、環境問題への意識がより高まった。

    p9
    自社の利益追求を最優先とし、地球環境破壊には目をつぶる。それが20世紀型経営者のスタンダードだった。
    一方のイーロン・マスクは、自社の利益よりも、大きな地球規模の視点で経営をしている風変わりな経営者なのである。
    2014年、テスラはEVカーの世界普及のために、自社が取得したEV特許の無償公開に踏み切る。そしてイーロンはこう言った。
    「EVが普及するなら、たとえテスラがつぶれてもかまわない」

    気づけばテスラの時価総額はトヨタの2倍になり、世界一の自動車メーカーの座についた。

    p14
    2019年じての世界人口は約77億人。今後30年間でさらに20億人もの増加が予測され、2050年の世界総人口は97億人に達すると見こまれている。

    p32
    モデルS以降のテスラ車はPCやスマホと同様、ネットと常時接続されているのでソフトウェアのアップデートはタイムリーにおこなわれる。

    これが、テスラ車をして“走るコンピュータ”と言わしめる所以である。
    テスラがこうした対応をできる要因として、社員にコンピュータ業界、特にアップルからの転職組が多いことがあげられる。

    p33
    購入時のスペックがだんだん陳腐化するのは、従来の自動車の宿命のようなものだった。しかしテスラ車は、ソフトウェアのアップデートによって、車は購入後にどんどん優秀になっていく。
    トヨタやGMをはじめとする従来の自動車メーカーにまったくなかった発想とアイデアを具現化させたテスラ車は、今までの自動車と全く別物と考えた方がいいのかもしれない。

    p55
    チャールズがオーナーでCEOを務めるコーク・インダストリーズは石油関連企業で、年間売り上げは約1100億ドル。同社は米国最大級の非上場企業で、80%の株式をコーク兄弟が所有していた。そのコーク兄弟は事業よりも政治活動に熱心で、当然のごとく地球温暖化を否定している。
    石油利権でもうけるコーク兄弟は環境規制に反対し、潤沢な資金を利用してひいきの候補を当選させる。逆に彼らにとって都合の悪い主張をする候補に対しては、デマを流して落選させ、自分たちの利益になるようにアメリカの政策を誘導してきた。共和党は、そんなコーク兄弟に牛耳られている政党だと嘆く人たちもいる。

    p63
    「自分たちの目指すゴールが何で、なぜそうすべきなのかがわかっていれば、人はより良い仕事を成し遂げる」

    地球温暖化対策はCO2を減らすことより、コーク兄弟のような連中に打ち勝つことの方が困難なのかもしれないと思ってしまう。

    p59
    テスラ車は購入後も、おのずと価値があがっていく。搭載されたソフトウェアはオンラインでアップデートされ、性能が向上するからだ。

    p104
    2020年5月、二人の米国人宇宙飛行士を乗せたスペースXの有人宇宙船クルードラゴンが、国際宇宙ステーションとのドッキングに成功した。スペースXが創業18年目でスピード達成した、民間企業初の快挙である。

    p116
    スペースXは、世界中のどこでも高速インターネットが使える次世代サービスを展開しようとしている。スターリンク計画だ。まぶは約1万2000機、最終的には総計約4万2000機ものインターネット衛星・スターリンクを低軌道に打ちあげる壮大な計画で、実現すれば世界の情報格差は一気に解消される。

    p117
    なおスターリンク計画は、IPOも視野に入れる有望な事業として、投資家たちから熱い視線が注がれている。そして、アマゾンなどもこれに似たネット衛星計画を進めており、主導権争いがこれから激化してくるはずであろうこともつけ加えておこう。

    p119
    ドイツ、スウェーデン、オランダなどは、ガソリン車の販売が2030年以降禁止となる。イギリスはガソリン車が2030年、ハイブリッド車が2035年で禁止。アメリカ・カリフォルニア州はガソリン車もハイブリッド車も、2035年以降の新車販売ができなくなる。

    RE100とは、企業活動に必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなうもの。
    1.5℃目標とは、世界の平均気温の上昇を、産業革命以前に比べ1.5℃以内に食い止める活動。
    ESGとは、環境、社会、企業統治の頭文字をとった言葉で、企業の評価に用いられる。
    そしてカーボンニュートラルとは、CO2の排出量と吸収量を差し引きゼロにすることである。

    p121
    EVの出荷数は、リチウムイオン電池の精算数量にかかっている。

    英国の電池メーカー・AMTEパワー社と、新興企業・ブリティッシュボルト社が共同で、英国内にテスラ級のリチウムイオン電池工場を建設すると発表したのだ。予定投資額は約40億ポンド(約5240億円)にのぼり、年間生産能力は、テスラのギガバネバダと同等クラスの30GWh。

    ブリティッシュボルト社のCEOが「再生可能エネルギーへの移行においては、大規模なバッテリー貯蔵設備が必要となってくる」と語るとおり、欧州ではギガファクトリーの建設計画が次々と進んでいる。なぜか日本ではほとんどニュースになっていない。
    フランスのPSAグループは(中略)フランスとドイツにそれぞれ24GWhのギガファクトリーを建設する。生産開始は2023年を予定している。
    独VW社は(中略)ノースボルト社と、約1兆5000億円の大型契約を結んだ。ノースボルト社はもともと、水力発電を利用したギガファクトリー建設計画を進めていた。そこに今回の大型契約が決まり、計画はギガファクトリーを欧州に6か所建設するという野心的ものへとスケールアップした。年間240GWhのバッテリーを生産し、コストは50%ダウンさせるという意欲的な目標が掲げられ、これによってVWは2025年までにEV生産能力を150万台まで引きあげる考えだ。

  • ちよわうどいい分量で、彼のビジョンの全貌を把握することができた。断片的に報道で耳にする内容が、全て明確なビジョンに基づいたものであることに感心した。
    筆者は彼に心酔しているようだったが、カリスマ性の背景も理解できた。

  • イーロン・マスク氏、十数年前の朝日新聞のインタビューで、「将来の世界で重要になるものは?」と聞かれ、「インターネットと宇宙と持続可能なエネルギー」と答えていたのを、なぜかはっきり覚えている。

    その時は宇宙?なんて思っていたけれど、彼の言う通りの世界になっている。

    そのような先見の明を含め、思考が常に人より一歩も百歩も先にいっているのだろう。
    彼のやり方で一番好感を抱けるのは、「独り占めしない」こと。

    持続可能な世界は、なるべく多くの企業や人を巻き込まないと達成できない。だからこそ、彼は会社の売上ということよりも、特許を公開し、みんなで考えを「シェア」して発展させることに意味を見出す。
    日本の伝統的な企業や国営機関ではしがらみが多すぎて、到底なし得ない事ばかりに思える。

    当分は、彼が「火星移住計画」に向けてどのように前進していくのか、見守っていきたい。
    いつかテスラを買いたい…

    宇宙勉強2

  • イーロン・マスクについて書かれた書籍として、手にとって読んだ初めての本と言う事もあり、分量として丁度良かったです。(洋物はこの手の書籍は350-400ページあるがこちらは大きさも異なるけど半分以下くらい)
    テスラとスペースXを中心に、幼少期や学生時代、プライベートなところをコラム的に配置していて、業績だけではない人物像も一部ではあると思いますが、理解できました。

    テスラ及びスペースXでの業績というか功績?既存の製造業とのビジネスシステムの違いについての記事のまとめ方が面白かった。既存の製造業は、水平分散(ピラミッド型?)で、テスラとスペースXは垂直統合。
    これは、新たに立ち上げるときには、既製品を組み合わせるような水平分散より、垂直統合による内製化のほうが安く作れるメリットが有ると判断したことによると。
    この部分って、現在のIT業界も完全なるピラミッド型なうえに、依頼企業側はDXの進捗が芳しくないという結果があるが、なるほどなと思える。最近は、企業内部でのITシステムの内製化は少しづつ出てきていると思うが、ITコンサル、SIer頼みだけでは、高い効果を得られにくくなってきていることにもっと注目があたっても良さそうだ。こう書くと、内製化じゃなくて、さらなるITコンサル、SIerの価格競争に進んじゃいそうなのが日本なんだが。。。

    いずれにしても、イーロン・マスクの壮大なビジョンにワクワクしてしまった。現場では、それなりに大変なことのほうが多そうだとは思うけど、未来を作ってる感じがする。

    本書ではSDGsを絡めて書かれているのだが、個人的にそもそもSDGsって企業の事業活動と相性悪いと思っていたのに、そうだとは言わずに実践出来ているのがテスラだったりするのか?と…
    本書の中では、日本企業というか日本の出遅れが際立つ感じで書かれている。一部、トヨタとかアクションしてないわけではないという部分も書かれているけど総じて出遅れてると。トヨタは、EVオンリーではなくて、ハイブリッドの市場を作ったわけだし、新たに水素を使ったり燃料電池への対応とか、成熟企業の取り組みをしているとおもうが、大手企業の取り組みはあまり光が当たってる感じはしない。。

    気軽に読める本として、中学生くらいから読めると思うし、おすすめしたい。

    個人的には、フロリダのNASAで横になって置かれてるサターンを見てでかい!って思ったり、敷地の外にあるミュージアムでアポロの宇宙船を見てほんとにこんなので宇宙行ったんかな?って思った記憶と、スペースXのYouTubeで、飛び立ったロケットの切り離されたやつが戻って着陸するのを見たときの驚きを思い出して、イーロン・マスクって枠にとらわれずにデカいことをする人だなとしみじみ思う。

  • テスラ、スペースXを通して、イーロンマスクの考え方、行動力を知ることができました。
    また、電気自動車の進歩、ロケットの進歩も、びっくりするくらい進んでいることを知りました。
    イーロンマスクの金言は、実行することは難しいですが、まさにその通りと言わざるを得ないです。

    以下、印象に残ったことです。

    ★テスラは、蓄電事業も展開
    →Tesla is a sustainable energy company.
    ★イーロンマスクは、幼少期、本の虫だった。
    ★10歳くらいで、コンピュータをさわり出し、プログラミングを独学した。
    ★どんなに才能があっても!場所を間違えると花は咲かない。南アフリカ→カナダ→アメリカと移住
    ★失敗なしで、イノベーションはない。失敗を早く分析して次に活かすことが大事。
    ★物理学はモノマネ(アナロジー)ではなく、原理から思考を展開する。
    ★イーロンマスクは、異端として批判されても屈しない。

    イーロンマスクの金言
    ●私は息をしている限り、あきらめない。
    ●目指すゴールはとてつもなく野心的だが、私たちは実現する。
    ●貧しくてもハッピーであることは、リスクを取る際に非常に大きな助けとなる。
    ●自分達の目指すゴールが何で、なぜそうすべきなのかがわかっていれば、人はより良い仕事を成し遂げる。
    ●新しい舞台に立つことを恐れるな。
    ●たかが失敗だ。失敗しないでイノベーションは起こせない。

  • 少し美化してない?と感じるところもありますが、イーロンマスクの魅力がよくわかりました。ワクワクする未来の実現に取り組むことができない企業はこれから生き残れないかも。


  • イーロン・マスクの半生と功績の概要をざっと知るためには十分な1冊。
    今やアメリカで最も影響力を持つ人物になった彼が、今後どんな考えで会社を経営し世界を動かしていくのか、とても気になる。
    間違いなく彼は、人類史を変える1人となる。

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著者プロフィール

ビジネスコンサルタント

「2022年 『イーロン・マスクはスティーブ・ジョブズを超えたのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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