徹底抗戦!文士の森

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 73
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309017129

作品紹介・あらすじ

書くことも戦いだ。小さい私から大きく振り返る、それが文学だ。芥川は戦い、高見順は激怒し、平野謙は日和り、恆存は冷笑した、そしてまた始まるはてしない「論争」。批評はどこへ行った。そのとき評論家は何をしていたのか。国家を超え、近代をつき抜けるワン・アンド・オンリー作家の祈りと戦い。

感想・レビュー・書評

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  • いや、すごいですね。
    実店舗ではなくネットで本書の存在を知り購入したものの、手元に届いた時に、まずはその厚みに圧倒された。読み始めてその熱量に圧倒される。

    少し前に、武田砂鉄さんの「偉い人ほどすぐ逃げる」を読んでいても感じたのだけど、結構、こういう傾向って、政治だけじゃなく、メディア(TV・新聞)や出版界でも、あるあるなんだなと。

  • トヨザキ社長の書評本から。社長が笙野頼子好きってのは、その書評のそこかしこから窺えるけど、彼女の著作に触れるのはこれが初めて。本文たる小説から入ってないということにうしろめたさみたいなものを感じるけど、そこはまあ、エッセイなどにこそ本音が出るってところもあるだろうし。で読んでみて、なるほどむべなるかなって感じ。フェミニストにはフェミニストの問題があると思うから、男女問題に関しては派閥で考えるものじゃないという立場だけど、基本的には本作に通底するのもそうじゃないか、と。ここであげつらえられてる大塚某をはじめとする人々が、そうされても仕方ないやり方をしたのであって、本作中では何も特別なことが述べられている訳ではない。でもこうやって声を上げ続けなければ、大きな声、でもおかしな内容が幅を利かせることになってしまうんだし、間違ったことを間違っているときちんと指摘する努力の積み重ねが、根本的な意識改革に繋がっていくんだと思う。そんな気持ちを新たにさせられる作品でした。なかなか分厚い単行本なんだけど、思わず一気に読んじゃった。

  • 笙野頼子の論争本続編、こちらは2005年の出版。おもな論争相手は変わらず大塚某だけど、なんだか細かい雑魚がいっぱい沸いてくるようで。

    読んでいて気付いたのは、そもそも自分は基本的に素人のいち読者で、いわゆる文芸評論家というものの必要性がよくわかってないんだよなというところ。大塚某の件とは別に、笙野さんが批判されてる柄谷行人や吉本隆明について、もちろん名前は知っているけれど、書かれたものを読んだこともなく、そもそも評論家の意見に興味がない…。大塚某が意識している江藤淳のことも同様。論点ずれちゃうけど、評論家って何がそんな偉いの?って思ってしまう。作家のことはリスペクトするけど、その作品についてあーだこーだ文句たれるのがお仕事の人は別に尊敬しない。「感想」なら私でも書ける。作品への理解を深めるためならブクログにも素晴らしいレビューが沢山ある。

    私は最初から笙野ファンで笙野さんの肩を持って読んでいるけれど、たぶんそれ以前に、「作家」の言うことと「評論家」の言うことなら、作家の言葉を信じる読者。大塚某の肩書が何だか知らないけれど、そんなに純文学を語りたいなら、お前が純文学のひとつも書いてみろや、と思ってしまう。

    純文学不要論を唱えながら群像で書きたがる大塚某は、結局純文学コンプレックスなのだろうなとしか思えない。本当は純文学作家になりたいけどなれなかった、その鬱屈を純文学作家にぶつけ、くさし、なおかつ自分自身は文芸誌である群像で連載を持ちたい、めちゃめちゃわかりやすい屈折だと思う。クソなのは大塚某自身だけでなく、それを許している当時の編集部の問題でもある。

    まあなんやかんやいいつつ、ゴシップ野次馬的な気持ちも多少ありつつ読んだことは否定しません。笙野さんの論敵の名前をメモしておこうかとも思ったけど、それよりも多少なりとも擁護してくれた系の人の名前をメモしておこう。金井美恵子、大庭みな子、津島佑子らの先輩大御所女流作家、評論家では斎藤美奈子、意外なところで群像からは山田詠美、あと被害者仲間として柳美里、長野まゆみなど。長野さんが変なとこで言いがかりつけられてたのは知らなかったので驚きました。漫画家から転身したとか完全な誤情報だし訴えてもいいくらい。そして売れる売れないの話でいったら長野まゆみなんてめっちゃ売れたろうに。

    こうやって名前並べてみると明白だけれど、味方はほぼ全員女性。攻撃している評論家はすべて男性です。フェミニズムの問題といっしょくたにするのもアレだけど、根底に文壇での男尊女卑意識との戦いというのは絶対あったと思う。もちろん男性も少数味方してくれたと書かれてますし、高橋源一郎、町田康らは『金毘羅』絶賛してくれたと。

    論争エッセイとは別に(多少論争に関連はしてるけど)収録されてる対談は面白かったです。小川国夫と加賀乙彦。当たり前だけれどリスペクトしてる作家と対談する限りでは、笙野さんは全然攻撃的ではない(笑)

    結局私には、純文学とは何かの線引きは難しいし、評論家の有難みもわからないけど、戦う笙野頼子の姿勢にはただただ頭が下がる。誰かがやらなきゃいけない戦いだったのだと思う。

  • 純文学界の不死鳥、ジェイソン笙野の「論争」本。『金比羅』までの自作の解説もあったりして、笙野頼子ファンは必読の書。「群像」が危ない、門外漢が口を出してくる、西洋哲学で現代小説を読み解く事の危険等、本当に危機だと思い、反論する事は「ドン・キホーテ」であるという事をわかりつつも敢えてリスクを承知で「引き受けた」笙野頼子に喝采を!一生ついて行きます、大好きですよ。

  • 2007/03/21読了

  • 「文学」についての真摯で前向きな姿勢、作品評価を数値化することへの批判など、面白く読みました。著者は、現在、文学・出版の世界に身を置いている人間の中で、文学について真剣に考えているのは男性より女性だというようなことを(オーバーであることは承知の上で)言い切って見せている。徒党を組まず、孤立を恐れない彼女たちに拍手。

  •  「純文学の守護神」及び「純文学の極道」である笙野頼子様が、「文壇のほら吹き男爵」大塚英志(僕は彼の文学論も好きだが)を徹底批判する闘争史。

     そして、彼女の柄谷批判など文学理論批判の書にもなっていて、彼女自身文学論を構築しています。

     イミダスにも載っている「文学論争」がここにある。

     一読をお勧めします!

     頑張れ! 純文学!

  • イヤ、すごい。こんなにすごい(ひどさの程度が)ことになっているとわ……。

  • ▼ドン・キホーテシリーズの総集編です。▼一言にすれば、大塚英志と笙野頼子の喧嘩本です。近所の火事は面白い。げらげら笑って読める筈です。▼大塚英志から、福田和也とか江藤淳とかよく知らない他の人とかに引火していくのもげらげら笑いながら読めます。やっぱり他人の不幸は楽しい。でも巻き込まれたくはないですにゃあ。▼やらしィ〜出版業界のやり口が笙野節で見事にスッパーンと斬られていて爽快です。▼舞城王太郎やについてもちょこっと記述があります。大塚さんが小説トリッパーで『佐藤友哉を潰す』的発言をしていたのをリアルタイムで読んで(うざいなあおじちゃん勝手にやらしときなよ)と思っていた人間としては面白かったです。▼大塚英志ファンにはお勧めしません。あと白倉由美ファンにも。

  • この人すごい。

    あたしもいつかは論陣をはって、ガンガンたたかってみたい。
    負けるな!笙野!

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著者プロフィール

笙野頼子(しょうの よりこ)
1956年三重県生まれ。立命館大学法学部卒業。
81年「極楽」で群像新人文学賞受賞。91年『なにもしてない』で野間文芸新人賞、94年『二百回忌』で三島由紀夫賞、同年「タイムスリップ・コンビナート」で芥川龍之介賞、2001年『幽界森娘異聞』で泉鏡花文学賞、04年『水晶内制度』でセンス・オブ・ジェンダー大賞、05年『金毘羅』で伊藤整文学賞、14年『未闘病記―膠原病、「混合性結合組織病」の』で野間文芸賞をそれぞれ受賞。
著書に『ひょうすべの国―植民人喰い条約』『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』『ウラミズモ奴隷選挙』『会いに行って 静流藤娘紀行』『猫沼』『笙野頼子発禁小説集』『女肉男食 ジェンダーの怖い話』など多数。11年から16年まで立教大学大学院特任教授。

「2024年 『解禁随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

笙野頼子の作品

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