「舌」は口ほどにものを言う 漢方薬局てんぐさ堂の事件簿 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784299044631

作品紹介・あらすじ

累計15万部突破「薬剤師・毒島花織の名推理」シリーズのスピンオフです! 新宿で50年以上続く漢方薬局には、今日も様々な悩みを抱えた人たちがやってくる。時間つぶしがてら来局したOLの麻美。薬剤師の宇月から問診後、「大麻の取り調べで警察がうろついているから気をつけたほうがいい」と不可解な忠告をされ――。元小学校教師の京子は、長年気に病み続ける事件があった。宇月の推理により京子は安心するが、実は思いもよらない真相があり……。食リポタレントのユリアが味覚を感じなくなった。処方された漢方により改善されたが、体調が悪くなってしまう。父の介護がきっかけで不調を抱える浩一郎。問診に当たった宇月に毒草の話をするが、それは浩一郎が父から受けた衝撃の告白が関係していた――。薬剤師の宇月がお客の体と心の悩みを解き明かし、前向きな気持ちをくれる養生ミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • 「薬剤師・毒島香織の名探偵」シリーズにも登場していた宇月さんでは⁇と思ってたらやはりそうだった。
    まさか、スピンオフだったとは。

    宇月さんの職場である「漢方薬局てんぐさ堂」にやってくる患者さんのちょっとした謎をサクッと解決する。
    漢方医学に関する知識も豊富な宇月さんならではの視点から患者の不調を解く全四話。

    第一話 漢方薬入門〜32歳の出版社に勤める編集者加納有紀は、入社当時に担当した池崎から大麻をテーマとした本を出版してくれないかと持ち込まれたが、預かったのは原稿だけではなかったことを知らずに、直後にてんぐさ堂の宇月に気づかれる。
    深く立ち入ることなく、やんわりとした警告だけ…という宇月の落ち着き加減も凄い。

    第二話 夏梅の実る頃〜70歳を過ぎた箕輪京子は、間接リウマチとアトピー性皮膚炎の既往歴があり、漢方を処方しているが、ドングリが苦手になった理由があって…。
    子どもの頃に祖父の病気に効くと友だちから渡されたものが、ドングリではなくマタタビの実だったことに気づく宇月さん。

    第三話 ノーテイスト・ノーライフ〜情報番組の一コーナーで食レポをするユリアは、コロナの陽性判定が出た後から味覚障害に悩まされていた。
    近くのクリニックでは薬も出してくれず、仕事に支障が出るのは困るとの思いで漢方薬局にやって来る。
    すぐに効果が出るものではなく、毎日飲み続けて数週間、あるいは数ヶ月かけて症状を緩和させたり、体質を変えていくのが漢方薬を使う治療であるが…。
    食レポをしているので焦りがあった。
    唯一、味のわかるものが、サルミアッキというお菓子で…。
    このリコリス菓子を大量に食べて意識障害を起こしてしまう。
    飴に含まれる甘草の過剰摂取が原因だとわかる。

    第四話 長男の務め〜川島は、長男であるが故に父の世話も視野に入れていたが弟や妹にも話をしなければと思っていたことは…。
    相続のことかと思っていたが、宇月に個別に相談したいことは毒草のことで。
    庭木や樹木、雑草で毒性の強い植物で人を殺すことはできるか、ということだった。
    自然死のようにぽっくりと殺すような毒草はないというのが明らかになったわけだが、なんとも言い難い複雑な話ではあった。
    このことから宇月が自身の左手と左脚の麻痺の原因が、大学生の頃に恋人に紅茶に毒を入れられたことを話す。

    やはり薬に纏わる話は、知らずにいると危険もあるということがわかった。
    ある意味怖いことである。

  • 最近漢方について興味が湧いている時期だったのもあり、書店で見かけてすぐ手に取りました(笑)
    漢方専門の薬局は行ったことないんですが、本作で出てくる薬局なら一度訪ねてみたいと思いましたね。
    漢方の基本的な効能も分かり、ついでにやってくる患者さんの周りで起こる謎(ミステリー?)も解決してくれるという万能な薬剤師さんも魅力的でした。
    とはいえ、その薬剤師さんの過去もなかなか……って感じだし、最後まで色んな謎の解明が続いて楽しめました。

  • 薬剤師、毒島さんシリーズのスピンオフ。
    毒島さんでも出てきた宇月さんが今度は探偵さん役になっています。
    あの時もただ者ではない感じでしたから、こうして戻ってきたのは納得。
    調剤薬局と違い、漢方がメインになっているところがまたよい展開で、知ってるようで知らない漢方のおもしろさも味わえて非常にお得です。

  • 薬剤師・毒島シリーズにも登場した宇月を主人公としたスピンオフ(帯には「新シリーズ」とも・・・)
    各地を転々としていた宇月は「てんぐさ堂」と言う漢方薬局で薬剤師として、働くことになった。
    「てんぐさ堂」は3代続く、老舗の薬局だが、先代が妻を亡くしてから、売り上げは下がる一方。
    そんな薬局を立て直すべく、薬剤師試験に3度落ちた天草奈津美はお店を改装し、おしゃれな漢方薬局を始めるが、なかなか売り上げが伸びないことが悩みどころ。
    そんな漢方薬局には様々な悩みを抱えた人がやって来て、問診のみで宇月はお客さんの体と悩みを解決していく。
    お客さんの悩みを解決する姿に、徐々に奈津美も宇月に心を開いていく・・・
    毒島シリーズでも博識ぶりを披露していた宇月だが、1作で登場しなくなり、勿体ないなぁと思っていたところで、このスピンオフ。
    彼の漢方の知識だけではなく、様々な知識から、お客さんの隠れた悩みを解決していくのは面白い。
    漢方の話も少し難しいが、最近は薬局でも簡単に手に入るからこそ、小説から漢方の知識を得られるのは非常に有難い。
    スピンオフか、新シリーズか分からないけれど、是非続きも読んでみたいものである。

  • 2023年7月宝島社文庫刊。漢方薬入門、夏梅の実る頃、ノーテイスト・ノーライフ、長男の務め、の4つの連作短編。宇月さんが主人公かと思ったが、どうも新米店主の奈津美さんがそうなのかも。いずれのお話も、少し謎が残ったままにして、別の話での謎解きや、または、謎のままにしたりという展開が楽しい。

  • 西洋医学とは違い、自然の生薬である漢方薬に視点を置いてする謎解きが斬新でした。

    お気に入りは「ノーテイスト・ノーライフ」
    コロナの後遺症で味覚障害になったグルメリポーターの友梨亜。仕事に支障があると、藁にもすがる思いでてんぐさ堂へやってくるが…

    世界一まずいお菓子と言われるリコリス菓子を多量接種した所為で意識障害になるなんて知りませんでした。
    何事も食べ合わせや過剰接種は毒にもなるって事なんでしょうが、勉強になりました。

    3回も薬剤師の試験に落ちてしまった奈津美だけど、新米薬剤師の宇月とは良いコンビになりそうですね。

  • シリーズなのに突然この本から読み始めて大丈夫か不安だったけど、全く問題なく楽しめた。漢方に興味があって読み始めた本だけど、漢方ネタどっぷり、というわけでなかったので読みやすかった。せっかくなので他の作品も読んでみたいと思える一冊でした。

  • 優れた洞察力と豊富な博学で知識で、患者の悩みや不調を解き明かしていく。解き明かした全てをそのまま伝えるわけではなく、優しさゆえに隠す人間味も素晴らしかった。
    落ち着いて読めるストーリー。続編を出してほしい。

  • 漢方薬に興味ありで少し学べた
    スピンオフだそう面白かった

  • ウチは保険調剤薬局じゃなくて漢方薬局です。待っていれば、患者さんが処方箋を持って来てくれる仕事とは違うんです。
    ・・・と、患者さんの話をていねいに聞いた挙句、薬を処方せずに帰してしまった宇月啓介(うづき けいすけ)を責めた、店主の天草奈津美(あまくさ なつみ)だったが、宇月の対応は次々と事件を解決していく。

    あの、毒島さんのシリーズの4作目に登場して、主役を喰う(!)活躍をした、宇月啓介の登場です!
    なるほど、西洋医学の薬剤と漢方は違うし、お客さんの話をよく聞いて症状や体の状態を見極めることが重要な漢方の薬剤師は、お客さんの抱えたさまざまな問題を解決する事に向いていると思います。
    体の不調に対処するだけではなく、生き方を見直すきっかけをさりげなく作ってあげているのもいい。
    宇月が漢方薬を勉強しようと思ったのは、彼自身が過去の事故で体に後遺症が残ってしまったことがきっかけ。
    事故のことは忘れられず、自分でも不可解な部分も多く、これからも宇月の生き方や成長に影響を与えていく気がします。

    第一話 漢方薬入門
    第二話 夏梅の実る頃
    第三話 ノーテイスト・ノーライフ
    第四話 長男の務め

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著者プロフィール

1962年、千葉県生まれ。第7回『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞を受賞、『毒殺魔の教室』にて2009年デビュー。

「2020年 『甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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