彩花へ生きる力をありがとう

著者 :
  • 河出書房新社
3.92
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本棚登録 : 90
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309012063

作品紹介・あらすじ

人間は愚かで悪い。でも、それ以上に人間は素晴らしい。命の輝きと尊さを、我が子は死を通して教えてくれた。神戸『少年事件』で逝った山下彩花ちゃん。母が初めて綴った、生と死の感動の真実。

感想・レビュー・書評

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  • 古本で買って読む。神戸児童連続殺傷事件(酒鬼薔薇(聖斗)事件)の被害者(殺害された女児)の母親の手記。
    事件から四半世紀以上が過ぎ、平成の時代も終わって四年が過ぎた。著者の山下京子も、令和という時代を迎えずに旅立ってしまった。

  • 自分なら絶対に生きていけないような事件を経て、自分の人生に向き合い前向きに生きておられる被害者遺族の方々は本当にすごい。命の大切さについて、亡くなるまで色んな所で啓蒙されていた著者は本当に生きる力を与えてもらっていたんだということが分かる。

  • この本は…思想論の域です。Aの一連の本を読んできて、余罪があるとしても発端になったこの事件を読まない訳にいかない。読んで驚きました。著者はなんて理知的で聡明で母性愛溢れる方なのだろうと。もちろん悲しみの部分もありますが、それ以上に乗り越え至った思想論には敬服です。Aの事も母親として更生を願うと。母性の象徴:観世音菩薩を見る思いでした。この書を是非これから出産する方、子供のお母さん いえ全ての方に『生きる力』として読んで頂きたい。被害者の手記とは時限が違います。登録数が少ないのもきになります。

  • 神戸連続児童殺傷事件の被害者の母親が出版。
    少年Aに対する恨み言でなく、悲しみから目を背けずに、前を向いていこうとする強さがあふれています。
    これ、事件から半年ぐらいの期間で出版してます。悲しみに押しつぶされてしまいそうな中、どこまで強い家族なんだろう、と思いました。
    当事者の方々の気持ちは想像できないけれど、とにかく少年Aは許してはならないと。セカンドチャンスというけれど、それを与えていけない存在もいるのだ、と。

    報道陣の厚顔さは今も昔も同じか。「報道の自由」っていうのは、なんでもかんでも報道してもよい、ってことじゃなくて、報道する事柄の取捨選択が与えられてます、ということだと思うんですけどね。
    「お客様は神様です」を客が言うな、ってのと同じですよ。

  • 被害者家族への理不尽な対応…未だに何も変わってない。お母さん…もっとこの本で怒りぶつけても良かったんちゃうかな。

  • (2015.07.25読了)(2015.07.15借入)
    神戸児童連続殺害事件の犯人である少年Aの著作が話題を呼んでいるので、話題の本に関連する本を読んでいます。
    「「少年A」この子を生んで……」「少年A]の父母著、文芸春秋、1999.04.10
    「淳」土師守著、新潮文庫、2002.06.01
    上記2冊を読んだので、この本で3冊目になります。
    「少年A」の父母の書いた本では、家に出入りしていた土師淳君の話は出てきても、山下彩花さんの話はほとんど出てこなかったように思います。少年Aの逮捕のきっかけになった事件の前後のことは記憶をたどることができても、時期的に少し離れている彩花さんの事件のころには、まさか自分の子どもが、犯人とは思っていなかったでしょうから、特段何も書くべきことがなかったのかもしれません。
    彩花さんの事件があったのは、3月16日です。ハンマーで頭を殴られて意識不明の状態で病院に運ばれました。亡くなったのは、3月23日です。彩花さんの事件の日に、少年Aはもう一人の小学生の女子をナイフで刺しています。刺された子は、助かっています。
    土師淳君が行方不明になったのは、5月24日です。27日に遺体で発見されました。
    少年Aが逮捕されたのは、5月28日です。
    この二つの事件の前に、2月10日に、二人の小学六年生の女子がハンマーのようなもので、頭を殴られる事件が起こっています。命には別状ありませんでした。犯人は、制服を着た中学生ということでしたが、犯人の特定はできませんでした。
    少年Aは、5人の子供を襲い、二人を殺害していることになります。よく知らないと、土師淳君だけを襲ったような印象を持ってしまいますが、そうではありません。

    この本は、彩花さんの母親が書いたものです。彩花さんの誕生から、事件のこと、事件後のこと、をほぼ時系列に沿って記述しています。本の構成としては、事件のことを最初に持ってきて、誕生へ戻り、最近の心境などを記すという形が、文春などのジャーナリズムのやり方のようなのですが、そうはなっていません。河出書房は、文芸書の出版社ということで。
    肝心の内容の方ですが、彩花さんの死をきっかけに生きる意味について深く考察したということで、凡人の僕には、とても到達できない境地に達しているようです。
    多くの方の共感を得ることのできるものと思います。
    事件後に、マスコミにどう対応していいかわからず、しばらく身を隠さなければならなかったこと、後にボランティアで、弁護士の方がついてくれてからは、弁護士の方にいろいろ助けてもらったこと、犯人は、国選弁護人が付くのに、被害者の方が弁護士を雇うとすると、自費になること、9月18日に、弁護士の方の仲介で、少年Aの両親にあったこと、等、被害者としての体験が綴ってあります。
    (少年Aの父母の書いた本には、彩花さんの両親にあったことは、書いてなかったような)
    彩花さんには、兄がいたので、両親は、立ち直ることができたのではないでしょうか。

    【目次】
    ありがとう、彩花―はじめに
    誕生
    母親
    輝く時のなかで
    悪夢
    生きる力
    困惑
    百日
    「人間」になる道
    息子
    生と死
    秋日
    月の光―少し長いあとがき

    ●耳たぶを(27頁)
    彩花は、いつの頃からか夫の耳たぶをつかんだまま眠るようになりました。
    (我が家の娘も、かみさんの耳たぶをつかんで眠る習慣がありました)
    ●生きる姿勢(50頁)
    学校の成績だけで人間に優劣をつけ、何のために生きるのかを誰も自信をもって教えない社会。「事件」を起こした少年だけでなく、日本中で若い少年たちが狂犬のような目で街を徘徊し、人生で一番美しい年代の少女がお金のために体を売る時代。何のために生きるのかを問わない生き方は、動物と変わりません。いや、知恵がついているぶん、人間は最悪の動物にさえなり得ます。
    それは、突きつめれば、何のために生きるのかということを教えない家庭や学校が悪いのではなく、何のために生きるのかを、真剣に探そうとしない大人たちの「生きる姿勢」に問題があるのではないかと考えるのです。
    ●楽しみ(58頁)
    彩花と一緒に買い物や映画、コンサートに行けることを、私はとても楽しみにしていました。中学生、高校生と、大人になれば、ますます女同士の会話もできたでしょう。私にとって、それはこの上なく待ち遠しい日々だったのです。
    最大の楽しみは、うんと将来のことだったでしょうが、彩花が結婚して身籠ったときに、彼女が私のお腹の中にいた頃の話を聞かせてあげることでした。
    ●最初の事件(62頁)
    二月十日の夕方、わが家からほど近い団地内で、二人の小学校六年生の女の子が若い男にハンマーのようなもので頭を殴られるという事件が起きました。女の子たちの証言で、犯人は制服を着ていた中学生とわかりました。
    ●生き抜こう(90頁)
    苦しみも楽しみも、全部、自分の人生なんだ。私は、私の人生に、顔を上げて向き合っていこう。
    ●犯行動機(120頁)
    なぜ、あんなことをしたのか。
    それが、私の一番聞きたいことです。家庭に問題があったと論じる人もいれば、彼の通っていた学校に問題があったという人おもり、いや日本の教育システムに問題があるのだという議論もあります。
    専門家の中には、彼が精神的に病んでいるという人もいます。今回、彼が医療少年院に送られたことも、そういう判断によるのでしょう。後天的に病んでしまったという意見もあり、先天的に脳の一部が損傷を受けたのではないかという意見もあるようです。
    ●深い闇(121頁)
    人間というものは、なんと深い闇を抱えているのだろうと思い知らされました。
    (心の闇という言葉を最近どこかで聞いたような、と思ったら、映画「バケモノの子」だったような気がします)
    ●生きる闘い(123頁)
    人間が人間として生きるということは、やはり闘いなのではないでしょうか。自分という人間が内に抱え持っている「獣性」との闘争があって、初めて人間は人間になれます。自分は何者なのか、何のために生まれてきたのかという精神の闘争を経て、初めて何かを残せます。
    ●少年の両親(129頁)
    九月十八日、私と夫は、神戸市内で少年の両親に会いました。
    出会ってみると、冬の曇った寒空のような気持ちだけが残りました。
    ●三つのT(164頁)
    悲しみや苦しみをいやす「三つのT」というものを教わりました。
    まず、「tears」。涙を流すこと。
    次に、「talk」。話すこと。
    最後に、「time」。時間。

    ☆関連図書(既読)
    「「少年A」この子を生んで……」「少年A]の父母著、文芸春秋、1999.04.10
    「淳」土師守著、新潮文庫、2002.06.01
    「犯罪被害者の声が聞こえますか」東大作著、新潮文庫、2008.04.01
    「なぜ君は絶望と闘えたのか」門田隆将著、新潮文庫、2010.09.01
    「天国からのラブレター」本村洋・本村弥生著、新潮文庫、2007.01.01
    (2015年7月26日・記)
    (「MARC」データベースより)amazon
    人間は愚かで悪い。でも、それ以上に人間は素晴らしい。命の尊さと輝きを、我が子は死を通して教えてくれた。神戸「少年事件」で逝った山下彩花ちゃんの母が初めて綴った、生と死の感動の記録。

  • 【図書館本】読み終えてまず思ったのは、著者の強さ、母としての偉大さ。もっとドロドロした恨みや悲嘆に満ちていると思ってたのに、それを180度引っくり返す勢いの愛があふれていた。
    やはりマスコミの対応には憤る部分が多い。“報道の自由”を盾に取り、被害者やその周囲の人々のプライバシーや気持ちは考えられていない。情報を受け取るだけの側としてもこれはどうかと思うが、それを被害者家族(当事者)の視点で語られているのに関心を持った。さまざまな問題を提起し、読み応えのある内容だった。

  • この本は本当に優しい気持ちになれた。
    娘を失っても、その生きた時間を大切に心にとどめようとするお母さんの気持ちに涙がでた。
    娘を持つ母として、たくさん学ぶところがあった。

    少年Aの書いた「絶歌」が出版され、話題となっている。
    少年Aに対しても、本の中では、許すことは出来ないけれど、更生を願っておられる。
    今また、どんな思いで受け止めるのだろう…
    事件は起き、その余波は続き、亡くなった人は還らない、現実が辛い。

  • 「事件」だけにとどまらない、広い視点をもって書かれた本。

    涙の成分は水と塩、
    それはどちらも清めるためのもの。
    そんなところにも神様の偉大さはひそんでいるんだな。

    間違いながら、それでも高みをめざして生きていくのが人間。
    事件を通して、彩花ちゃんや京子さんはとても大切なことを
    社会にむけてはなってくれた。

    読んでよかった。

  •  事件の被害者家族の書かれた本なので、今まで平積みされていても手に取るのを避けていた本です。でも、先日山下さんの講演を聴きました。人の役に立つことが生きる希望になったという話や彩花さんの人生に価値をもたらすためにどう生きるかが大切だという話を聴いてに前向きに生きることの大切さや命の尊さを教えられた気がして読んでみました。
     「生き残った私たちが、どう希望を持って生き抜いていくか。悲劇さえも滋養に変えていけるか。そこにしか彩花の人生を本当に荘厳する法とはないように思えるのです。」
     死に対する考え方が、どう生きるかということとつながっている。
     

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著者プロフィール

神戸市須磨区の小学生連続殺傷事件で殺害された山下彩花ちゃんの母親。著書『彩花へ――生きる力をありがとう』。

「2010年 『彩花へ――「生きる力」をありがとう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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