[新版]アメリカ大都市の死と生

  • 鹿島出版会
3.95
  • (12)
  • (19)
  • (12)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 624
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784306072749

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • とりあえず私は山形浩生氏の訳が比較的好きなので、たまたま見かけたこの本を手に取ってみることにした。都市工学等の基本的知識が全くなかったので、最初から読み始めたものの、何の話だかさっぱりわからずに、途中で例のごとくあきらめて解説から読むことにした。山形氏の訳が好きな理由の一つは、解説がとてもわかりやすいことだ。解説を読んでみて、ジェイン・ジェイコブズという人の立ち位置がよくわかり、読むツボも押さえることができた、ような気がした。そして本文に戻ってみたものの、結局よくわからず、解説以上のものを理解できたとは思えなかった。

    もしかしたら、これは原文で読んだ方がわかりやすいたぐいの本なのかもしれない、などと訳のわからないことを考えながら流し読みしてゆくと、ようやく第2部に入ったところで構造がわかってきた。都市の繁栄のためには多様性が重要で、複数機能、小規模街区、多様な経年度合の建物、そして高い人口密度がその鍵となる、というものらしい。複数機能については、直感的にその方がよいのだろう、とは思うが、具体論としては難しいような気がした。コンビニのようなワンストップショップが隆盛を極める現代社会では、スポット的には複数機能は実現できるだろうが、それを都市の広範囲にわたって実現するのはかなり難しいような気がしたからだ。小規模な街区については、それがよいことなのかどうかの判断もつかないし、仮によいことだったとしても、既存の町でそれを実現するための費用対効果を考えたときに、それほどまでに効果的な考えであるとはとうてい思えなかった。減価償却のすんだような古い建物を有効利用すべきだ、との考えは、その通りだと思う。都市の更新費用をフラット化できれば、確かに理想的だろう。しかしながら、日本について考えてみると、現実的にはいろいろ難しいのだろうな、と思った。そもそもの近代都市化への出発点で、日本中のほぼどの町も戦後の焼け野原からヨーイドンで立て始めたのだろうし、その後も災害の多い日本では、壊れるときには町が全部壊れてしまう、ということが継続的に起こってきたし、たぶんこれからもそうだろう、と思われるからだ。最後の人口密度を上げよ、というのは、都市の効率性の観点からすればその通りなのだろうが、果たしてそれは幸せな都市なのだろうか、という疑問は残らざるを得ない。人間にとって効率性というのは手段でしかなく、それを目的にするというのはちょっと違うんじゃないだろうか、とも思った。

    その後の2つの部は具体論だった。解説にも批判的にあるように、正直具体論の部分は、時代の違いもあるし、そもそも論的な部分でも、それって本当によいのか?と聞きたくなるような部分があり、評価は難しいと感じた。特に私は都市工学については何も知らないので、そう言われればそうなのかもしれないが、もしかしたら違うのかもしれない、という程度の感想しか書くことができず、少なくとも積極的に説得された、というような印象は受けなかった。後半部に重要な指摘がある、との意見もあったようだが、率直に言って、私は内容的にいうのならばこの本は第2部だけでもよいのではないか、との感じを受けた。

    ただ、無理に理解しようと思わず、私のように流し読みするのならば、あちこちに刺激的な意見があり、まさに現在でも通じるような古典的な名著としての存在感はあると思った。直感的な観察力は、本当にすばらしいものがあり、そこから先の具体論が曖昧である、といったような批判を寄せ付けないほどの強靱さを持つと感じた。その直感から解決を見いだすのは他の人の仕事であり、彼女の仕事ではなかったのだろうと考えれば、出版から50年を経過しても依然として読む価値はあるものだといえるだろう。

  • 都市計画に隠された4つの嘘
    http://ymkjp.blogspot.jp/2013/02/4.html

  • 今から50年以上前に、都市における「多様性」の必要性を説いた一冊。これは完全訳で2010年に発売された新装版。現代でも通用する都市論の傑作の1つ。

    それまでの都市論を批判し、とにかく生の都市の機能について書かれている。これは学者でなく市民活動家のジェイン・ジェイコブスならではの視点。

    とにかく多様性の必要性について書かれている。多様というといかにも複雑そうで、これまで都市計画が推し進めてきた秩序と相反するように聞こえる。

    本書では都市の多様性を単なる無秩序、統計学的に扱う問題でなく、複雑には見えるが個々が相互に関連し合う組織だった複雑性として扱う。それは当時台頭し始めた生命科学の考えと共鳴している。

    キーワードは多様性、街路、高密度など。

    他の都市論と違い、描写される都市のイメージからリアルなとし生活が想像できてしまうのがこの本のすごいところ。

  • 請求記号: 518.8||J
    資料ID: 11102234
    配架場所: 工大選書フェア

  • 後藤さんのおすすめ。

  • 難しい。何度か読み返す必要あり。

全19件中 11 - 19件を表示

著者プロフィール

Jane Jacobs(ジェイン・ジェイコブズ):
1916~2006年。アメリカ、ペンシルベニア州スクラントン生まれ。都市活動家、都市研究家、作家。1952年から10年間「アーキテクチュラル・フォーラム」誌の編集メンバーとなる。1968年にカナダに移住し、同国トロントで他界。40年以上にわたり、アーバン・プランニングに対抗してコミュニティに基盤を置いた革新的な方法を擁護した作家である。一九六一年の著書『アメリカ大都市の死と生』は、数世代にわたるプランナーとアクティヴィストを元気づけながら、都市の内部でうまくいっていることうまく行っていないことに関するおそらく最も影響力のあるテキストとなった。

「2018年 『ジェイン・ジェイコブズ都市論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジェイン・ジェイコブズの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
ジョージ・A・ア...
ポール・ポースト
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×